クルマの純正メーター内にもいくつかの温度計などがあるが、チューニングカーではさらに追加メーターを取り付けることが多い。それはクルマの状態を把握するために欠かせないからである。では、どんなメーターを取り付けて、どんな数値を把握すればいいのだろうか。
純正メーターでも多くの場合、水温計はついているが、これはエンジンの温まり具合とオーバーヒートを知らせるためで、「水温がやや高め」というような、細かいことはわからないことが多い。とくに国産車ではわかりにくいが、これは細かく見えるほどに「水温が高い」などというクレームが増えるからと言われているが、真偽の程は定かではない。
輸入車では水温や、油温、油圧などがかなり細かく表示される場合がある。チューニングカーでも同じで、まずはこの3種をしっかりと把握するようにしたい。
1:水温
エンジン冷却水の温度。ちょっと古めのクルマなら80~90度。最近のクルマなら90~100度くらいが適正温度。エンジンを冷却しているクーラントの温度で、エンジンを壊さないためにはもっとも重要。水温が高くなってしまうとオーバーヒートして、エンジンブロックが歪んでしまうことが多い。
そうなると修理というよりも違うエンジンに載せ替えるのが現実的。中古エンジンでも工賃まで入れたら普通車では最低でも30万~50万円という高額出費になってしまう。
エンジンブロック自体が歪んでしまうので、バラして内燃機屋さんでまっすぐに加工しなおして再び組み直すということでとてつもない費用がかかる。
純正の水温計が赤いゾーンを指していたらもう時すでに遅しなこともある。現在ではOBDコネクターに差すだけで水温の数値を見られることが多い。そういった簡単に取り付けられるメーターでもいいので水温を把握しておきたい。サーキット走行をするなら水温が上がってきたらクーリング走行を入れることで、クルマのダメージを未然に防ぐことができる。
2:油温
エンジンオイルの温度。ちょっと古めのクルマなら90~100度。最近のクルマなら100~110度くらいが適正温度。エンジン内部を潤滑しているオイルは熱も吸収して温度が上がってくる。120度くらいまでの範囲なら問題ない。サーキット走行でそれ以上になるようならオイルクーラーを取り付けるとか対策を考えたい。街乗りや高速道路の走行で120度以上になることはまずないはずで、もしそうなればなにかトラブルが起きている可能性もある。
純正では油温計が付いているクルマとそうでないクルマがある。トヨタ『86』/スバル『BRZ』などOBDコネクターから油温がモニターできるクルマもあるし、GR86/BRZでは純正メーターで見える。スズキのZC33S『スイフトスポーツ』では、バーグラフで大まかな温度は把握できる。だが、細かく温度を見たければオイルフィルター取付部にサンドイッチブロックを取り付けて、そこに油温計センサーを付けるのが一般的。
よくエンジンオイルの粘度に迷う人がいるが、油温が何度かわからなければ判断のしようがない。サーキット走行する人でも油温が100度程度ならわざわざ粘度の高いオイルを入れる意味はないし、むしろオイルの循環サイクルが遅くなって油膜切れのリスクも増える。逆に思ったよりも温度が高いなら5W30ではなく、5W40にしよう、などの判断もできる。
3:油圧
エンジンオイルの圧送している圧力のこと。車種によって設定値が異なるので一概にどれくらいが適正とも言えない。街乗りではアイドリング時の油圧が、オイル交換したばかりの頃に比べて20%くらい落ちてきたらオイルが劣化したり、オイルにガソリンが混ざってきたと判断して、オイル交換時期と判断する人もいる。必ずしも油圧に反映されるわけではないが、高性能なオイルはアイドリング時の油圧が落ちにくく、安価なオイルは使っていくと油圧が落ちやすい傾向はある。そのためにオイル交換時期の判断に使う人もいる。
サーキット走行では前後左右の激しいGによって、オイルパン内部のオイルが片寄ってしまい、オイルポンプが吸い上げられなくなることがある。そうなるとエンジン内部が潤滑されなくなり、クランクシャフトやコンロッドのメタルベアリングが焼き付いてしまうことにつながる。
オススメは、油圧が下がると警報が鳴る油圧計を取り付けること。コーナリング時に油圧が落ちて警報がなったらすみやかにピットに戻る。これをしていればエンジンブローの可能性を抑えることができる。
エンジンオイルの量を増やして対策したり、オイルパンにバッフルプレートを入れるなど対策を施して油圧が下がらないことを確認したうえで存分に走るようにしてもらいたい。エンジンを壊さないために重要なのが油圧計なのだ。