ビギナー必読! 難解なカーオーディオの“専門用語”を易しく解説! Part4 スピーカー関連編 lV | Push on! Mycar-life

ビギナー必読! 難解なカーオーディオの“専門用語”を易しく解説! Part4 スピーカー関連編 lV

とかく「分かりにくい」と思われがちなカーオーディオ。その“分かりにくさ”を解消していただこうと、「用語解説」をお贈りしている。第4回目となる当回では、スピーカーに付属しているパーツ、「パッシブクロスオーバーネットワーク」について説明していく。

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スピーカーの一例(DLS)。四角いパーツが「パッシブクロスオーバーネットワーク」だ。
  • スピーカーの一例(DLS)。四角いパーツが「パッシブクロスオーバーネットワーク」だ。
  • スピーカーの一例(モレル)。
  • スピーカーの一例(ダイヤトーン)。

とかく「分かりにくい」と思われがちなカーオーディオ。その“分かりにくさ”を解消していただこうと、「用語解説」をお贈りしている。第4回目となる当回では、スピーカーに付属しているパーツ、「パッシブクロスオーバーネットワーク」について説明していく。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」って、何?

カー用のスピーカーを買うと、多くの場合「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されている。さて、これは一体何なのか…。

まずは、名称を形成している語彙を直訳してみよう。当用語は3つの単語から成っている。それぞれの意味は以下のとおりだ。1つ目の「パッシブ」は、「受動的、消極的」という意味を持つ。2つ目の「クロスオーバー」は、「異なる分野の物事を組み合わせて新しい物事を作り出すこと」という意味を持つ。そして3つ目の「ネットワーク」には「網目状組織」という意味がある。

というわけで、直訳してもこれが何なのかよく分からない…。その理由の1つは「クロスオーバー」にある。この言葉は、オーディオ的に使われるときには別の意味の言葉になるからだ。オーディオにおいての「クロスオーバー」とは、「帯域分割」という意味となる。使用するスピーカーが「セパレートタイプ」であるならば、音楽信号をツイーター用の高音とミッドウーファー用の中低音とに「分割」する必要性が生じる。「パッシブクロスオーバーネットワーク」とは、それを実行するためのパーツなのだ。

ところで信号の「帯域分割」は、スパッと上下に2分割されるわけではない。例えば境目が5kHzであった場合、ツイーターに送られる音楽信号は5kHzを境目としてそこから下側の音が緩やかに減衰されていく。ミッドウーファーに送られる信号については、5kHzを境目としてそれより高い音が緩やかに減衰されていく。

このように実際の「帯域分割」では、境目近辺の音はツイーターとミッドウーファーの両方から発せられることになる。そしてその音が混ざり合って全体的な一体感が作り出される。混ざり合うがゆえに、「クロスオーバー」という言葉が使われているというわけなのだ。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」の対義語は、「アクティブクロスオーバー」!?

さて、「クロスオーバー」以外の2つの語彙についても詳しく解説していこう。

最初に「ネットワーク」から。これはすなわち、「回路」とか「パーツ」というような意味合いで使われている。これについてはすんなり理解できるのではないだろうか。

しかし「パッシブ」は少々分かりにくいので、じっくりと説明していきたい。まず、「パッシブクロスオーバーネットワーク」には対義語がある。それは「アクティブクロスオーバー」だ。つまり「パッシブ」は、「クロスオーバー」のタイプ違いを表している。

それぞれがどのようなタイプなのかを説明していこう。「パッシブクロスオーバー」は、「パワーアンプの後段で信号の帯域分割を行うタイプ」であり、「アクティブクロスオーバー」は、「パワーアンプの前段で帯域分割を行うタイプ」の「クロスオーバー」である。

なお、音楽信号の「帯域分割」をパワーアンプの前段で行うか後段で行うかによって、以下のような違いが生み出される。もしもパワーアンプの前段で「帯域分割」を行うと、使用するスピーカーが「セパレート2ウェイ」の場合には、パワーアンプの「ch数」は「4つ」必要となる。ツイーターとミッドウーファー用にあらかじめ信号が分割されるので、信号は計4系統に分かれる。結果パワーアンプも、計4つのchが確保されなければならなくなるのだ。

対して、「帯域分割」をパワーアンプの後段で行うのであれば、パワーアンプの「ch数」は左右ひとつずつの計「2ch」で済む。つまり、「アクティブクロスオーバー」を用いる場合にはシステムは大がかりになり、「パッシブクロスオーバーネットワーク」を用いる場合にはシステムはコンパクトに収まる。もちろん、システムを大がかりにしてまで「アクティブクロスオーバー」を使うことにはだからこそのメリットがあるのだが、単にスピーカー交換をしようと思ったときには、システムは大がかりにならない方が良い。これを活用した方が、シンプルにスピーカー交換を行える。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」が同梱されないこともある。その理由は2とおりある。

というわけで、「パッシブクロスオーバーネットワーク」とはつまり、「音楽信号の帯域分割をパワーアンプの後段で行う装置」なのである。長ったらしい名前なのだが、これが何なのかを示すためには、長い名前にならざるを得ないのだ(実際は「パッシブ」とか「ネットワーク」とか短縮して言われることが多い)。

ちなみに、ホームオーディオのスピーカーにも「パッシブクロスオーバーネットワーク」は組み込まれている。しかし、エンクロージャー(箱)の中に入っているのでこの存在がクローズアップされることは少ない。しかしカー用のスピーカーは、クルマに取り付けなくてはスピーカーとして完成しない。パーツの状態で売られているので、「パッシブクロスオーバーネットワーク」もそのまま同梱されている、というわけなのだ。

ところで、「パッシブクロスオーバーネットワーク」が同梱されていない場合もあるので、それについても解説しておこう。同梱されない理由は、2とおりある。1つは「コストを下げるため」だ。これを省けば製品代をより廉価にできるので、敢えて付属されないモデルも存在している(ツイーターは、中低音の信号を入力すると破損してしまうので、ツイーターには「パッシブクロスオーバーネットワーク」の代わりとなるパーツが組み込まれる)。

もう1つは、「アクティブクロスオーバーで鳴らすことが前提とされるから」だ。先述したとおり、「アクティブクロスオーバー」を使うと、だからこその利点が得られる。なので、ハイエンドユーザーの多くは「アクティブクロスオーバー」をすでにシステムに組み込んでいる。であるならば「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されていてもそれが使われることはない。ならばこれを付属しない方がもろもろが合理的だ。価格も下げられる。なのでハイエンドユーザー向きのスピーカーでは、「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されないケースは増えてくる。または、「パッシブレス」の製品がラインナップされることも多くなる。

今回はここまでとさせていただく。次回もわかりにくい用語の解説を続行する。お楽しみに。

《太田祥三》

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