カーオーディオでは、「とことん音にこだわる」という楽しみ方が成されることもある。当特集では、その実践方法の具体例を1つ1つ解説している。今回は、“スーパー・マルチウェイ”というやり方について考察していく。
◆「フロント4ウェイ」や「5ウェイ」が組まれたオーディオカーが増えつつある!?
ところで“スーパー・マルチウェイ”とは、今回の記事にて初めて使う言葉だ。で、“スーパー・マルチウエイ”とは何なのかというと…。
これはつまりは、「フロント4ウェイ」以上のスピーカーレイアウトのことを指す。カーオーディオでは「フロント2ウェイ」が一般的だが、そこに「サブウーファー」が追加されたり、さらに高音質な再生が目指される場合には「フロント3ウェイ＋サブウーファー」が組まれることもある。
そして最近はそれ以上に複雑な（高度な）スピーカーレイアウトが成される車両も、マニアが集うサウンドコンテスト会場で見かけるようになってきた。例えば「フロント4ウェイ＋サブウーファー」や「フロント5ウェイ＋サブウーファー」が実行されている車両が増えつつあるのだ。
今回はそれらを「スーパー・マルチウェイ」と呼び、これを実行する意味や利点、そして具体的なやり方について考えていこうと思う。
なお、このようなスピーカーレイアウトが組まれることが増えつつあるのは、「プロセッサーが高性能化しているから」でもあるようだ。かつては「プロセッサー」は、「フロント3ウェイ＋サブウーファー」までしかコントロールできない8chタイプが主流だったが、今や10chや12chをコントロールできるモデルもさまざま出ている。
◆能力の高い機器を手にすると、その能力を使い切りたくなるのが人情…
ちなみにそういったモデルは、フロントスピーカーの「スーパー・マルチウェイ化」だけが想定されているわけではない。リアスピーカーやセンタースピーカーをコントロールすることも見据えている場合も多い。しかしそういった高性能機を手にすると、その能力を高音質なシステム構築のために使い切りたくなるのが人情だ。このことも「スーパー・マルチウェイ」が実践されることが増えてきた要因の1つともなっている。
さて、「スーパー・マルチウェイ」のやり方はさまざまある。まずは、「スーパーツイーター」の追加が比較的にポピュラーだ。なお「スーパーツイーター」とはツイーターが担当する帯域よりもさらに上の帯域の再生を担うスピーカーだ。ただ、担当範囲をどのように設定するかはケースバイケースだ。
とはいえ、再生範囲が広めに取られるよりもまさしく超高音のみの再生を担うことが多めだ。なのでサウンド全体に与える影響も限定的なのではと思う向きもあるかもしれないが、実際は案外効果が大きい。しかも中音や低音にも好影響が出る。ちなみに「サブウーファー」を導入すると中音や高音の響き方も良くなるが、「スーパーツイーター」を使う場合にはその逆の効果ももたらされるというわけだ。
◆ミッドレンジを2つ用いた「フロント4ウェイ」も有効！
また、ミッドレンジ（スコーカー）が2つ組み込まれた「フロント4ウェイ」が実行されることも少なくない。この場合にはその1つが「ミッドレンジ-ハイ」として、もう1つが「ミッドレンジ-ロー」として運用される。
これを行うことで得られる主な利点は2つある。1つ目が「音楽の主要なパートの再現性が上がること」で、もう1つが「ミッドウーファーの担当範囲を少なくできること」だ。
それぞれがどういうことなのかを説明していこう。まず、ミッドレンジはボーカルパートや主旋律楽器の演奏を再生することになるわけだが、それを2つのスピーカーにて鳴らすことで1つのミッドレンジの担当範囲を狭められる。結果、負担を減らせるのでより良い仕事をこなせるようになり、中音再生の質が上がる。また、ミッドウーファーの担当していた中低音もある程度「ミッドレンジ-ロー」にて再生できるので、目の前から聴こえてくる音がワイドレンジになり、情報量が上がりステージングも良化しやすくなる。
そしてミッドウーファーの負担も減らせるので、ミッドウーファーの仕事の質も上がる。こうしてサウンド全体がより高音質になっていく。
ただし、コントロールは難しくなる。次回はそれも含めた不利点についても説明しながら、その他の「スーパー・マルチウェイ」のやり方も紹介していく。お楽しみに。
