カーオーディオ用語辞典 | Push on! Mycar-life

カーオーディオ用語辞典

AC

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AC

交流のことです。andirect currentの頭文字で、直流はdirect currentといいます。直流は車のバッテリーや乾電池のように電圧の大きさと向きが常に一定です。便利なのですが大きな電圧が取れません。このため一般の商用電源は発電所で大規模に作ります。このときの作り方によって交流が生じるのです。


巨大なタービンにコイルが取り付けてあると想像してください。このコイルを強力な磁石の中で動かすと電気が起きます。反対にコイルに電流を流すとコイルが回転します。つまりモーターです。発電機というのはモーターの逆だと思ってください。発電所のタービンを回すのは水流とか蒸気です。これによってタービンを回転させるとコイルに電流が生じます。このときコイルの向きは磁力線の向きに対して刻々と変化しますから、この変化によって電流の向きも大きさも変わってゆくのです。その変化をグラフにすると、ちょうど数学のサイン波の形になります。家庭の電源もそういう具合になっています。コイルを回転させて電気を作るという仕組みである以上、どうしても交流にならざるを得ないということなのです。

AC-DCコンバーター

直流で動作する機械を交流電源で使うときに、交流を直流に変換する装置のことです。パソコンその他によく付いているACアダプターがそれです。出てくる直流電圧の大きさはアダプターによって異なります。

AUX

アンプの入力端子でAUXというのを見かけることがあると思います。auxiliaryの略で、オグジャリーと呼んだりしています。補助とか追加という意味です。CDやTUNERといった特定の名称を付けていない端子に振られたもので、端子の性質そのものはほかと変わりません。

CD

コンパクト・ディスクすなわちCDです。小さいからコンパクトというのではなく、元はフィリップスの開発したコンパクト・カセットつまりカセットテープから引き継いだ名称です。CDもフィリップスとソニーによる開発です。


盤面の微小な凹凸にレーザー光を当て、その反射が凹凸によって微妙に変化するのを読み取ります。この凹凸をピット(pit)といいます。ビット(bit)と間違えないでください。コックピット(cockpit)のピットと同じです。


信号はデジタル記録で片チャンネル16ビット。サンプリング周波数は44.1kHzと決まっています。2チャンネル以上は入りません。これで20kHzまでの周波数が記録できます。

CD-R/CD-RW

CD-RはCD-Recordableのことで、1回だけ書き込みのできるCDです。CD-RWはCD-Rewritablrの略で、書き換え可能なCDのこと。通常は1000回まで書き換えができますが、それはそのディスクの性能によるもので規格ではありません。CD-Rには音楽用と記録用があり、一般のCDレコーダーでは音楽用のCD-Rしか受け付けません。またプレーヤーの対応力もまちまちで、CD-Rに対してはほぼ全て対応しますが、CR-WRは再生できないことがあるのも確かです。特にカーオーディオのヘッドユニットではCD-Rのかからない場合も少なくありません。またCD-RWは対応不可の場合が多いようです。

DC

直流のことで、direct currentの頭文字です。乾電池やバッテリーなど電池で作られる電気は全て直流です。電圧の大きさと向きは常に一定で、交流のように変化することはありません。

DC-DCコンバーター

直流の電圧を高めるための装置です。直流ではトランスによって電圧を変えることはできませんから、別の装置が必要になるわけです。一般にはトランジスターで高電圧のパルスを作り、それを均して直流にします。バッテリーでできる直流電圧には限りがあるため、高電圧の直流が必要な機器にはこうした装置を使って直流電圧を高める方法が採られるのです。

DIN

ドイツ工業規格Deutsche Indusrie Normenの頭文字を取ったものです。DIN端子、1DINユニットなどと使われますが、いずれもこの規格に基づいています。特に取り決めはありませんが、世界的にも影響力を持つ規格です。

