サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #29: 第1章 オーディオが止められないワケ その3 自分の『価値観』を投影させていくところに、面白みがある | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #29: 第1章 オーディオが止められないワケ その3 自分の『価値観』を投影させていくところに、面白みがある

#29:
第1章 オーディオが止められないワケその3 自分の『価値観』を投影させていくところに、面白みがある

カーオーディオ カーオーディオ特集記事
サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#29:
第1章 オーディオが止められないワケその3 自分の『価値観』を投影させていくところに、面白みがある


アンティフォンの松居さんに、オーディオの面白さについて語っていただいているシリーズもいよいよ3回目。今回は松居さんの、コンサートなどの音響オペレートをしていた時代のエピソードを話していただいた。じっくりとお読みいただきたい。


僕にとってのオーディオについて、前回の続きをお話しさせていただく。

70~80年代、僕がオーディオに求めていたものは『プレゼンス』だった。大きな音で聴くのもそのためで、時代もそうだったように思う。

マルチトラックレコーダーのチャンネル数が増えるにつれ、沢山のマイクを使用した大がかりな録音がされるようになり、個々の楽器をまるで虫眼鏡で見ているかのように録り、そしてそれを重ね合わせてサウンドができあがる。その音はテクニカルで、当時はそれが格好良かったのである。

それを格好良いと感じていたのには、「SRシステムを操作する」という仕事に関わっていたことも影響しているように思う。


SRシステム

SRシステム


ところで、オーディオを大きくカテゴリーで分けると、以下の3つに分類できる。録音機器(音楽製作に関わるマイクロフォンやレコーダーなど)、再生装置(ホームオーディオ & カーオーディオ)、そして拡声装置(コンサート用SRシステム)までを指している。そしてそれぞれは、それずれの分野で育まれた文化(独自の価値観)を持っている。

僕は音楽製作には関わった経験はないが、SRシステムには、固定、仮設を問わず、音響オペレートに関わった経験がある。

SR(サウンド・リインフォースメントsound reinforcement)システムとは、楽器の生音や声を大きくする拡声器PA(public address)に止まらず、音楽を伝える規模の大きなオーディオシステムのことで、Hi-Fiという概念ではなく、音楽的表現を補強・拡大するのが目的であり、とてもクリエイティブで、携わるとこれはこれでけっこう面白いものであった。

ダイナミック系エフェクト(音形を変化させる)やリバーブ系(エコーやディレイを付加する)等のエフェクターを使ったり、イコライザーも音色のコントラストを明確にするために使用するというふうに、アーテイストの表現を膨らませ、オーディエンスの心を惹きつけようとする作業だ。

リスニングオーディオが写真(Photo)の世界であるとすれば、SRの世界は絵(Picture)の世界かもしれない。

当時の僕は、自身のオーディオシステムに『Picture』を求めていたのかもしれない。自分なりの解釈で存在感が表現されるよう装置をチューニングしていた。当時のjazz向きといわれるシステムの趣向は、このSRの世界と価値観が重なるようにも思える。

jazz喫茶で聴く音にも『Picture』を感じていた。当時jazz喫茶は今よりたくさんあって、僕はいくつかのお店に頻繁に通っていた。今のJAZZクラブは生演奏を聴いたりplayするために行く場所だが、そこはレコードを聴きに行く場所で、それぞれのお店のオーナーと音楽の話をしながら、そこでしか聴けないオーディオを聴いていた。

カーオーディオのイベントなどで、沢山のクルマを聴かせていただく機会があるが、時々当時を彷彿させるようなクルマ(個性的なオーディオ)と出会ったりすると、あの頃のことを思い出す。

つまりは、演奏も、録音も、再生も、そして音響も、それぞれが「音、人を映す」という文化だと思うのだ。僕自身、趣味を通して、仕事を通してそのことを実感してきた。自分の価値観を投影させていくところに面白みを感じてきたのだ。そしてそれぞれが、携わる人、所有する人の人間性や人生を映し出す。だからオーディオがやめられない。

その後、僕のなかではこの(Picture)から(Photo)へと価値観が変化してゆくのであるが…。それについては次回でお話させていただこうと思う。

《松居邦彦》

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