オーディオテクニカが出した1つの答。『AT-RX5500A』は何を目指して作られたのか。 | Push on! Mycar-life

オーディオテクニカが出した1つの答。『AT-RX5500A』は何を目指して作られたのか。

"カーオーディオにおけるベストな音質を徹底追及"する、オーディオテクニカの『Rexat(レグザット)』シリーズ。その最新作である超高級車載用オーディオケーブル『AT-RX5500A』が発売開始されてから、約1か月が経過した。

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オーディオテクニカ『AT-RX5500A』
  • オーディオテクニカ『AT-RX5500A』
  • オーディオテクニカ マーケティング本部 国内営業部 モービルサウンド課 マネージャーの水口正晃氏
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"カーオーディオにおけるベストな音質を徹底追及"する、オーディオテクニカの『Rexat(レグザット)』シリーズ。その最新作である超高級車載用オーディオケーブル『AT-RX5500A』が発売開始されてから、約1か月が経過した。

これをすでに搭載しているユーザーも多く、当機の音質性能の高さは各所で話題となっている。当サイトでも、試聴取材を実行し、その実力を把握済みだ。ところで…。

この、従来モデルに対して約5倍という高額な製品が誕生することとなった、その意味についてはお伝えできていなかった。今だからこそ訊ける、当機が開発された背景、狙い、そしてこれに込められたメーカーの思いを探り、それらをリポートしながら、当機の凄さの真髄を改めてあぶり出したいと思う。

取材にご協力いただいたのは、同社マーケティング本部 国内営業部 モービルサウンド課 マネージャーの水口正晃氏。氏に、開発がスタートした経緯から、開発途中のエピソード、そして今後の展開の可能性等々について、じっくりとお訊きした。

■製品のクオリティには不安なし。しかし、受け入れられるかには一抹の不安も持ちながら発表会当日を迎え…。

『AT-RX5500A』の発売開始日は2017年12月22日だが、その姿と音が初めて披露されたのは、同年11月11日に「オーディオテクニカ」の"テクニカハウス"(東京都文京区)で開催された「新製品試聴会」だった。まずは、その日を迎えた当時の心境や当日の感触についてお訊きした。

「音質性能については自信を持っていました。開発当初、まだプラグをはじめもろもろの仕様が定まっていない導体だけの状態で試作品の音を確認したときから、これならいける、という手応えがありました。従来モデルと比べて明らかに音が違っていて、そして鳴らしているその場でどんどん音が良くなっていくんです。エージングを進めることで性能が成長することも分かりました。

そこからいろいろと苦労も重ねたのですが、そうして完成させた製品のクオリティに不安材料はありませんでした。しかし、試聴会にお集まりいただけるかどうか…。それについては正直、不安に思っていました。

でも結果的に、予想を上回る数の方々にお越しいただけて、かつ、高い評価をいただきました。有り難かったですね。

試聴会を終えて、自信を確信に変えることができました」

■50周年モデルをリリースし、最上級のモデルを作り上げられたと考えた。しかし…。

続いては、『AT-RX5500A』が開発されることとなった経緯をお訊きした。従来のトップエンドモデルに対して約5倍の価格となる超高額製品である当機。これほどまでの製品が生み出されることとなった理由とは…。

「2011年に50周年モデルを出し、最高級モデルを作り上げられたと考えていました。そしてこれに続いて2014年の7月に新たなHIGH Lineモデルとなる『AT-RX28』をリリースしたのですが、当機の開発においては高額化し過ぎないことも努力目標の1つに据えていました。50周年モデルで採用した「エアースペースインシュレーションシステム」を搭載するなどして高性能化を図りましたが、価格的には50周年モデルと比べより現実的なレベルに落ち着かせられました。ド級の製品の開発は、50周年モデルで完結していたわけです。