DVDオーディオ

DVDディスクを利用して高音質な音声を記録するシステムです。CDの44.1kHz16ビットに対して、2chなら192kHz24ビット、6chなら96kHz24ビットの録音ができますが、1ビットといえば2進数の1桁ですから1ビット増すごとに情報量は2倍になる計算です。すると24ビットではCDよりも8ビット多い、つまり情報量は2の8乗で256倍。これにサンプリング周波数の4倍を掛けると、実にCDの1000倍という情報量であることがわかります。また音声のほか静止画の記録も可能です。現在ではほとんどマルチチャンネル・オーディオとして使用されています。2チャンネルのDVDというのはほとんど見かけません。

EIAJ

メーカーの団体である日本電子機械工業会(Electric Industries Association of Japan)のことです。またそれによる規格も指します。

FM

周波数変調(Frequency Modulation)の略。つまりFM放送の電波です。


メガHz帯の高周波電波に対して、音声信号である20kHzまでの信号を付け加えます。すると元の電波の周波数が微妙に変化することになります。変化とはいっても元の周波数に対して音声信号の周波数は数千分の1という程度ですから、大した変化ではありません。ですがこうして変化した電波を飛ばし、これを受信して基本的なメガHzの周波数を除去すると、音声信号だけが浮かび上がることになります。これがFMチューナーというものです。ラジオのAMに対して周波数が広く取れ、ステレオにするのも容易なので、音楽用のハイファイ放送に使われているわけです。

Hz

ヘルツと読み、周波数の単位になっています。1秒間に1回振動するのを1Hzと表わします。1回というのは1波長ということで、弦でいえば前後に揺れて元に戻って1回です。また1000Hzを1kHzと表わします。人の耳に聴こえるのは20kHzつまり20000Hzまでとされています。

NFB

ネガティブ・フィードバックのことで、負帰還と呼ぶこともあります。アンプの基本的な技術のひとつです。


アンプの回路には必ず歪みがあります。そこでその出力の一部をマイナスにして、入力に戻してやります。当然次の入力信号からは戻した分だけ差し引かれますが、この差し引いた分には回路の歪みが反転して乗っています。これを回路に再び通すと、回路での歪みがちょうど打ち消されるという仕組みです。つまり歪んだ分を始めから引いておいて、それを入力しようというわけです。


ところでこの歪み打ち消し作用は、出力された次の信号に働くものです。信号の波形が違ってしまっているんじゃないかと心配される向きもあるかもしれませんが、オーディオ信号というのは思っているよりずっと変化がなだらかなのです。同じ波形が何度も繰り返される。ですからトータルでは一定の割合で必ず歪みが減ります。ただ高域信号になると信号の変化が速くなるので、場合によっては打ち消し用に戻ってきた信号と入力信号とがずれることもあります。NFBの問題のひとつとされ、メーカーそれぞれに対策を行っています。

PCM

パルス・コード・モジュレーションの頭文字です。信号をデジタルで記録するときのやり方のひとつと思ってください。平たくいえばCDの信号です。


デジタル記録は音声信号の大きさを単位時間ごとに測り(CDの場合は44,100分の1秒)、その大きさを生の電圧値やなにかではなく符号に置き換えて保存するものです。この場合の符号がつまりコードということですが、CDでは16桁の2進数を採用しました。ディスク自体には2進数の0を凹、1を凸として刻んでいます。


デジタル記録はPCMだけではありません。ドルビー・デジタルやDTSはこれとは違った圧縮方式ですし、MDも浮動小数点という手法を使って別のやり方で記録しています。DVDオーディオはPCMですが、CDと違って24桁の2進数です。またSACDはDSDという全く別の方式ですので互換性はありません。

