サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #56: 第9章 カーオーディオマニアに贈る オーディオ & ビジュアル講座 ホームシアターの“今” Part.3 | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #56: 第9章 カーオーディオマニアに贈る オーディオ & ビジュアル講座 ホームシアターの“今” Part.3

#56:
第9章 カーオーディオマニアに贈る オーディオ & ビジュアル講座 ホームシアターの“今” Part.3

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サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#56:
第9章 カーオーディオマニアに贈る オーディオ & ビジュアル講座 ホームシアターの“今” Part.3


松居さんに、ホームシアターについて綴っていただいている。ホームシアターの世界で脚光を浴びている“4K”。それにより、ホームシアターで今何が起きているのかを解説していただいている。今回はより踏み込み、“4K”以降のホームシアターに対する、松居さんの提言をご紹介する。


前回の続きである。前回、“4K”とは、映画のデジタル化のための技術であると綴らせていただいた。そしてそれが家庭にも入ってきて、それにより、映画の文化とテレビの文化が融合し、家庭で映画をハイクオリティで鑑賞できるように状況が整ってきている、と説明させていただいた。

とは言っても、テレビ(ディスプレイ)やプロジェクターが、せっかくの“4K”のアドバンテージを活かし切るために、もっとハイスペック(ハイグレード)になっていってもいいのではないか、というところまで書いて、前回の話を終わらせた。

今回は、そこのところをさらに詳しく綴らせていただこうと思う。

ところで、エジソンが蓄音機を開発した時、遺言を残すために使われるだろうと言ったという話はご存じだろうか。しかし、遺言は今でも文字で残す人のほうが圧倒的に多い。蓄音機は、音楽を記録するための技術として発達し、名演奏を後世の人々に残し、おかげで僕らは、身近に名演奏と触れ合えるし、装置の進化に合わせ、発見や感動も大きくなってきた。

写真は、エジソンによる蓄音機の実用化より50年ほど前に発明されていて、発明されてからもう200年近くが経過しようとしている。現在では、銀塩の世界から半導体に記録される時代になった。

映画も約100年間、フィルムで製作されてきた。しかしいよいよ、あと数年でそれは終わるのではないか、と言われている。

それはまさに、“4K”が登場したことによって引き起こされたと言っていい。記録レベルがフィルムと同等になった“4K”映像は、編集やメディアへのダビング時の劣化を起こさず、品質の高い映像をすべての映画館へ配信することを可能にしたのである。

そしてそれを家庭でも実現出来るかもしれないのである。

ところで、“4K”映像システムがターゲットにしたクオリティがフィルムであることの意味は、大きく、深い。テレビや映画、スチル写真など、今まで別々だった世界を1つにするかも知れないからだ。

これが実現するかどうかは、再生装置(ディスプレイやプロジェクター)がさらに進歩するかどうかにかかっていると思っている。再生装置の性能をさらに向上させる必要があるのだ。

少し心配しているのは、行き過ぎた価格競争の結果、赤字に苦しむ日本の家電メーカーが、高画質な製品を今後も開発し続けてくれるかどうか…、というところだ。大きさと価格のみを優先した結果、ある時期以降テレビの性能が落ちたような気がしてならない。フォーマットはグレードアップしたにも関わらず、肝心の再生器機は、特に色再現の部分においてブラウン管時代に及んでいないのである。

画素数の多さにとらわれるのではなく、色相、明度、彩度を体系化したマンセルカラーシステムをレンジの範囲に入れた、“4K”映像の「色」部分に注目してほしいと思っている。

現在の一般的なテレビは、明るい部屋の中で観ることを前提としている。明るいところでハッキリと映ることに文句を言うつもりはないが、そういったテレビを真っ暗な場所へ移動すると、真っ黒にならないといけない部分も光っていて沈みきれず、色再現においては色相、明度、彩度のレンジが足りなくなってしまう。食べ物を映しても、美味しそうに見えない。

蛍光灯がまぶしい場所できれいに見える映像は、電車が行き交う駅のホームにあるスピーカーの音と同じなのだ。ダイナミックレンジを圧縮し、エッジを立てた音は、Hi-Fiとは別ものだ。

駅のPAスピーカーと、音楽を聴くためのリスニングスピーカーが違うように、“4K”をきっかけに、音楽鑑賞と同じく、感動と臨場感を楽しむためのディプレイのジャンルがあることが、広く認知されることを願っている。

《松居邦彦》

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