サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #30: 第1章 オーディオが止められないワケ その4 クルマは、メインのリスニングルーム | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #30: 第1章 オーディオが止められないワケ その4 クルマは、メインのリスニングルーム

#30:
第1章 オーディオが止められないワケその4 クルマは、メインのリスニングルーム

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サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#30:
第1章 オーディオが止められないワケその4 クルマは、メインのリスニングルーム


オーディオの面白さについて、アンティフォンの松居さんに語っていただいているシリーズの4回目。今回はいよいよ、カーオーディオがやめられない理由について話していただいた。必読の、シリーズ最終回。じっくりと味わってほしい。


オーディオがやめられない理由について語らせていただいてきた。今回は、なぜカーオーデイオに至ったのか、これについてお話しさせていただこうと思う。

前回は、ぼくがコンサートSRシステムの仕事に携わっていた時代のことについて触れた。その仕事の影響もあり、「オーディオシステムから聴こえてくる音に対して、『Photo』(リアルをイメージする写真のような存在)ではなく、『Picture』(写実的な絵のような存在)を求めていた」と書いた。そして、それが後に『Picture』から『Photo』へと変わっていった、とも書いた。

今回は、そのあたりについて詳しく説明させていただきたいと思う。

きっかけは、アメリカのハイエンドオーディオとの出会いだ。値段が高いというのではなく、再生装置として音楽表現のレベルがハイエンドなオーディオ装置、と出会ったのである。

それらは今でこそ日本もおなじみのプロダクトになっているのだが、当時の僕にとっては初めて見る製品ばかり。それらの音を聴くことで、価値観が大きく変わった。虫眼鏡で見ているようなの世界感を好んでいたのに対し、それらの装置から聴こえてくる音は、双眼鏡で見ているかのような世界だったのだ。スピーカーの存在を忘れ、目の前で実物の演奏が繰り広げられているような臨場感にはビックリした。サウンドステージ、トランスペアレンシー、フォログラフィックイメージ、という評価基準を意識するようにもなった。

今まで大切にしていた価値観というか目線が変わったのだ。再生するレンジの広いことはもちろん、加えて時間軸の再現性が格段に違っていて、立体的な空間の表現の領域に到達していたのだ。

今でも、アートなオーディオにも十分魅力を感じるが、その後の僕は、「味気ない」再生音を好むようになった。そのような音のほうが、アーティストとの距離感が縮まる(親近感が高まる)と思っている。

やはりオーディオの究極の目標は「オーディオ機器の存在が消えてなくなること」なのだ。オーディオ機器を紹介することを生業としている立場としては、このことには一抹の儚さを感じるが…(笑)。

さて、そのように価値基準が変わったあとの1993年、カーオーディオの世界にエポックメイキングな製品がデビューを果たす。それは、パイオニアのODR「カロツッエリアX」。

僕にとってクルマは、ただ単にA地点からB地点に移動出来ればいいというようなものではなく、それなりにこだわりを持っていた。それだけに、1人でいることが多い移動時間を有意義に過ごせるとしたら、それはとても価値ある時間になる。大きな期待を持って、僕はすぐ、自分のクルマに「カロッツェリアX」を導入した。

「カロッツェリアX」は期待どおりだった。それまでもナカミチ & a/d/sのシステムを使ってはいたのだが、家庭用のオーディオシステムと比較するレベルではないと感じていた。時間をコントロール出来るようになって(タイムアライメントの調整機能が搭載されて)初めて、家庭用と同じ空間の表現が可能になったのである。

「カロツッエリアX」の登場が、僕の中ではハイエンドカーオーディオのスタート地点だった。

さらに機器は進化を続け、カーオーディオが家庭用のオーディオとそう変わらないレベルになった今、僕にとってカーオーディオはメインのリスニング空間になった。アウトドアである開放感、ニアフィールドリスニングなので細かなニュアンスを感じ取りやすい、まとまった時間が与えられる、これらが、クルマの中で音楽を聴くことのメリットだ。アルバムが終わる前に家に近づいたりしたときは、通り過ぎて全部聴き終わるまで寄り道をしたりもする。特に夜は最高で、音楽が体に染み込んでくる。

音楽の進化とオーディオ機器の進化を楽しみ、価値観を表現するものとして機械を所有しセッティングすることを楽しみ、そして今ではそれらをクルマの中で楽しむことができている。僕は日々、そのことを幸せだと感じている。

この幸せをより多くの皆様と分かち合いたい。そう思わずにはいられない。

《松居邦彦》

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