カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 1・スピーカー編 第7回「インストール関連の用語について」その2 | Push on! Mycar-life

カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 1・スピーカー編 第7回「インストール関連の用語について」その2

運転中に音楽を楽しむのは普通のことだが、カーオーディオのシステムアップを検討し調べてみると専門用語が頻出し、いきなりマニアックな雰囲気が色濃くなる…。そのギャップを埋めるべく、用語解説をお届けしている。今回は「インナーバッフル」について説明していく。

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市販インナーバッフルの一例(カロッツェリア・UD-K5210)。
  • 市販インナーバッフルの一例(カロッツェリア・UD-K5210)。
  • インナーバッフルを用いたスピーカーの取り付け例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。
  • インナーバッフルを用いたスピーカーの取り付け例(製作ショップ:サウンドカーペンター<愛媛県>)。

運転中に音楽を楽しむのは普通のことだが、カーオーディオのシステムアップを検討し調べてみると専門用語が頻出し、いきなりマニアックな雰囲気が色濃くなる…。そのギャップを埋めるべく、用語解説をお届けしている。今回は「インナーバッフル」について説明していく。

「バッフル」という言葉には、「隔壁」という意味がある!

結論から入りたい。「インナーバッフル」とは、スピーカーを取り付ける際の“土台”となるパーツだ。市販スピーカーを装着しようとするときには、何らかの「インナーバッフル」が絶対的に必要となる。

なお「インナー」という言葉が付いているのは、当パーツがドアの内張りパネル内で用いられるものであるからだ。

そして「バッフル」という言葉の意味は以下のとおりだ。この単語は動詞の場合には「困惑させる」とか「まごつかせる」という意味を持つのだが、名詞として使われるときは「隔壁」とか「調整装置」といった意味を表す。「インナーバッフル」においての「バッフル」はまさしく、「隔壁」という意味の名詞だ。

ところで、前回の記事では「エンクロージャー」について解説した。そこで説明したとおり「エンクロージャー」とは、スピーカーユニットを取り付ける「箱」のことを指すのだが、「エンクロージャー」はスピーカーユニットの裏側から放たれる音エネルギーを閉じ込める役割も担っている。スピーカーの裏側から放たれる音は耳で聴く分には表側の音と同一ながらも、波形的には真逆の関係にあるので、同一空間で交わると「キャンセリング(打ち消し合い)」を引き起こす。「エンクロージャー」はそれを防ぐためのものでもあるのだ。

そしてオーディオの世界での「バッフル」も、スピーカーユニットの表側から放たれる音エネルギーと裏側から放たれる音エネルギーとを“隔てる”ためのもののことを指す。「エンクロージャー」は箱型になっているが、「バッフル」は平面の板ながらもある程度の大きさを確保することで、「隔壁」としての役割を果たす。なので大きな「バッフル板」にスピーカーユニットが取り付けられたもののことは、「平面バッフル型スピーカー」と呼ばれている。

インナーバッフルを用いたスピーカーの取り付け例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。インナーバッフルを用いたスピーカーの取り付け例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。

「バッフル」という言葉には、「スピーカーの取り付け面」という意味もある!?

しかしながらカーオーディオで使われる「インナーバッフル」は、「表側と音と裏側の音を“隔てる”」という役目は負っていない。「インナーバッフル」はせいぜいスピーカーのフレームよりも少々大きいくらいのサイズしかないので、表側と裏側の空間を“隔てる”役目は到底果たせない。

でも広義に捉えると、「インナーバッフル」も「バッフルボード」の一種、と言えなくもない。そして少なくとも「スピーカーを取り付ける面」という意味では同一と言って良い。なので一般的な「バッフル」とはおよそ様子が違ってはいるものの、「バッフル」という語彙が用いられている。

というわけなので「インナーバッフル」という言葉を意訳するならば、「ドア内部で使われる、スピーカーの取り付け面となるパーツ」ということになる。

なお、そう言ってしまうとこれが単なる取り付け用部材、という印象が色濃くなるが、実際のところ「インナーバッフル」は、音響パーツとしての役割も負っている。そして音にこだわる愛好家の間ではむしろ、こちらの役割の方が重要視されている。

さて、音響パーツとしてはどのような役割を担うのかというと、それは主には3つある。まず1つ目は、「スピーカーの足場を固める役割」だ。スピーカーは「振動板」と呼ばれるコーン状のパーツを前後に動かして音を生み出すのだが、もしもスピーカーをドアの鉄板に直接装着すると、その営みに少なからず支障をもたらす。というのも、ドアの鉄板は案外に薄く弱いので、スピーカーが振動板を動かそうとするときに踏ん張りが効かず、エネルギーを多少なりともロスしてしまう。しかし「インナーバッフル」を使えばそのロスを少なくできる。足場ががっちりするので、効率良く音を発せられるようになるのだ。

インナーバッフルを用いたスピーカーの取り付け例(製作ショップ:サウンドカーペンター<愛媛県>)。インナーバッフルを用いたスピーカーの取り付け例(製作ショップ:サウンドカーペンター<愛媛県>)。

「インナーバッフル」を用いれば、鉄板の共振を抑制可能に!

2つ目は、「鉄板の共振を抑える役割」だ。もしもスピーカーをドアの鉄板に直接固定したら、スピーカーの運動エネルギーで鉄板がたやすく共振し余計な音を出してしまう。でも「インナーバッフル」を用いれば、その共振を抑制する効果も発揮する。

そして3つ目は、「スピーカーの立ち上げ量を調整する役割」だ。市販の(既製品の)「インナーバッフル」を使う場合にはこの役割は限定的なものとはなるが、ワンオフする場合には厚みを調整することで、スピーカーを内張りパネルの際まで立ち上げられるようになる。立ち上げ過ぎにも気を付けた方が良い場合もあるが、パネル面との距離を少なくできるとスピーカーから発せられる音がパネル内に回り込む量を減らせる。結果、パネルの共振を少なくでき、また車室内により多くの音情報を放出できる。

ところで、スピーカーをドア内部の鉄板に直接取り付けるのは、そもそも不可能だと思った方が良い。純正スピーカーが固定されていたリベット穴と、スピーカーのフレームに設定されているネジ穴の位置がぴったり合うことはほとんどない。なので、もしも鉄板に直付けしようとすると、鉄板にネジ穴を開けなくてはならなくなる。

しかし車両側のリベット穴の位置に合うように「インナーバッフル」を製作しそれをドアに装着すれば、スピーカーのネジ穴がどこについていようとも「インナーバッフル」でネジを受けられる。結果、どのようなスピーカーでも装着できるようになる(スピーカーの厚みがある場合は別の加工が必要になる)。

ちなみに市販の「インナーバッフル」は普通、車体メーカーごとで用意されているので、愛車に適合する製品を選べば装着できる。

今回はここまでとさせていただく。次回からは新たな章に突入する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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