クルマの加速、減速、コーナリング性能をまとめて高められるのが軽量化だ。燃費やレスポンス向上も期待できる一方、現代のクルマで効果的に軽量化するにはパーツ選びが重要になる。
◆現代のクルマは重くなった一方で各部品は徹底的に軽量化されている
近年、クルマの車両重量は増加傾向にある。ひと昔前なら1t前後のクルマも珍しくなかったが、現在では1.4~1.5tクラスも一般的で、大柄な車種なら1.7tを超えることも珍しくない。しかし、それはメーカーが軽量化を怠っているという意味ではない。むしろ現代のクルマは、各部を徹底して軽く作ったうえで現在の車両重量になっている。
その理由のひとつが安全性能だ。衝突時に乗員を保護するためボディには高い強度が求められ、歩行者保護や各種安全装備も充実している。快適装備や電装品も増え、クルマには重量増につながる要素が数多く存在する。
一方、新車の商品力を考えれば燃費や電費は極めて重要だ。車両重量を軽くできれば燃料消費を抑えやすく、加速性能やハンドリングにも有利になる。そのため自動車メーカーは高張力鋼板やアルミ、樹脂などを適材適所で使い、わずかな重量まで削る設計を進めている。
ひと昔前であれば純正シートからバケットシートに交換するだけで、片側10kg以上、2脚で20~30kgほど軽量化できる車種もあった。しかし現在は純正シート自体が軽量化され、交換しても以前ほど大きな重量差が出ないケースが増えている。
マフラーも同様だ。かつては純正マフラーが非常に重く、社外品への交換で大幅な軽量化ができる車種もあったが、現在は純正品も軽量化されているため、ステンレス製の社外マフラーへ交換しただけでは重量差が小さいケースもある。それでも狙う場所と素材を選べば、現代のクルマにも軽量化できる余地は残されている。
◆クルマの軽量化には取り外しと素材置換という2つの方法がある
軽量化のアプローチは大きく分けて2つある。不要な装備を取り除く「取り外し」と、重量のある部品を軽量な素材やパーツへ交換する「素材置換」だ。
もっとも費用をかけずに重量を落とせるのが取り外しだが、ストリートカーでは現実的にできる範囲が限られる。たとえばエアコンを取り外せばまとまった重量を減らせるものの、夏場の快適性は大幅に低下する。内装や内張り、遮音材を取り除く方法もあるが、数kgの軽量化と引き換えに騒音や振動が増えてしまう。
モータースポーツでは、フロアなどに施工されている防音・防振材を削り取る「アンダーコート剥がし」も定番だ。車種によっては数kg程度の軽量化が可能だが、遮音性や断熱性が低下するためロードノイズが増え、床から熱が伝わりやすくなる。エアコンの効きにも影響する可能性があるため、レースやタイムアタック車両ならともかく、普段使いするストリートカーにはオススメしにくい。
つまり快適性を保ったまま軽量化したいのであれば、不要なものを取り外すよりも、重いパーツを軽量なものに交換する素材置換の方が現実的なのだ。
◆まず狙いたいのは鍛造ホイールなどによるバネ下重量の軽量化
素材置換でまず注目したいのがバネ下重量だ。ホイールやタイヤ、ブレーキなどサスペンションより路面側にある部品を軽くすると、車体そのものを軽くした場合とは異なり、サスペンションが路面の凹凸に追従しやすくなる。さらに回転する部品を軽量化できれば回転慣性も小さくできるため、加速や減速、ステアリングレスポンスの変化を体感しやすい。
代表例がホイールだ。純正の鋳造ホイールから軽量な鍛造ホイールへ交換すると、サイズや製品によっては1本あたり2~3kg軽くなる場合もある。4本なら車両全体で10kg前後の軽量化につながるケースもあり、回転慣性の低減による出足の軽さや路面追従性の向上も期待できる。
ただし軽ければ軽いほど良いわけではない。ホイールには強度や剛性、耐久性も必要なので、車重や使用環境に適した信頼できる製品を選ぶことが重要だ。
