【カーオーディオの奥深さについて考える特別企画】第1回「DSPの存在意義とは?」 | Push on! Mycar-life

【カーオーディオの奥深さについて考える特別企画】第1回「DSPの存在意義とは?」

カーオーディオには、ホームオーディオにはない独特の“流儀”がいくつか存在している。同じオーディオ・リスニングであるのに、同じでないことが多々あるのだ。それらを1つ1つ掘り下げることで、カーオーディオならではの“奥深さ”を浮き彫りにしていこうと思う。

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クラリオン『Full Digital Sound』のデジタルチューニングアプリのメインメニュー画面。

カーオーディオには、ホームオーディオにはない独特の“流儀”がいくつか存在している。同じオーディオ・リスニングであるのに、同じでないことが多々あるのだ。それらを1つ1つ掘り下げることで、カーオーディオならではの“奥深さ”を浮き彫りにしていこうと思う。

そんな特別企画の第1回目となる今回は、『DSP』について考察していく。

■クルマの中でのオーディオ・リスニングを、『DSP』が変えた。

『DSP』は、カーオーディオならではのユニットと言っていい。ホームオーディオでこれを用いるケースは多くはないが、現代のカーオーディオでは、ごくごく一般的なユニットとして広く使われている。

さて、まずは『DSP』とは何か、から解説していこう。『DSP』とは“デジタル・シグナル・プロセッサー”のことであり、役割は、「音楽信号を制御すること」にある。

これに備えられている機能は主に3つ。「クロスオーバー」、「イコライザー」、「タイムアライメント」、以上だ。

『DSP』が活躍しだしたのは、1990年代の中盤あたりだろうか。それ以前には、アナログ式のプロセッサー(チャンネルディバイダーや、イコライザー等)が存在していたのだが、ある時期からこれが“デジタル”に変わり、徐々に普及が進んでいった。

なお、“デジタル”となったことによって、これまでには存在していなかった新機能を運用できるようになった。それは「タイムアライメント」だ。この機能の登場が、カーオーディオのサウンドチューニングを、大きく変えていったのだ。

「タイムアライメント」とは、近くにあるスピーカーに対して、音を発するタイミングに“遅延”をかけられる機能である。カーオーディオでは、左右のトゥイーター、左右のミッドウーファーがそれぞれ異なった場所に装着されているのだが、「タイムアライメント」を運用することで、すべてのスピーカーが、運転席のリスナーに対して等距離の場所にあるかのような状態を作り出せる。

この機能が重宝する理由は以下のとおりだ。“ステレオ”とは、音楽を2chにわけて録音し、それを左右のスピーカーで再生することで、音楽を立体的に再現しようとするものだ。しかし、その効果を得るためには、「左右のスピーカーから等距離の場所にリスニングポジションを取る」必要がある。しかしカーオーディオではそれが不可能だ。運転席にしても助手席にしても、左右のどちらかに偏った場所で音楽を聴くことになる。このいかんともしがたい状況を、「タイムアライメント」によって克服可能となったのだ。

■『DSP』は、料理で言えば“調味料”。美味しい料理を作るためには、それ以前に大事なことがある。

このような画期的な発明品ともいえる『DSP』なのだが、その存在意義をさらに深掘りすべく、第一線で活躍する実力インストーラーに話を聞いてきた。向かった先は、茨城県の有名店、『クァンタム』。同店の代表を務める土屋さんに、『DSP』の役割について、改めてじっくりと教えていただいた。

土屋「カーオーディオにおいて『DSP』が必要不可欠な存在であることは、紛れもない事実です。これを使いこなせるか否かが、最終的な音の仕上がりに大きな影響を与える、と僕は考えています。

ただ、これがあればなんとでもなる、というものではありません。これを使いこなす以前にやるべきことが多々あり、それが行われていて初めて、『DSP』が力を発揮できるんです。

これを使いこなす以前にすべきこと、とは、正確で確実な取り付けです。

音の質やキャラクターは主に、スピーカーやパワーアンプの性能によって決定されます。ただしカーオーディオでは、同じ製品を使っているのに、音の完成度に差が出ることがあり得ます。取り付け方の巧拙によって、ユニットの性能を十二分に引き出せるか否かが変わってくるんです。スピーカーにおいてはその傾向が顕著です。取り付け方が不完全だったら、例え100万円のスピーカーユニットであったとしても、しっかりと取り付けられた10万円のスピーカーよりも出音が悪い、ということも起こり得るんです。

料理に例えると、スピーカーやパワーアンプが素材であり、『DSP』は調味料です。美味しい料理を作るためには、まずは素材ありき。次にはそれをどう調理するかが問題となります。切り方、煮方、茹で方、焼き方、それぞれで料理人は腕をふるいます。そして最後に調味料で味が整えられ、完成度が高められるんです。

くれぐれも、『DSP』さえあればどうにでもなる、とは考えないでいただきたいですね。そうだとしたら、カーオーディオがつまらないものになってしまいます。最初に製品選びがあり、次にインストールにおいての創意工夫があり、最後に、チューニングがある。それらすべてを楽しんでいただきたいと思うんです」

■『DSP』は、スピーカーの性能を100%引き出すためのものだが…。

土屋さんの話はすんなりと腑に落ちた。『DSP』は、車室内環境の音響的な不利を是正する役割は発揮できても、音の素性を変えることはできない。スピーカーやパワーアンプの性能を100%引き出すためのもであるのだが、もともとの性能をそれ以上にまで引き上げることはできないのである。

『DSP』がなぜに必要で、そしてどのような役割を負っているのかをご理解いただけただろうか。カーオーディオでは『DSP』が大いに役に立つ。しかし、これがあればすべての問題が解決するというものではない、ということも覚えておいていただきたい。

次回もまた別のテーマで、カーオーディオの奥深さを浮き彫りにしていく予定だ。お楽しみに。

《太田祥三》

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