SACD

スーパーオーディオCD。CDは20kHzまでの帯域を持ち分解能も16ビットあります。当初はこれで十分と思われましたし、素子の性能が追いつかないくらいだったのですが、技術が急速に進歩してくると、物足りなく思う人が出てきました。そこでCDを越えるスーパーオーディオCDというものが企画されたのです。記録方式はPCMではなく、DSDという1ビット系の方式を採用しています。PCMでいえば192kHz24ビットに相当する録音性能を備え、情報量はCDの焼く1000倍にも及びます。同じCD以降のメディアであってもDVDオーディオとは全く別です。またCDとの互換性もありませんが、プレーヤーはどちらにも対応できるものがほとんどです。ただしカーオーディオではまだSACD対応のヘッドユニットはありません。

S/N

信号(signal)と雑音(noise)の比のことです。SN比と読みます。単位はdB。アンプなどの電気回路でどれだけノイズが多いか少ないかということを示すための基礎的なデータといえます。あくまで電気回路の素性を表すものですから、電源のないスピーカーやアナログ・プレーヤーなどパッシブな機器には使用しません。数値が高いほどノイズが少ないということを意味しますが、数値には現れなくとも聴感上での差異を感じることもあります。そういう場合は本来ならS/N感とでもいうべきでしょう。



あ行



アコースティック

音響的という意味です。一般には電気的な音響ではなく、自然の音響のことを指します。エレキギターに対してアコースティック・ギターなどというのがその例です。

アース

大地のことですが、現実に地面そのものを指すだけではありません。アンプなどの電気回路では、各回路やパーツに共通接続された側があります。大雑把にいえばマイナス側ですが、厳密には少し違います。ともかくこの共通接続の側は他の側(プラス側)に対して相対的に0Vと想定します。普通はシャーシに線をつないで、これを大地の代わりに見立てています。こういう共通の0Vがないと、回路は正しく動作しません。実際に大地との差を測ると必ずしも0Vではないのですが、回路内での相対的な0V点ということです。

アッテネーター

減衰器という意味です。機能的にはボリュームのようなものですし実際にボリュームにも使われますが、厳密には入出力間でインピーダンスが変わらないことが必要条件とされています。構造的にはそれ自身が電力を吸収する、つまり抵抗の組み合わせや可変抵抗でできているものを指します。いずれにしても単なるボリュームよりは高級なパーツです。

アナログ

デジタルに対して用いられる言葉ですが、使われる場所で少しずつ意味が異なるようです。時計ですと数字表示ではなく針式のものをアナログと呼びますし、チューナーも数字表示ではなく針を動かしてチューニングするものをアナログといっています。ただ現在ではPCMなどデジタル信号で動くものに対して、生の信号で動くあるいはそれを扱うものをアナログと呼ぶようです。本来は類似的といった意味ですが、連続的という意味はありません。


デジタルとは信号の性質が異なるのはどなたもご存じでしょう。電気信号は全てサイン波の合成ですが、これそのままの形がアナログ、符号化したものがデジタル思って構いません。つまり信号が直接数値を示しているのがアナログで、デジタルでは信号の数値とは別の意味を持っているわけです。


なおカーオーディオでアナログというと、ネットワークを使ったスピーカー・システムのことを指すようですが、必ずしもそれだけがアナログとは限りません。アナログのチャンネル・デバイダーを使ってマルチアンプにすることもできますが、これもアナログであることに変わりはありません。ネットワーク使用の場合は、正しくはパッシブというべきでしょう。

アンプ

日本語では増幅器といいます。アンプリファイヤーの略ですが、英米ではアンプとはいわないようです。単にAmp.というとアンペアのことになってしまいますし。またフランス語ではアンプリと略すようです。


CDにしろなんにしろ、ソースから取り出された信号はごく微弱なもので、それだけでスピーカーを動かすだけの電力がありません。そこでその信号をそのまま拡大してスピーカーが動かせるだけの電力を与える必要がある。それがアンプの基本的な役割です。増幅にはトランジスターや真空管を使います。なお普通アンプといえばパワーアンプのことを指し、プリアンプは単にアンプとは呼ばないのが一般的で誤解を招きません。