ところが市場には、50周年モデルをはるかに超える高額モデルが使われる傾向が現れてきました。超高性能な高級モデルを求める声が耳に届くようになってきたのです。

また、カーオーディオの世界にも"ハイレゾ"の波が押し寄せていました。弊社でもデジタルトランスポートD/Aコンバーター『AT-HRD5』(現在は『AT-HRD500』にモデルチェンジ)を擁してそれに対応してきましたが、ここからのアナログ出力を高品位に伝送できる"ハイレゾ"時代の新たな高級オーディオケーブルが必要ではないか、とも考えるようにもなりました。

さらには、『Rexat』を立ち上げ高品質なカーオーディオ用ケーブルを作り続け、市場を切り拓いてきた自負もあります。製品を多くのユーザーの皆さまにお使いいただき、また特約店様を含む、多くの専門店にご支持いただいてきました。そういった方々に対して、最高のものを当社からお届けしたいとも考えました。

これらが、『AT-RX5500A』が生まれることとなった理由です。"最高のもの"、そこを目指して開発をスタートさせました。今からちょうど2年前の、2016年の初頭のことです」

■性能と耐久性にこだわり、度重なる遠回りをして、ようやく完成に至った。

次には、『AT-RX5500A』が完成するまでの道のりに、どのような苦労があったのかをお訊きした。

「数え上げるとキリがないですね。導体素材として"7N-Class D.U.C.C."を採用することはすんなりと決まり、その段階で音の良いケーブルになるであろう手応えを掴んだわけですが、その先が大変でした。

性能についてこだわる結果、仕様変更が必要となることも多々ありました。その度に、その部分についてはゼロからやり直しになりますから。遠回りをたくさんしてきました。

例えばプラグでは…。最終的には"64チタン合金削り出しプラグ"となりましたが、途中までは"黒檀"を使おうと考えていました。"黒檀"は高級な楽器に使われることもある音響的に優れた素材です。弊社でもヘッドフォンのハウジングにも採用していて、加工技術も持っています。しかし"黒檀"は強度が出しにくく、その点を担保するためにはある程度の大きさが必要となります。ほぼ完成するところまで行ったのですが、取り回し性を優先して泣く泣く使用を断念しました。

また、耐久性の確保についても相当に苦労しています。弊社の品質保証基準は全体的に高めですが、車載用の製品については特に厳しい基準が設けられています。耐熱温度は90度に設定していますし、例えば屈曲試験というものがあって、ひたすら何度も折り曲げてどのくらいで損傷が出てくるかをみたり。被膜に採用した"シルク"は、相当にいじめ抜かれました。そもそもデリケートですし繊細な造りとなっていますから、何度もだめ出しされて…。

弊社の製品はすべてこのような厳しいテストをくぐり抜けています。『AT-RX5500A』の耐久性についても自信を持っています」

■音を確認したいとなったら、『Rexat』特約店に問い合わせるベシ。

また『AT-RX5500A』は、生産過程においても厳密な品質管理体制が敷かれているという。

「最終的な組み上げは、熟練した1人の職人の手で行われています。複数の職人で作業をすると、一定の品質を保つのが難しくなるからです。そして作り上げられた製品は最後、品質保証部による入念なチェックを経てから出荷されます。オーダーをいただいてから発送までに1か月から2か月のお時間をいただいていますが、その分、品質管理には万全を期しています」

さて、今後の展開についても大いに気になるところなのだが…。

「品番の最後の"A"は、オーディオケーブルの"A"です。"A"があるということは他のモデルと同様に、"S"や"C"等々が付いた製品が登場することもあるという意味を含んでいます。しかしながら現時点ではまだ、次の展開は白紙です。ただ、"7N-Class D.U.C.C."が優れた素材であることは分かりましたから、車載用にとどまらず、他の分野の製品で使用することの提案もしています」

いかがだったろうか。価格をみると非現実的なほどの超高級品のようにも思えるかもしれないが、確かなニーズがあり、その期待に応えるべくして難産の末に生まれた"銘品"である、この『AT-RX5500A』。カーオーディオを趣味とするならば、この音を聴かずして過ごしてしまってはもったいない。まずはご体験を、ぜひに。

《太田祥三》

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