チューニングは必ずしもクルマを速くすることではなく、自分好みに合わせこむことも指す。そこでぜひオススメしたいのがシートの交換だ。
シートは当然クルマを購入すると付いてくるが、必ずしも万人にフィットするとは限らない。できるだけ多くの人にフィットするようになってはいるものの、逆に誰しもそこそこの座り心地で完璧な座り心地ではないとも言える。ではどうすればいいのか、もっとも効果が大きいのはシートごと交換することである。
シートはいくつかのメーカーから発売されていて、きちんとしたメーカーのもので、指定のシートレールと組み合わせれば車検も問題なく普段乗りから使用できる。純正シートに比べてホールド性が高いスポーツ系シートもあれば、腰痛対策に特化したシートもある。それぞれ個性があるのでその使い方を含めて選んでもらいたい。代表的なシートとしては下記の3種類がある。
1:リクライニングシート
いわゆるノーマルシートの代わりになるもの。ややホールド性が良くなっていたりするが、その質感の高さなどもポイント。純正シートは厳しいコストとの戦いによって生まれているが、それに比べてアフターシートメーカーのものは遥かにコストが掛けられる。その分だけ高くなるが、高くても良いものを求める人も多いので、それなりにお金を掛けて良いシートが作られている。
また、そのモデルによって大柄な人向きなモデルや、小柄な人に向いたものなどもあるので、プロショップにアドバイスをもらったり、実際に座ってみて選ぶようにしたい。後述するが、取り付けでもその印象は変わってくる。
2:セミバケットシート
リクライニングシートのサイドサポートや、お尻のサポートが高くなったものであり、リクライニングできるバケットシートでもある。そこでセミバケと呼ばれることが多い。
フルバケットシートに近いホールド性を持ちつつ、リクライニングできるので快適性も高いのが売り。とはいえ、リクライニングする上で腰の部分のホールドはやや弱くなってしまう。スポーツ走行時などのカラダが左右に振られるシチュエーションでは、この腰のホールドがもっとも重要になるので、その意味ではやはりフルバケットシートには敵わない。だが、車内で仮眠を取るようなシチュエーションではリクライニングできることは重要。そういった意味での快適性は高い。
3:フルバケットシート
FRPやカーボンによるひとつのシェルによってできているシートで、リクライニングができないもの。レースではまずフルバケットシートしか使用できない。それは高いホールド性があるので運転操作がしやすいことと、クラッシュ時にもカラダが動きにくく安全性が高いことも理由としてある。
サイドサポートもお尻のサポートも高く、カラダを全体的に包み込むようにホールドするので、強い横Gなどにも耐えられるようになっている。
快適性は低いかと思いきやまったくそんなことはない。むしろ変な姿勢が取りにくく、正しい姿勢で座るので疲れにくいと感じる人も多い。フルバケットシートが不快という人はシートが小さすぎることが多い。一般的にフルバケットシートにサイズ設定はない。ワンサイズなので大柄な男性だと腰が窮屈でつらいという声もある。そこで最近は大きなサイズのフルバケットシートも販売されている。BRIDEではXLサイズをラインアップしていたりと、体型に合わせたモデルもある。そういったものであれば快適性も高い。
そして、シートと同じように大切なのがシートレール。シート交換時はシートと同じメーカーのシートレールが必要。さらにそのシートとシートレールがクルマに適合している証明書を発行してくれるので、これがあれば車検も問題なくパスすることができる。
シートレールはきちんとした剛性がないとクラッシュや事故が起きた時に危険。加工シートレールや謎のメーカーのシートレールは絶対にやめてもらいたい。また、オークションで売られている中古シートレールも、事故を起こして廃車になったクルマから外されたものの可能性も否定できない。新品シートレールは2万円ほどなので、できるだけ新品を購入してもらいたい。
取り付ける人のスキルによってもシートの印象は変わる。わずかにハンドルセンターとシートのセンターがズレているときに、ガタを寄せたりしてセンターに近づけたり、シートの角度を真正面に調整する。シムなどを使って角度調整することもある。そういった小技が実は重要なのがシートの取り付け。プロショップでの取り付けはそういったノウハウが満載なのだ。