これまで紹介してきたのは一般的なラインアップだが、今回取り上げるリファレンスRCAは別格のブレードになる。
本来はスーパーハイエンド・オーディオ用のカタログに掲載される予定だが、参考までにここで紹介しておくことにしたい。
スーパーハイエンドだけに、その設計も大変入念に行われている。導体はやはり素材の成分を最適にコントロールした独自のBRC銅線である。この素線を19本撚り合わせて1本芯線とした2芯シールド・タイプとして構成されている。
絶縁はテフロンだが、多孔性の固体テフロンから製造されたテープとして使用する。つまり芯線の上からテフロン・テープを巻きつけた形で、この形状とすることによって一般的な溶融成型による不均一性などを排除することが可能だ。同じ素材を使っても、こうしたところで大きな違いが出てくるわけである。
絶縁した芯線はホット／コールドを天然綿糸でぎゅっとまとめている。サンプルをよく見ると、何本か撚り合わせた紐状の綿糸で絞り、その上から布状の綿でさらに巻きつけてあるようだ。手の込んだ手法である。
シールドは2層で、綿糸の上に銅箔のテープを巻き、さらにその上にBRC銅の編組を被せている。外来ノイズや輻射の遮断に万全を期した構成である。その外側にはエラストラン（Elastollan）という特殊な絶縁材を、シースとして採用している。これは絶縁性能を持つとともにダンピング特性に優れた素材で、耐久性が高く摩擦係数が低く、強靭で防滴性や耐温度特性に富み、化学薬品にも強い。これによって導体の振動を適度に緩衝するとともに、車内環境への配慮も行っているわけである。そして最外周は編組状のシースでカバーされている。
プラグも重厚な作りのコレクトチャック式で、抜け落ちなどの心配がなく音質にも優れた設計である。
背景の静かさが増して、ディテールがくっきりと浮き上がってくるような出方だ。ノイズが減少しているのがわかる。ニュートラルな音調は他の製品とも共通するが、例えばチェロなどは表情や響きの変化が非常に細かく、また伸びやかで艶も豊かだ。
アカペラでは声のニュアンスが鮮やかになる。細かなレベルの信号が埋もれなくなったため、ディテールの起伏が明快に出てくるからである。ジャズは自然に深い低域まで沈み、品位の高い再現が得られる。オーケストラも緻密だが、なにより音数の違いを感じる。多彩で鮮烈な鳴り方が印象的である。
