ますます話題沸騰中のクラリオン『Full Digital Sound』。その利点と可能性を徹底検証! Part.1 “高音質”&“省電力” | Push on! Mycar-life

ますます話題沸騰中のクラリオン『Full Digital Sound』。その利点と可能性を徹底検証! Part.1 “高音質”&“省電力”

昨年9月の『フランクフルトモーターショー』で初めて発表され、日本においては、2016年1月の『東京オートサロン2016』、2月の『大阪オートメッセ2016』で順次公開。その度に大きな話題を呼んできた、クラリオンの『Full Digital Sound』。

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クラリオン・Full Digital Sound「Z3」 フルデジタルサウンドプロセッサー (プロセッサー/ツィーター/コマンダー)
  • クラリオン・Full Digital Sound「Z3」 フルデジタルサウンドプロセッサー (プロセッサー/ツィーター/コマンダー)
  • クラリオン・Full Digital Sound
  • クラリオン・岩崎 豊さん
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  • クラリオン・武藤 慧さん
  • クラリオン・中島文彬さん

昨年9月の『フランクフルトモーターショー』で初めて発表され、日本においては、2016年1月の『東京オートサロン2016』、2月の『大阪オートメッセ2016』で順次公開。その度に大きな話題を呼んできた、クラリオンの『Full Digital Sound』。

発売予定時期は、4月下旬とされている。徐々にその日が迫る中、当サイトでは2月の中旬に開発者へのインタビュー取材を実行し、このシステムの成り立ちから開発の背景までを詳細にお伝えした。今月はさらに、この『Full Digital Sound』の利点と可能性を深掘りしていきたいと思う。

記事は4回にわけてお贈りする。第1回目となる当回は、『Full Digital Sound』の最大の利点である、“高音質”と“省電力”について、その理由と、もたらされる意義について徹底検証していく。

今回も、『Full Digital Sound』の開発陣に直接お話をお訊きした。対応してくださったのは、クラリオン 技術開発本部 コア技術開発部 音響システムGに所属する、岩崎 豊さん、石川貴夫さん、坂根圭太さん、武藤 慧さん、中島文彬さんの計5名。同社の音響室にて取材は進められた。

■“フルデジタル”を完成できたことにより、さまざまなメリットを享受可能に…

初めに、『Full Digital Sound』とはどのようなものなのか、簡単におさらいしておきたい。通常のカーオーディオシステムとの決定的な違いは、音楽信号が音に変わる瞬間の直前までデジタルのまま、という点だ。そして、この仕組みを実用化できたキーは、スピーカーに搭載されている“LSI”(大規模集積回路)と、“マルチボイスコイル”。

前者では主に、デジタル信号の極限的な細分化と、分配が行われる。そして後者は、瞬間ごとの音量の大小に応じて駆動するボイスコイルの数を変えながら、効率的に振動板を動かす。以上がざっくりとした仕組みだ。

このようにして成り立つ“フルデジタルシステム”からユーザーは、主に“高音質”と“省電力”という2つのメリットを得ることとなる。

さてここからが本題だ。まずは、“高音質”という恩恵が得られるその理由を解説していきたい。それについて最初に、中島さんがこう説明してくれた。

中島「第一の理由は、デジタル信号のままでスピーカーの振動板を駆動させる技術を、車載スピーカーとして理想的なレベルで完成できているからです。『Full Digital Sound』は、日本の『Trigence Semiconductor』社が開発した技術をベースに作られているのですが、それを車載スピーカーに置き換えることは簡単ではありませんでした。しかし、今回の『Full Digital Sound』では、既存のハイエンドカーオーディオ製品と肩を並べるレベルで、むしろそれ以上のポテンシャルを有する形で製品化できていると自負しています」

坂根「弊社では初代のフルデジタルサウンドシステムを2012年から発売していましたが、今回のシステムでは、そこからの大きな進化を達成できました。最大の進化ポイントは、デジタル信号の細分化の度合いです。以前は11MHzだったサンプリングレシオを、今回のシステムでは24.5MHzにまで引き上げました。より原音に近い滑らかな波形が描けるようにできているんですよ」

石川「システム自体を理想的な形で完成できれば、後はフルデジタルであることのメリットばかりが活きてきます。例えば、伝送する間にノイズが乗る心配がほぼないこと、高速応答安定化電源の採用と1点アース化によるグランドループの排除により、従来のカーオーディオが抱える大きな課題であったオルタネータノイズの大幅な削減が可能なこと。アナログに変換するパーツ(DAC)も必要としませんから、変換時に起こる音質劣化も存在しません」

岩崎「他にもあります。ボイスコイルをマルチ化していますので、1つ1つのボイスコイルに入力される電力が小さくてすんでいます。通常のシステムでは大きな電力が必要なので、都度、最大値に達するまでにそれなりの時間を要します。しかし使用する電力が少ないという構造においては、最大に達するまでの時間が短いのです。結果、応答性の速さというメリットも得られているんです」

そもそもデジタル信号のままでスピーカーを駆動させることは難しいのだが、そのハードルを高いレベルでクリアできたことで、後はメリットが多々…。こうして『Full Digital Sound』は“高音質”を実現できているのだ。

■“未来に近づく”ワクワク感も味わえる、先進のカーオーディオシステム

さて次には、『Full Digital Sound』が“省電力”である理由と、その意義に迫っていこうと思う。

最初に“省電力”である理由からお聞きした。

武藤「それも、“LSI”と“マルチボイスコイル”によってスピーカーを駆動するという仕組みによってもたらされます。これにより、外部パワーアンプを用いずとも大きな音を出すことが可能となりました。『Full Digital Sound』では、出力の大きさ的にミドルグレードのパワーアンプを使っているくらいのパワー感が得られているにも関わらず、消費電力を、カーオーディオメインユニットの内蔵アンプの約1/5程度までに削減できているんですよ。外部パワーアンプを使っているシステムとの消費電力差は、それ以上です」

坂根「通常のシステムでは、パワーを上げることで大きな音量を得るわけですが、“マルチボイスコイル”では、6つの駆動力を合成することで大音量を得ます。音楽信号が小さいときは1つとか2つのボイスコイルで音を出し、音量が大きくなる瞬間には、6つのボイスコイルすべてに信号が送られるんですね。結果、トータル駆動力が上がり大きな音が生み出されるのです」

では、“省電力”であることには、どのような意義があるのだろうか。

中島「外部パワーアンプを使う場合には、なんらかの電源強化が必要となりますが、『Full Digital Sound』ではその必要はありません。通常のカーオーディオメインユニットよりも消費電力が少ないのですから」

岩崎「電気自動車では、電気使用量を1%削減できるだけでも走行距離が伸張すると言われています。エコカーでは特に、“省電力”であることがメリットとしてダイレクトに効いてきます」

石川「また『Full Digital Sound』は、“省電力”のみならず、“低燃費”にも効くんです。“LSI”は熱が出ないので、“ヒートシンク”を必要としません。システムとして相当な軽量化が実現できています。軽いことはすなわち燃費にも有益です。『Full Digital Sound』は、バッテリーにもエンジンにも優しいシステム、と言っていいのではないでしょうか」

なるほどだ。音の良さとエコを同時に実現している『Full Digital Sound』。“カーオーディオの未来形”とも言うべき先進性を有していることは確かだ。これを手にすることで、“未来に近づいた”ようなワクワク感も味わえることだろう。

《太田祥三》

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