【日産 エクストレイル 300km試乗】存在感を取り戻せるか? 次期モデルが向かうべき方向性とは | Push on! Mycar-life

【日産 エクストレイル 300km試乗】存在感を取り戻せるか? 次期モデルが向かうべき方向性とは

日産自動車のC-SUV(Cセグメント相当)『エクストレイル』を300kmあまり走らせる機会があったので、レビューをお届けする。

自動車 試乗記
日産エクストレイルのフロントビュー。丸くなった旧型から直線基調に戻ったが、ラギットより上級という印象
  • 日産エクストレイルのフロントビュー。丸くなった旧型から直線基調に戻ったが、ラギットより上級という印象
  • 日産エクストレイルのサイドビュー。全長は約4.7mと、グローバルではコンパクトクラスに入るサイズ
  • 日産エクストレイルのリアビュー。SUVとしてオーセンティックなフォルムだが若干特徴に乏しい
  • 日産エクストレイルのフェイス。ヘッドランプが下段、ポジションランプが上段という構成。ヘッドランプは先行車、対向車を避けて照射するアクティブハイビームだ
  • 日産エクストレイルのテール
  • エンジンは可変圧縮比機構が組み込まれたハイテク型の3気筒1.5リットル直噴ターボ
  • タイヤは235/60R18サイズの住友ゴム「ファルケンZIEX 310A」
  • サイドドア開放の図。ドア開放角の大きさは随一で、室内へのアクセス性は抜群に良かった

日産自動車のC-SUV(Cセグメント相当)『エクストレイル』を300kmあまり走らせる機会があったので、レビューをお届けする。

エクストレイルの第1世代が登場したのは2000年のことで、現在販売されているのは第4世代。電動AWD(4輪駆動)システム「e-4ORCE(イーフォース)」、可変圧縮比ターボエンジンを搭載するハイテクSUVである。

日産は4月14日の長期ビジョン説明会で遠からず発売される次期エクストレイルを公開した。現行モデルが日本に登場した2022年から4年しか経っておらず、「えっ、もう?」という印象を受けるが、現行モデルの北米デビューは2020年と日本より2年も早く、それからカウントするとちょうど6年のモデルライフとなる。フルモデルチェンジを受けてもおかしくないタイミングではあるのだ。

モデル末期となったエクストレイルだが、果たして実際のパフォーマンスや特質はどのようなものだったのか、300kmあまりという短い距離ではあったが、おさらいとしてレポートしてみようと思う。

テスト車は「X e-4ORCE」にカーナビを追加装備したもので、合計価格は500万円を越える。筆者は第1世代の200万円台というイメージが強く、クルマの価格が暴騰している今日この頃とはいえ少なからず驚いた。試走ルートは横浜を起点とする北関東周遊で総走行距離は313.0km。最遠到達値は栃木県の真岡。道路種別は市街地4、郊外路6、高速と山岳路はなし。1~2名乗車、エアコン常時AUTO。

まず長所と短所を5つずつ列記してみよう。

■長所
1. ドライブモードを切り替えてみてわかるe-4ORCEの威力。
2. 電気モーター界のシルキーシックスと思うくらい滑らかなパワーフィール。
3. エンジンノイズの遮断が優秀で低負荷時はほとんど無音。
4. ここ一番の加速力に優れる。
5. ほとんど90度に近い開閉角を持つドア。

■短所
1. 価格が高い。
2. 燃費スコアは期待値を下回った。
3. ザラ目の強い舗装路ではロードノイズが急増。
4. 3列目まで使うと車内はタイト。ただし3列目も実用には耐える。
5. 上質感に振りすぎてエクストレイルという元のキャラが不明瞭に。

◆走行性能、乗り心地

では項目別にレビューしていこう。エクストレイルのe-4ORCEモデルは最低地上高が185mmと、本格SUVに比べるとやや狭い。そのこともあってか、サスペンションセッティングは操縦性、乗り心地ともオンロードでの質感向上を狙ったものという感があった。

操縦性は素晴らしい。車重は1.8トン台と、このクラスとしてはヘビー級に属するが、市街地、郊外路とも身のこなしの軽さはそのことを感じさせないものだった。クルマの動きが軽いと車体の大きさが気にならなくなるし、乗員にとってもGのかかりとクルマの動きの一致性が高くなるので身構えたり体を突っ張らせたりする頻度が減り、疲れが少なくなるなどいいことずくめだ。

ロードテスト中、その軽いフィールがe-4ORCEによるものということが判明した。スタートからしばらくドライブモードをノーマルにして走っていたのだが、燃費があまり良くないためエコに入れたら、途端に動きがフツーになってしまったのだ。メーター内の駆動力配分を見ると、ノーマルではフルタイムで4輪に制御が入るのに対し、エコは完全なFWD(前輪駆動)というわけではないが、普段はほぼFWD。その違いが出た格好である。

