プロなら、ドアをスピーカーへと作り替えられる!? 「プロが頼りになるワケとは…?」 Part1「スピーカー交換」編 その4 | Push on! Mycar-life

プロなら、ドアをスピーカーへと作り替えられる!? 「プロが頼りになるワケとは…?」 Part1「スピーカー交換」編 その4

世の中には「カーオーディオ・プロショップ」と呼ばれる専門店が数々ある。そこに行けば、カーオーディオシステムのバージョンアップを安心して任せられる。当特集では、それら専門店のバリューの中身と活用の仕方を解説している。

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「デッドニング」の施行例。
  • 「デッドニング」の施行例。
  • ライトな「デッドニング」の施行例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。
  • 吸音材の一例(フェリソニ)。
  • 制振材の一例(フェリソニ)。
  • 制振材の一例(フェリソニ)。
  • 制振・吸音材の一例(フェリソニ)。
  • 「デッドニング」の施行例。
  • 「デッドニング」の施行例。

世の中には「カーオーディオ・プロショップ」と呼ばれる専門店が数々ある。そこに行けば、カーオーディオシステムのバージョンアップを安心して任せられる。当特集では、それら専門店のバリューの中身と活用の仕方を解説している。

クルマのドアは、音響的なコンディションが良くない!?

まずは、スピーカー交換に関してプロが頼りになる理由をさまざま解説している。そして今回は、プロが「ドアをスピーカーへと作り替えられる」ことについて説明していく。

さて、これまでもカースピーカーの取り付けにはいくつかの難しい工程があることを紹介してきたが、もう1つ非常に重要な工程が存在している。それは、「ドア内部の音響的なコンディションを整える」というものだ。実を言うと、スピーカーの取り付け作業においてはこの工程がキモとなる。これを手厚く行うか否かによって、最終的な出音のクオリティが変わってくるのだ。

というのも、カースピーカーはスピーカーユニットだけで製品となっているが、この状態ではまだスピーカーとしては半完成品だ。スピーカーは、スピーカーユニットとエンクロージャー(箱)とで成り立つ。で、カーオーディオにおいてはクルマのドアがエンクロージャーの役目を負うのだが、ドアはそもそもエンクロージャーとしては作られていないので、それをエンクロージャーへと仕立て上げる必要があるのだ。

なお、この作業のことは「デッドニング」と呼ばれている。または「ドアチューニング」と呼ばれることもある。物理的なサウンドチューンングであるからだ。そしてこれを遂行するにあたっては、豊富な経験、知識、技術が必要となる。プロは、それらを十二分に備えている。なのでこれを的確に実行可能だ。

吸音材の一例(フェリソニ)。吸音材の一例(フェリソニ)。

クルマのドアの、音響的な不利要因とは?

続いては、クルマのドアの状況について説明していく。ドアはエンクロージャーとしては設計されていないので、音響的なコンディションがあまり良くない。良くないポイントは、主には2つある。

まず1つ目は、「内部の鉄板が薄いこと」だ。ホーム用のスピーカーをイメージしてほしい。スピーカーは普通ある程度厚みのある木でできていて、作りも屈強だ。なぜならスピーカーユニットをしっかり固定する必要があり、かつ、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーを確実に内部に閉じ込めなくてはならないからだ。ボディが華奢では、それらの役目を果たせない。

対してクルマのドアは、鉄でできているとはいえその鉄は薄くスピーカーボックスとしては強度が足りない。スピーカーの足場を固めるには軟弱で、さらにはスピーカーの裏側から放たれる音エネルギーによって振動し音を発してしまう。ちなみに、ホームオーディオのスピーカーで、エンクロージャーが共振することは有り得ない。共振によって発生する音は、スピーカーから放たれる音を確実に濁す。そのようなことは絶対に起こらないようになっている。

コンティション的に良くないポイントの2つ目は、「密閉性が低いこと」だ。エンクロージャーの中には密閉タイプではないものもあるが、密閉タイプである場合には高い密閉性が求められる。なぜならば、裏側の音を完全に閉じ込めたいからだ。そうしたい理由は以下のとおりだ。箱の中の音が外に漏れると「打ち消し合い(キャンセリング)」という現象が起こってしまう。スピーカーの振動板の動きは、前側から見たときと後ろ側から見たときとでは真逆の関係となっていて音波としても正反対の波形となる。このように、耳で聴く分には同じ音でも波形として真逆の関係にある音同士が干渉し合うと、互いを打ち消し合う現象が発生するのだ。これを防ぐ必要があるのだ。

しかしクルマのドアは密閉性が高くないので、多少なりともキャンセリングが起こりがちだ。プロは、極力これが起こらないようにドア内部の状況を替えていく。

ライトな「デッドニング」の施行例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。ライトな「デッドニング」の施行例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。

「デッドニング」にて行われる作業内容は、主には3つ!

次いでは、プロがクルマのドアをどうスピーカーへと作り替えていくのかを紹介していこう。行われる作業は主に、3工程に分類できる。1つ目が「スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーを減衰させる作業」、2つ目が「鉄板を共振しにくくする作業」、3つ目が「ドアの密閉性を高める作業」、これらだ。

というわけで「デッドニング」ではまず、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーを吸音材や拡散材と呼ばれる部材を用いて、吸収したり散らしたりして減衰させる。

そして、制振材と呼ばれる部材を用いて鉄板を共振しにくくさせていく。さらに、ドア内部に存在する“サービスホール”と呼ばれているメンテナンス用の穴を塞ぐ等の作業を行い、裏側の音が表側に回り込みにくくする。

ただしこれらの作業の細かなやり方は、各カーオーディオ・プロショップごとで異なる部分も多々ある。各店はそれぞれの理論でもって「デッドニング」を実行し、ドア内部の音響的なコンディションを整えていく。

なお「デッドニング」は、手をかければかけるほどその完成度が上がっていくのだが、ライトな内容にとどめるのもアリだ。手厚く行うとコストもかかるので、まずは軽めの内容にとどめれば予算をスピーカー代に注力できる。最終的には手厚く行った方が出音の質が上がり、装着するスピーカーユニットの性能を一層引き出せるが、段階を踏んで作業を進めていっても良いのだ。

ちなみにプロは、段階を踏んで作業を行う場合にも効率的に工程を進めてくれる。限られた予算内でできる最善の方法を都度選択し実行してくれる。また、段階を踏むとそれぞれの作業の効果が分かりやすい。そして、音が進化していくことを楽しめる。その意味では、段階を踏むことにも利がある。参考にしてほしい。

今回は以上だ。次回もプロが頼りになる理由の解説を続行する。乞うご期待。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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