ブレーキもバネ下重量を軽減できるポイントだ。純正の鋳鉄製キャリパーからアルミ製キャリパーへ変更したり、ブレーキローターをアルミ製ベルハウジングを持つ2ピースタイプに交換したりすることで軽量化できる場合がある。
一方でブレーキは安全に直結する部品だ。重量だけを基準に選ばず、制動力や前後バランス、耐熱性、使用するタイヤや走行ステージまで含めて選択したい。
◆カーボンやFRPの外装パーツで高い位置の重量を削る
外装パーツの素材置換も、実用性を大きく損なわず軽量化できる方法だ。代表的なのがボンネットで、スチール製ボンネットをカーボンやFRP製へ交換すれば車種によって数kgから10kg前後の軽量化が可能な場合もある。
ボンネットは車体前方かつ比較的高い位置にあるため、ここを軽くすることでフロントの重量感を減らし、ノーズの動きを軽快にする効果も期待できる。
ただし近年のスポーツモデルでは純正状態からアルミ製ボンネットを採用する車種が増えている。その場合、カーボンやFRP製へ交換しても重量差はそれほど大きくならない。
その代表例がトヨタ『GRヤリス』だ。フロントフード、左右ドア、バックドアにはアルミ素材が使われ、ルーフにも炭素繊維を使ったC-SMCが採用されている。このようなクルマではメーカーがすでに徹底した素材置換を行っているため、外装パーツを交換して大幅に軽量化する余地は小さい。
またFRPやカーボン製外装パーツを選ぶ際は重量だけでなく、強度や固定方法、仕上がり、雨水への対策なども確認しておきたい。
◆チタンマフラーはリアまわりを軽くできる有効な手段
マフラーは前述した通り、ステンレス製のアフターパーツへ交換するだけでは大きな軽量化にならないケースもある。しかしチタン製となれば話は別だ。
製品や車種によっては純正マフラーから大幅な重量減が可能で、10kg前後軽くなる例もある。しかもマフラーのサイレンサーはリアオーバーハング付近に配置されることが多い。車体中心から離れた場所の重量を減らせるため、単純な車重減だけでなくクルマの向きを変える際の軽快感にもメリットが期待できる。
もちろんチタンマフラーは価格が高くなりやすい。軽量化だけを目的に導入する場合は費用対効果を考える必要があるが、排気音や耐食性、見た目なども含めて選ぶのであれば魅力の大きいパーツだ。
◆バッテリーの軽量化は重量と搭載位置の両面で効果的
素材置換による軽量化の最後に注目したいのがバッテリーだ。一般的な鉛バッテリーはサイズによって10~20kg近い重量になるが、小型ドライバッテリーや自動車用の軽量バッテリーへ交換することで大幅に軽くできる場合がある。
エンジンルーム内の高い位置やフロントオーバーハング付近にバッテリーが搭載されている車種では、重量そのものを減らすだけでなく前方の慣性を減らす効果も期待できる。
ただしバッテリーは単純に軽いものへ交換すればいいわけではない。必要な始動性能や容量、充電システムとの適合、アイドリングストップ機能への対応などを確認する必要がある。リチウム系バッテリーを使う場合は、とくに車両側との適合確認が重要になる。
GRヤリスのように補機バッテリーをラゲージスペース床下に搭載する車種もある。こうしたクルマはメーカーが重量配分まで考えて搭載位置を決めているため、単純に「重い部品を軽くする」という考えだけではなく、どこにある重量をどれだけ減らすのかまで考えることが重要だ。
現代のクルマは純正状態ですでに高度な軽量化が施されている。そのため昔のようにパーツを交換するだけで数十kg落とせるケースは減った。しかしホイールやブレーキ、外装、マフラー、バッテリーなど、効果の出やすい場所を選べば快適性を維持したまま軽量化できる。単純な車重の数字だけを追いかけるのではなく「どこの重量を減らすか」を考えることが、現代のストリートカーにおける軽量化チューニングのポイントなのだ。