交差点を曲がったり車線変更したりするだけでもその違いは如実に感じられる。たとえばレーンチェンジのさい、エコだとレーンチェンジの始まりと終わりにロールが発生し、“よっこいしょ”という感じになるのに対し、ノーマルモードだとほとんどロールしないまま糸を引くような走行ラインで車線変更できる。交差点を曲がる時もまるでベーシックカーのような気軽さだ。それを駆動力配分で実現させているとはすごい、と感心せざるを得なかった。エコに入れても明確に燃費節減効果を得られるわけではなかったため、結局大半をノーマルで過ごした。

快適性は状況次第。中高速域ではフラットかつ滑らかで、大変乗り心地がいい。先に述べたe-4ORCEの効能による車体の揺れの小ささが走行フィールを上質に感じさせた。また重心の高いSUVとしては路面のうねりがきついところでのバウンシング(上下方向の揺動)やぐらつきも小さかった。これはエクストレイルの美点と言っていいだろう。

市街地の微低速でもそのフィールが維持されれればよかったのだが、その領域ではゴツついたフィールが強まり、中高速域に比べて快適性は落ちる。それでも並みの良さはあるが、日産のブランドイメージをモノで作るのならトヨタ自動車『RAV4』などに対して普通のユーザーが一発で体感できるくらい明確なアドバンテージを持たせるべきだろう。

車内の静粛性は外部騒音、エンジン音の遮断については及第点。ロードノイズも普通の舗装面であればよく抑えられていた。一方、ザラ目の強い老朽化したアスファルト舗装や荒れたコンクリート舗装にはやや弱い。オーディオの音が聞きにくくなるようなうるささではないが、普段が静かなだけに落差が目立つ。ボディシェルの共振が増大するような印象で、もう少し制振材を増やしてもいいのではないかと思われた。

◆パワーフィール、燃費

パワートレインのパフォーマンスに話を移そう。エクストレイルのe-4ORCEはフロントに150kW(204ps)、リアに100kW(136ps)の電気モーターを配した電動AWD。発電用エンジンは圧縮比を8:1から14:1まで機械的に変化させる機構が組み込まれたKR15DDT型直列3気筒1.5リットルターボで、最高出力106kW(144ps)。

走りの力感は十分。日産の説明によれば前後の電気モーターが同時に出せるパワーのピーク値はFWD(前輪駆動)と同じ150kWながら、ピークに至るまでの過渡特性が違い、動力性能は重量差を押してe-4ORCEのほうがずっと高いということだった。筆者はエクストレイルのFWDに乗ったことがないので違いについては何とも言えないが、少なくともe-4ORCEのパワー感はC-SUVカテゴリーの中でも特筆すべきものがあると思った。

パワー感だけでなく、応答性が良いのも特徴。日産のハイブリッド「e-POWER」はエンジンを発電のみに使うシリーズ式で、それにハイブリッドとしては大容量・大出力の動力用電池を組み合わせるのが特徴。エクストレイルもその文法に沿って作られているようで、BEVのような素早い応答性を見せた。ドライバーにとっては気分が上がる特性だった。

もうひとつの特徴は、電気モーターの回転感が傑出して滑らかだったこと。電気モーターなのだから滑らかなのは当たり前だろうと思われるかもしれないが、電動車のライドフィールはメーカーやモデルによって結構違う。日産は路面のうねりを拾ってバウンシングしたときに瞬間的にどう制御すればサスペンションの動きが収まった時に前後の揺れが少ないかといったフィードフォワード制御のノウハウに関しては世界屈指のものを持つが、エクストレイルの電気モーター制御の滑らかさはその日産が作る『アリア』や第2世代『リーフ』などのBEVよりもいいくらいだった。かつて6気筒エンジンの中でもなかんずく滑らかなフィールを持つユニットが“シルキーシックス”と呼ばれることがあったが、エクストレイルe-4ORCEはさながら「電気モーター界のシルキーシックス」だった。

これで燃費が良ければ動力部分については言うことなしだったのだが、可変圧縮比エンジンなどの先端技術に対して抱く期待値を大幅に下回った。エクストレイルは給油口がキャップレス構造であるため満タン法で実測値を得るのが難しいのだが、参考までにデータを記すと満タンから292.1km地点での給油量19.05リットル、燃費は15.3km/リットル。ロードテスト313.0kmの燃費計値は16.0km/リットルだったので、そう大外しはしていないだろう。市街地だけでなく郊外路も長く走った今回の走行パターンであれば、C-SUVのハイブリッドモデルなら20km/リットルくらい行ってほしかったところだ。

なぜ燃費が伸びなかったのか。世間ではシリーズハイブリッド式のe-POWERが悪いという説が流布しているが、原因は恐らくそれではない。同じe-POWER採用モデルで車重も似ているミニバン『セレナ』はより混雑がひどかったうえチョイ乗り、高速走行ありと条件が悪かったにもかかわらず実測21.6km/リットルをマークしていた。両モデルの最大の違いはエンジンで、セレナが搭載しているのは自然吸気のHR14DDe型1.4リットル。このことから可変圧縮比エンジンが狙い通りの効率を出せていない、ないしは効率の高い領域が狭く、結果として平凡な燃費スコアに終わったのだろう。

