アンティフォン 松居邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 No.92 オーディオを楽しむことの意味とは…。その2 | Push on! Mycar-life

アンティフォン 松居邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 No.92 オーディオを楽しむことの意味とは…。その2

“生演奏”と“録音”。この2つを対比させながら、オーディオを楽しむことの意味を、松居さんに考察していただいている。今回は、“録音”をキーワードに、音楽のこと、オーディオのことを、あれこれと紐解いていく。じっくりとお読みいただきたい。

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“生演奏”と“録音”。この2つを対比させながら、オーディオを楽しむことの意味を、松居さんに考察していただいている。今回は、“録音”をキーワードに、音楽のこと、オーディオのことを、あれこれと紐解いていく。じっくりとお読みいただきたい。

オーディオの面白さについて綴らせていただいている。

前回は、生演奏を楽しむことと、録音を楽しむこと、この2つの対比から、オーディオを楽しむことの意味を考えてみた。

対して今回は、オーディオという文化の中で息づいてきた“録音する”という側面から、オーディオを楽しむことの意味を考察していきたいと思う。

さて。

PCで音楽データを管理するようになる前までは、オーディオ装置の中にはいつも、“録音機”が存在していた。

僕にとっての最初の“録音機”体験と言えば、「ラジカセ」だ。昔からのマニアの方々は解ってくださると思うが、「ラジカセ」とは「ラジオ付きカセットテープレコーダー」の略称だ。僕は、少年期から青年期に至る中でこれを使用した。好きな歌番組の時間にはテレビの前にこの「ラジカセ」を置いて録音したりもしたものだ。

大人になってからそれは、「オープンリール式」となり、再び「カセットテープ」(カセットデッキ)となり、「DAT」になり…。その後には「MD」も登場した。「カセットテープ」の時代には、FM放送を録音(エアチェック)して聴いていた。

カーオーディオも「カセットデッキ」が主流になり始めた頃から進化が進む。ナカミチが物凄いHi-Fiなカー用の「カセットデッキ」を世に出し、それを初めて聴いた時には、その高性能さに衝撃を受けたものだった。

蓄音機から始まったオーディオは、「テープレコーダー」ができたことで普及が本格化したと言っていい。

なお「テープレコーダー」は、そもそもSONYが始まりだ。その後SONYは「カセットテープ」「CD」「MD」をそれぞれ開発し、音楽を身近にしてゆく。

SONYだけではなく、サンスイ、トリオ、パイオニアなどのオーディオメーカーも成長した、オーディオは日本のお家芸になる。

ところでSONYの創業者の一人である大賀典雄氏は、東京藝術大学在学中、伊深さんや盛田さん達(東京通信工業)が売り込みにきた「テープレコーダー」の音質にクレームをつけたのがきっかけで、SONYに入社したという。その大賀さんが音楽家としてベルリンへ留学していた頃、ベルリンフィルの指揮者になったばかりのヘルベルト・フォン・カラヤンと友達になり、後にCDフォーマットについても相談することとなるのだが…。

目を閉じて指揮をする姿など独自の美学を追求したカラヤンという人物は、実は、熱烈なオーディオファイルだった。そのことは、クラシック音楽の普及に絶大な影響を及ぼしたと言っていいだろう。

音楽家、特にクラシック音楽の演奏家には、生演奏至上主義者が多い。けれどカラヤンはとても広いレパートリーの音楽を精力的に録音した。録音方法を工夫し、音楽性の高い作品を数多く残した。

このことが、クラシック音楽の普及にどれだけ貢献したことか…。

Jazzの世界には、こんなエピソードがある。ビバップという即興演奏スタイルを確立したチャーリー・パーカーという人は、ビッグバンド時代には、あまり上手なプレーヤーではなかったらしい。しかしある時、ターンテーブルとレコードを持ってみんなの前から姿を消す。

その数か月後現れたチャーリーは、見違えるような即興プレイを披露し皆を驚かせたらしい。回転数の変えられるターンテーブルで耳コピーして、ハーモニーに敏感に反応し合う、今も続くインプロビゼーションの形を築く。それはその後、ディジー・ガレスビー、マイルス・デイビスに引き継がれてゆく。

これらのエピソードを紐解いて改めて、オーディオが音楽の進化に貢献してきたことを思い知る。“録音”技術は、音楽の発展に確実に影響を与えてきた。そんなことを考えながらオーディオ装置で音楽を聴いてみると、また違った気分に浸れると思うのだが、いかがだろうか。

《松居邦彦》

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