「プロセッサー」活用学・入門 第1回「プロセッサー」って、何? | Push on! Mycar-life

「プロセッサー」活用学・入門 第1回「プロセッサー」って、何?

カーオーディオでは「プロセッサー」なる機器が活躍する。しかし、カーオーディオに興味を持ちつつもまだ純正システムをそのまま使っているというドライバーは、「プロセッサー」と聞いてもピンと来ないかもしれない。さて、これは一体何なのか…。

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高性能な「DSP」が内蔵されたナビの一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。
  • 高性能な「DSP」が内蔵されたナビの一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。
  • パワーアンプ内蔵DSPの一例(アークオーディオ・PS8-50)。
  • ダイヤトーンサウンドナビの「クロスオーバー」の設定画面。

カーオーディオでは「プロセッサー」なる機器が活躍する。しかし、カーオーディオに興味を持ちつつもまだ純正システムをそのまま使っているというドライバーは、「プロセッサー」と聞いてもピンと来ないかもしれない。さて、これは一体何なのか…。

当特集では、これが何で、そしてどのように活用するとこの利点を最大限享受できるのかを、詳細に解説していく。

音を良くしようと思ったら、「プロセッサー」の導入は必須!?

今回はまず、「プロセッサー」とは何なのかを説明していく。

ちなみに、「プロセッサー」という言葉には「処理装置」という意味があり、一般的にはパソコンの中に組み込まれているパーツのことを指す場合が多い。対してオーディオにおいて「プロセッサー」といえば、音楽信号を制御するための装置のことを指す。なおカーオーディオ用の「プロセッサー」は、メインユニット等に組み込まれているものと、単体で製品となっているものの2タイプが存在している。

そしてさらに、アナログ状態の音楽信号を制御する機種とデジタル状態の音楽信号を制御する機種の2タイプがある。ただし現代カーオーディオでは、後者が使われることの方が圧倒的に多い。一部、アナログタイプの「プロセッサー」が使われることもあるものの、一般的に「プロセッサー」と言えば、デジタルタイプのものを指す場合がほとんどだ。

で、デジタルタイプの「プロセッサー」は、「DSP」と呼ばれることも多い。「DSP」とは「デジタル・シグナル・プロセッサー」の略語だ。というわけでカーオーディオにおいては、「プロセッサー」と「DSP」はほぼ同義語として使われている。

ところでカーオーディオを愛好する人たちの間では、システムの音質性能の高さを競い合う競技会がさまざま行われている。カーオーディオは、取り付け技術およびサウンドチューニング技術の巧拙により仕上がりのサウンドクオリティが変化するので、各コンペティションではその出来映えが競い合われる。

そしてそういった競技車両には、ほぼ100%という確率で何らかの「プロセッサー」が搭載されていて、そのほとんどがデジタルタイプだ。つまり、音へのこだわり強くなるほど「DSP」が使われる率が高まる傾向にある、というわけだ。

パワーアンプ内蔵DSPの一例(アークオーディオ・PS8-50)。パワーアンプ内蔵DSPの一例(アークオーディオ・PS8-50)。

「プロセッサー」があれば、詳細なサウンド制御を実行可能に!

続いては、なぜに「プロセッサー」が使われることが多いのか、その理由を説明していこう。それを理解していただくために、「プロセッサー」では何ができるのかを解説していく。機種によりできることの内容は一部異なるが、多くの「DSP」には以下の3つの機能が備えられている。「クロスオーバー」「イコライザー」「タイムアライメント」、この3つだ。

ちなみにいうと、サウンドを制御する機能はリーズナブルな市販メインユニットや一般的な純正メインユニットにも何らか備えられている。例えば、左右のスピーカーの音量バランスを整える「バランス」という機能や、前後のスピーカーの音量バランスを整える「フェーダー」という機能があり、これらはほぼすべてのメインユニットに内蔵されている。

また、「イコライザー」が搭載されていなくても、そのかわりに「トーンコントロール」という機能が備わっていることも多い。これは、高音と低音、または高音と中音と低音のそれぞれの音量バランスを変えられる機能だ。

で、「バランス」や「トーンコントロール」もチューニング機能の一種ではあるが、「DSP」に搭載されているものとは別次元の機能だ。「DSP」では、それらとは比べものにならないレベルで詳細なサウンド制御を行える。

では、「DSP」に搭載されている各機能ではどのようなことができるのかを説明していこう。まずは「クロスオーバー」から。

「クロスオーバー」とはざっくり、音楽信号を帯域分割するための機能だ。ちなみに、使用しているスピーカーが「フルレンジタイプ」であるならばこの機能は必要ない。「フルレンジスピーカー」とは、低音から高音までを1つのスピーカーユニットで再生しようとするものだが、そうであれば音楽信号を帯域分割しなくて良いからだ。

ダイヤトーンサウンドナビの「クロスオーバー」の設定画面。ダイヤトーンサウンドナビの「クロスオーバー」の設定画面。

「DSP」の「クロスオーバー」機能を活用すれば、状況に応じたベストな“帯域分割”を行える!

しかし使っているスピーカーが「セパレートタイプ」なら、音楽信号を帯域分割する必要性が生じる。高音を再生するスピーカーであるツイーターには高域信号だけを送り込み、中低音を再生するスピーカーである「ミッドウーファー」には、中・低域の音楽信号だけを送り込みたいからだ。「クロスオーバー」という機能があれば、それを行える。

ところで、市販のカー用スピーカーを購入するとほとんどの機種に「パッシブクロスオーバーネットワーク」というパーツが同梱されている。これも、音楽信号を帯域分割するための装置だ。なのでこれも「プロセッサー」の仲間だ。コイルやコンデンサーといったパーツの作用で音楽信号を高音と中低音に分割する、アナログタイプの「プロセッサー」だ。

で、スピーカーを購入すればほぼこれが付属されているのに、なぜに「DSP」の「クロスオーバー」機能が使われるのかというと…。

その理由は主には2つある。1つは、「取り付け状況等によりベストなクロスオーバー値が変わるから」だ。カースピーカーは、同じスピーカーでも取り付けるクルマが異なったり取り付け方が変わると鳴り方も変わる。なので音楽信号の帯域分割のさせ方も、ベストな値が使用状況に応じて変化する。例えばツイーターとミッドウーファーの取り付け位置が大きく離れる場合には、担当帯域の境目周辺の音を厚くできるような設定にした方が良いこともある。このように状況に合わせて設定できた方が、スピーカーの性能を引き出しやすくなる。

もう1つの理由は「各スピーカー用の信号を個別に制御したいから」だ。より緻密にサウンドチューニングを行おうとするならば、全帯域の音楽信号を1つとして取り扱うよりも、各スピーカーが再生するそれぞれの音楽信号を個別にコントロールできた方が良い。「DSP」内で最初に音楽信号の帯域分割を行えば、分割されたそれぞれの信号に最適な値でチューニング機能を効かせられるのだ。

今回はここまでとさせていただく。次回も「プロセッサー」の役割についての解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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