ただ、可変圧縮比エンジンにも良い点はある。3気筒エンジンであるにも関わらず低騒音、低振動が徹底しており、普段は存在を感じさせないくらい静かということだ。メカニカル式の可変圧縮比自体はバルブの開閉タイミングで実効圧縮比を変える一般的なミラーサイクルエンジンよりもずっと高度なシステムで、技術的なポテンシャルは高いはず。これに磨きをかけてリベンジを果たしていただきたいと思った次第だった。

◆居住感、ユーティリティ

車内の居住感は基本的に良好。3列目シートを使わないで2列目シートを後方にスライドさせれば後席のレッグスペースは広大で、4人がゆったりと座り、さらに大荷物を積んでの長距離旅行やレジャーにも十分使えそうだった。また後席の座面が前席に対して高いシアターレイアウトとなっており、眺望が良いのも好印象だった。

全長4.7m級の車体に3列シートレイアウトを詰め込んだため、3列目までを使うと車内はタイトとなる。が、2列目を前に寄せて膝下空間を作ってやれば、2列目シートの下につま先がしっかり入るだけのクリアランスはあり、狭いながらもちゃんとした姿勢で着座できる最低限のスペースはあった。短時間なら十分受忍限度内だろう。

フロントシートは日産が「ゼログラビティ(無重力)」と名づけた背もたれ形状を持つもの。ロードテスト車は中級グレードでナッパレザーのような高級な表皮や凝ったテクスチャは持たないものの、機能的にはこれで十分という印象。疲れるほど長距離を乗ったわけではないが、500km、1000kmと旅を続けても疲労が小さくてすみそうな感触はあった。リアシートは走行状態で乗ってみることができなかったが、タッチ自体は悪くない。ただし3列シートを設置した兼ね合いか、シートバックが若干薄い。それがどう出るか試せなかったのは心残りだった。

車内の雰囲気作りは悪くない。十分に質感が高く、十分に使いやすい。造形や装飾は日産の提唱する“モダンインテリア”の系譜に連なる、ミディアムハイクラスの注文住宅を思わせるものだが、SUVという車型に合わせてか、アリアやセレナに比べると伝統的なクルマの内装デザインに寄ったものとなっていた。センターコンソール部は今流行りのアーチ形だが、USBのスロットをアーチの下ではなく見えやすいところに設けるなど、使い勝手は良かった。

その車内へのアクセス性は前後席とも良好。ドアは前後とも90度に近いくらいのスイング角があり、人間の乗り降りはもちろん大きな荷物を車体側面から積む場合もドアトリムに引っかかったりすることは少なくてすみそうだった。

荷室はC-SUVの中で傑出した部分があるわけではないが、普通に使えるというレベル。タイヤハウスの出っ張りを削ってスクエアな部分を拡大したりと、空間設計についてはそれなりに頑張っている。3列目シートを使う場合は手荷物置き場くらいのスペース。3列目を格納した場合の容量は560~575リットルと、Dセグメントのステーションワゴンくらいの容量となる。一般的なレジャー目的であれば十分に使えるレベルだ。

◆まとめ

かつて日本の自動車市場でSUV無差別級1位を10年間張りながら、今では増えた競合の間に埋没してしまっている感のあるエクストレイル。あらためてテストしてみて、燃費に少々難はあったものの、クルマとしての性能、質感については十分以上に良いというのが率直な印象だった。

では、なぜ存在感を失ってしまったのか。グローバルモデルとなったことで第1世代、第2世代のラギットなイメージが薄れてしまったことは理由のひとつだろう。また価格が非常に高く、庶民がおいそれと手を出せなくなったことも大きく影響していると思われる。

先般日産が公開した次期エクストレイルを見るかぎり、第1世代、第2世代のような雰囲気に戻ることはない。グローバルモデルが日本でも人気を博するという状況を作り出さなければ大きな成功を収めることは難しいだろう。

それをやる方法がないわけではない。ひとつは性能で競合を圧倒すること。e-4ORCEはすでに十分な競争力を持つので正常進化でいいとして、問題は燃費のカギを握るパワーソース。ここは日産が昨年公開した第3世代e-POWERと新エンジンの組み合わせに期待したい。人気を得るもうひとつのファクターは価格。クルマの値段が爆上がりしている今日この頃、このクラスのクルマを安く作るのには限界があるだろうが、できるだけリーズナブルな水準で出したい。

が、次期型もモデルの性格や価格帯が変わらないとすれば、今のエクストレイルを買うのは十分にありだ。新型が出るとリセールバリューは落ちるというのが常なので長く乗るのが前提となるが、フィールや仕立ては長年の愛着に応えられるだけのものがある。エクストレイルを狙っているユーザーとしては思案のしどころであろう。

《井元康一郎》

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