“バスレフボックス”なら低音のコントロールが自由自在!? そのメカニズムを徹底解説!「ザ・マニアック・カーオーディオ」第2回 | Push on! Mycar-life

“バスレフボックス”なら低音のコントロールが自由自在!? そのメカニズムを徹底解説!「ザ・マニアック・カーオーディオ」第2回

“マニアック”なネタを掘り下げることで、カーオーディオへの興味をさらに深めていただこうと試みている当特集。今回は、サブウーファーボックスの中でもより上級者向きとも言える“バスレフボックス”の製作奥義を紹介していく。

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バスレフボックスの一例(ロックフォード フォズゲート・P500-12P)。
  • バスレフボックスの一例(ロックフォード フォズゲート・P500-12P)。
  • バスレフボックスの一例(カロッツェリア・TS-WX1220AH)。
  • バスレフボックスの一例(グラウンドゼロ・GZIB 300XBR)。
  • バスレフボックスの一例(ヴァイブオーディオ・SLICKCBR12-V7)。

“マニアック”なネタを掘り下げることで、カーオーディオへの興味をさらに深めていただこうと試みている当特集。今回は、サブウーファーボックスの中でもより上級者向きとも言える“バスレフボックス”の製作奥義を紹介していく。

そのことについて話を訊かせてくれたのは、山形県南陽市の実力店、“カーズファクトリーシュティール”だ。ちなみに同店は、“バスレフボックス”を搭載したユーザー車両をこれまで数多く製作していて、その設計ノウハウも豊富に持っている。興味深い情報がいろいろ得られた。じっくりとお読みいただきたい。

“バスレフボックス”の方が、狙った低音を出しやすい!

カーオーディオで使われるサブウーファーボックスは、“密閉型(シールドボックス)”と“位相反転型(バスレフボックス)”、この2つのどちらかである場合がほとんどだ。そして主流はズバリ、“シールドボックス”の方だ。こちらの方が小型化させやすいので扱いやすく、そして作りやすくもあるからだ。しかし、“カーズファクトリーシュティール”では、“バスレフボックス”を薦めることが多いという。まずはその理由から教えてもらった。

「“バスレフボックス”をお薦めする理由は、狙った低音を出しやすいからです。もちろん、お客様のご要望ありきですのでどちらにするかはお客様にお決めいただいていますが、欲しいサウンドのイメージが明確である方には“バスレフボックス”は向いています。“バスレフボックス”なら、量感が豊かな低音もスピード感のある低音もどちらも鳴らしやすいので、ご希望に応えられるボックスに仕上げやすいんですよ。

ただし“バスレフボックス”は容量が大きくなる傾向があり、積載するのが難しい車種も出てきます。というのもボックスの設計は車室内の空間の広さによっても変化するのですが、空間が狭いクルマほど実は、大口径のサブウーファーユニットを使いたい。空気が少ない分、パワーをかけないと鳴りにくいからです。ゆえに、ボックスサイズも大きくなります。逆に車室内空間が広いクルマは空気の量が多いので、低音をコントロールしやすく口径がそれほど大きくなくても案外しっかり鳴ってくれます。

というわけで、空間が狭いクルマほど“バスレフボックス”が向いているにもかかわらず、物理的には搭載しづらい。そこのせめぎ合いで悩むことも多いです。そして最終的には、“バスレフボックス”にするのを断念せざるを得ないケースも出てきます」

バスレフボックスの一例(カロッツェリア・TS-WX1220AH)。バスレフボックスの一例(カロッツェリア・TS-WX1220AH)。

“バスレフボックス”の方が、創意工夫を発揮する余地が大きい!

続いては、“バスレフボックス”が狙った低音を出しやすいというその理由を教えてもらった。

「“バスレフボックス”では、ポート(ダクト)と呼ばれる穴を設けることになります。そこから、スピーカーユニットの裏側から放たれる音を位相を反転させて前側に放出します。その放出する音の周波数を、設計によりコントロールできるんです。“シールドボックス”ではこの仕組みを持ちませんので、できることが限られます。対して“バスレフボックス”は、創意工夫を発揮する余地が大きいんです。

ただし設計は簡単ではありません。しかも可能性として失敗することも有り得ます。なので、“シールドボックス”の方が無難であることは確かです。

ちなみに当店では、ソフトを使ってパソコンで基本設計を行います。しかしながらソフトが出した答をそのまま形にすることはありません。なぜなら車室内は完全ではないけれど密閉された空間になっていて、車室自体がポックスになっています。車室内のボックスがどれくらいの大きさなのかも、設計する上で考慮する必要があるんです。

そして、ボックスが2つあることにより実は、ポートにて増強されるピークも2つ存在することとなります。

これがどういうことなのか詳しく説明すると、以下のとおりです。ちなみに“バスレフボックス”の周波数特性を表すグラフをみると、ポートで増強したチューニング周波数が一旦盛り上がり、そこよりも下の周波数帯はすとんと減衰していく傾向を示します。しかしこのような特性になるのは実は、密閉されていない空間での話なんです。クルマに積む場合には車室内には2つのボックスがあることになるので、もう1つ小さなピークが低い周波数帯で発生するんですよ。

そしてこの2つのピークを上手く繋げられると、ローエンドまで伸びる低音を鳴らせます。そこのところが設計における最大のポイントだと、当店では考えています」

バスレフボックスの一例(グラウンドゼロ・GZIB 300XBR)。バスレフボックスの一例(グラウンドゼロ・GZIB 300XBR)。

車室内の空気量は、机上の計算では導き出せない!?

設計上のポイントについて、さらに詳しく教えてもらった。

「そして先述したように、車室内は完全に密閉されているわけではありません。さらには音を吸収するもの(シート等)も置いてあります。なので、車室内の空気量は机上の計算では測れない部分も多分にあります。ゆえにそこのところの見極めには、経験とノウハウが必要です。

ちなみに言うと、ボックス内の空気量と車室内の空気量の比率をコントロールすることで、より大きなピークを発生させることも可能となります。最近はあまり行われなくなりましたが、音圧の大きさを競い合う“SPL競技”車両を作る場合も、サブウーファーボックスは“バスレフボックス”にした方が有利です。ピークをコントロールできるので、音圧を稼ぎやすいんです。

つまり“シールドボックス”では、サブウーファーユニットの裏側から放出される音エネルギーはボックス内部に閉じ込めることになるので、そのパワーを利用することはできません。しかし“バスレフボックス”では裏側の音エネルギーも積極的に活用できる。音圧のコントロールにおいても、それは同様なんですよ。

なので私自身、“バスレフボックス”の方が作っていて楽しいです。低音をコントロールできる要素が多いことが、やり甲斐をもたらしてくれるんです(笑)。

ご来店いただけましたら、さらに詳しくご説明いたします。低音増強について、そしてその他のことに関しても、なんなりとご相談ください。お待ちしています」

《太田祥三》

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