ニーズの高まりが顕著なウルトラスモールパワーアンプの中にあって、ひと際輝きを放っていた「JLオーディオ」の『HXシリーズ』がこの度、『MXシリーズ』となって新登場を果たした。その実力を探る試聴取材リポートの後編を、じっくりとお伝えしていく。
リファレンススピーカーには、同じくアメリカンブランドの「CDTオーディオ」を使用。
先週はまず、当シリーズの性能的注目ポイントと、新シリーズとなっての進化点を解説した。今回はいよいよ、インプレッション・リポートをお届けしていく
試聴は、「JLオーディオ」の正規輸入代理店であるイース・コーポレーションの試聴室にて、PCをソースユニットとして活用し、その信号をUSB DACを介してパワーアンプに送り込むというシンプルなシステムで実施した。DSPは用いず、クロスオーバーはスピーカーに付属のパッシブクロスオーバーネットワークで行った。
リファレンススピーカーとして使用したのは、アメリカンブランドである「CDTオーディオ」のトップエンドシリーズ『ESシリーズ』の新製品だ。正式発表前のモデルであるのだが、素性の優良なスピーカーであり、かつミドルグレードに位置する製品であるので、『MXシリーズ』のポテンシャルを探るのに絶好のモデルと判断しての起用である。なお、当スピーカーについてのリポートも近々にお伝えする予定だ。ご期待いただきたい。
ケーブル類は、「モンスターカーオーディオ」で統一した。パワーケーブルが『MCA PF4R/B』(税抜価格:3000円/1m)、ラインケーブルが『MCA 450i-3M』(税抜価格:1万5000円/3m)、スピーカーケーブルが『MCA 350S14』(税抜価格:1000円/1m)という顔ぶれだ。
同価格帯のAB級アンプと“音”だけで勝負可能。
最初に、従来機からのモデルチェンジ版である4chモデル『MX280/4』(税抜価格:6万4000円)から聴いた(試聴ではフロントchのみを使用)。
音を出す以前に実機を目にしてまず、その小ささに唸らされた。50W×4(4Ω)という定格出力が確保されていながら、筐体サイズは220mm×78.5mm×45mmしかないのである。ここまで小さければ、グローブボックス内へのインストールも可能であるし、バイクへの取り付けについてもある程度の自由度を持って行えるだろう。この大きさを実現させた「JLオーディオ」独自の高効率クラスDテクノロジー “NexD”の凄さが、ルックスから十分に伝わってくる。
音を出してさらに、技術力の高さを実感した。“小さいながらも”という枕詞を付けたくなる気持ちは湧いてこない。同価格帯のAB級アンプと同じ土俵で勝負できるクオリティが担保されている。バランスは至ってナチュラルであり、誇張されたような色づけもなく音色は至極正確。不満に感じられる部分は見あたらない。
高域も繊細に表現されていた。音量の小さな楽器の音も、埋もれることなくしっかりと聴き取れる。低域も良好だ。ほどよくタイトでエネルギー感にも不足はない。ビートが強烈な楽曲でも、ベースラインを心地良く再現できていた。
「使えるアンプ」であると、素直に思えた。コストパフォーマンスの高さは際立っている。
音の良いウルトラスモールパワーアンプをお探しならば、ニューモデルに要注目!
続いては、今シリーズよりラインナップに加わった、『MX500/4』(税抜価格:9万5000円)に繋ぎ換えていただき、先ほどと同じトラックを再生してみると…。
印象の変わり幅は、想像以上だった。真っ先に感じられたのは、低音の躍動感。芯があり、ハリも出ていて、さらには密度も濃く弾力感も十二分。重心が低くなり、安定感が増している。
低域が豊かに響くようになったことが、中高域の質にも好影響を与えている。中域は伸びやかさが増して、ボーカルもぐっと前に出てきた。楽器の音の粒立ちも良化している。輪郭がさらにシャープになったのだ。高域にも充実感がみなぎっている。きめ細やかさも上がり、余韻もますます美しい。
当機はサイズが237mm×115mm×45mmであり、小ささに関しては極限的なレベルではないのだが、音的な魅力は相当に大きい。音の良いウルトラスモールパワーアンプをお探しならば、当機が有力な候補になるのは間違いない。
なお、『MXシリーズ』は使い勝手の良さも特長としている。裏側のパネルを開ければ、ゲイン調整、クロスオーバー調整がスムーズに行える。ウルトラスモールパワーアンプでは、その小ささゆえに、操作のツマミ等が狭いスペースに集約されてしまうこともあるが、当機では操作においてストレスを感じることもないだろう。ユーザーフレンドリーに仕上げられている。
小ささにこだわるか、音を優先させるか、選択の幅が広がり、ますます存在感が高められた、『JLオーディオ・MXシリーズ』。ウルトラスモールパワーアンプ市場の台風の目となりそうな予感は、大だ。