音に関する“豆知識”講座、開講! 第3回「基音」と「倍音」について | Push on! Mycar-life

音に関する“豆知識”講座、開講! 第3回「基音」と「倍音」について

サウンドチューニングを行うときや、カーオーディオシステムの性能を見直そうとするときに知っていると役に立つ、“音に関する豆知識”を解説している当特集。今回は「基音」と「倍音」について考察していく。

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ツイーターの一例(シンフォニ/クワトロリゴ)。

サウンドチューニングを行うときや、カーオーディオシステムの性能を見直そうとするときに知っていると役に立つ、“音に関する豆知識”を解説している当特集。今回は「基音」と「倍音」について考察していく。

「倍音」の響き方で「音色」が変わる!?

早速、言葉の意味を説明していこう。楽器が奏でる音は実は、主には2つの要素で成り立っている。1つが音程を決める要素である「基音」でもう1つが音色を決める要素である「倍音」だ。

なお「倍音」は、幾重にも重なる。というのも「倍音」は、「基音」に対して整数倍の周波数の音であり、単一ではないのだ。例えばギターのチューニングで使われる「ラ(A)の音」の周波数は約440Hzなのだが、ギターでこの音をポロンと弾くと、440Hzの「基音」が響くとともにそれに対して2倍の880Hz、3倍の1.32kHz、4倍の1.76kHz、というように、いくつもの「倍音」が同時に響くこととなる。このように「基音」とともに「倍音」がどう共鳴するかによって、そのギターなりの音色が決定されるというわけなのだ。

ところで蛇足だが、ギターをはじめとする弦楽器では「ハーモニクス」と呼ばれる奏法が実行されることが度々ある。「ハーモニクス」とはつまりは「倍音」を意味する英単語だが、奏法としての「ハーモニクス」はまさに「倍音」だけを響かせようとするものだ。やり方はいろいろとあるのだが、例えばギターでは、弦をピック等で弾いた後すぐにその弦に軽く触れると、「基音」の成分の響きが抑えられて「倍音」だけが響いたりする。ギターソロなどを聴いていて突然普通の音色とは異なるキーンと響くかん高い音が聴こえたら、それは「ハーモニクス」である場合が多い。

管楽器では「倍音」の仕組みが普通に応用されている!?

蛇足をさらに続けさせていただく。サックス等の木管楽器でも、「倍音」の原理を使った奏法が成されることがある。「倍音」は「ハーモニクス」の他に「フラジオレット」とも呼ばれるのだが、サックスでは通常の音域よりもさらに高い音が演奏されることがあり、この音のことは「フラジオ」と呼ばれている。例えばサックスのソロを聴いていて、ソロの終わりを盛り上げるべく超高音がロングトーンで演奏されるときなどには、その音は「フラジオ」である場合が多い。このように木管楽器では、「倍音」を上手く鳴らすことで発音できる領域を拡大できるというわけなのだ。

さらにちなみにいうと、トランペットやトロンボーンといった金管楽器は、「倍音」の原理によって音階を表現できている。ざっくりと説明するとそのメカニズムは以下のとおりだ。

トランペットにはピストンが3本備えられていて、それを押すと空気の通り道が変わり管の合計の長さが変化する。このように管の長さを変えることで音程が変更されるのだが、ピストンは3本しかなく、管の長さのバリエーションは合計8種類しか存在していない。しかし2オクターブ半とか、上級者なら3オクターブといった広い音域を吹奏できるのはまさしく、「倍音」を鳴らし分けることで実現されているというわけなのだ。

さて、話をカーオーディオに関することに戻したい。カーオーディオでサウンドチューニングをする際には、この「倍音」を意識すると上手くいくことがある。周波数特性の乱れが生じているときに、「倍音」の関係になっているバンドを操作すると、特性の乱れが解消できたりもするのだ。

「イコライザー」調整では「低いバンドから整える」のが鉄則。その理由とは…?

「倍音」を意識すると「イコライザー」調整が上手くいくことについて具体的に説明していこう。例えば測定器で車内の周波数特性を測ったとき、1kHzのところにピークが出ていたとしよう。しかし、イコライザーで該当するバンドを下げてみてもそのピークが解消されないこともある。

その場合は、その音の1/2となる周波数帯や1/3となる周波数帯に該当するバンドを下げてみると、1kHzのピークが解消できることがある。これはつまり、どこかしらの特性の乱れが「倍音」にあたる周波数帯にも悪い影響を及ぼしていたというわけなのだ。このような現象は、割と頻繁に起こり得る。

なので「イコライザー」調整では、「低いバンドから整えていく」ことがセオリーとなっている。高い音から整えていくと、低い音を整えたときに高い音の響き方もつられて変わってしまったりもするからだ。まずは土台部分から整えていくのが、「イコライザー」調整の鉄則なのだ。

またカーオーディオでは、サブウーファーを導入すると中高音の響き方も変わってくる。これもまさに「基音」と「倍音」のメカニズムが影響してのことだ。サブウーファーを導入して音の土台をしっかり鳴らせるようになると、「倍音」成分も豊かに響くようになるというわけなのだ。

音楽を楽しむ際には、音に関するメカニズムのことを意識する必要はほとんどない。しかし音のことを知ると、カーオーディオシステムのビルドアップに役立つこともある。当特集がその一助になれば幸いだ。

《太田祥三》

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