アンペア

電流の単位です。Aと記します。1Aは1Ωの抵抗に1Vの電圧をかけたとき流れる電流の量を示します。つまりどれだけの電流が流れるかは回路の抵抗値とそこにかかる電圧によって決まるということです。

イコライザー

等価器というのですが、実際の装置とは少しかけ離れた感じもします。むしろ補正器と思った方が近いかもしれません。レコードのフォノ・イコライザーなど、特定の特性で録音されたものを元に戻すといった機能が典型的ですが、むしろ現在ではグラフィック・イコライザーなどの方が一般的でしょう。通称グライコといいますが、分割された帯域ごとに音を増減することができます。その様子がグラフ状に表わされるのでグラフィックと呼ばれるのです。


このほかパラメトリック・イコライザーといってグライコと同じ働きをしますが、帯域の中心周波数や変化の度合いなどが変更できる種類のものもあります。

位相

電気信号はサイン波の合成でできています。そしてそれがどんなに複雑な波形になっていても、必ず周期というものがあります。その周期がどれくらいの速さで繰り返されるかによって周波数が変わるわけです。この1周期は360度と数えます。


普通は0度のところから信号が始まって360度で終わります。あとはその繰り返しになるわけですが、なんらかの原因で0度からずれたところで始まることもないではありません。例えば30度から始まって360度を通り越し、次の30度で終わるという具合です。同じ信号でも度数がずれていますから、0度から始まったのとは別と考えなければなりません。極端な例を挙げると、180度ずれている場合があります。この場合を特に逆相といいますが、スピーカーに入力するとどこか引っ込んで聴こえる。特にステレオですと左右に広がってしまって焦点を結びません。こういう具合に、同じ波形でも度数がずれれば別の信号になってしまうのです。


この度数のことを位相といいます。ことに位相のずれた信号が合成されると波形そのものも変化してしまいます。スピーカーでも2つのユニットの位相がずれていたり、位相は合っていても耳までの距離が異なれば到達時間がずれます。いずれも合成された波形は微妙に変化して音そのものを変えてしまうのです。このように位相というのは周波数特性とともに、音質にとって重要な影響を持つものだということを認識してください。

インダクタンス

誘導係数といいます。L成分などともいいますが、単位はヘンリーというのを使います。コイルに関係します。


コイルというのは導線を巻いたものですが、直流を流している分には何も影響を与えません。ただコイルの内側には磁力線が走っています。ところが交流を流すと事情が違います。交流では絶えず電流の向きと大きさが変化していますが、この変化に伴って内側の磁界を弱めまいとする方向で電圧が生じるのです。この現象を自己誘導といいます。そしてこのときの電流の変化の速さと電流の大きさの比を誘導係数またはインダクタンスと呼ぶのです。


電流の変化の速さとは周波数のことですから、インダクタンスは周波数に関係します。これによって一定以上の周波数を通さないという現象も生じます。これを使ったのがローパス・フィルターですが、コンデンサーとちょうど逆の現象になります。コンデンサーは一定以下の周波数を通さないからです。


なお2つのコイルを近接させて片方に交流を流すと、他方にも電流が生じます。相互誘導といいますが、これを応用したのがトランスです。

インピーダンス

単純にいえば抵抗のことです。ただ直流と交流では抵抗のふるまいが異なるのです。例えばコイルでは直流は通すが交流は一定以下の周波数しか通しません。逆にコンデンサーでは直流は通りません。このように抵抗の現れ方が違うので、特に交流抵抗のことをインピーダンスと呼ぶのが一般的です。スピーカーの入力インピーダンスというのも交流に関するものです。

ウーファー

スピーカーのドライバー・ユニットのうち、低域用に作られたもののことをウーファーと呼びます。トゥイーターなど高域用ユニットに比べて口径がおおきく、マグネットも大型になるのが普通です。ただし一般的には振動板の強度その他の理由から、口径は38cm(15インチ)前後までのものが広く用いられています。
低域用で口径が大きくなるのは、低音がそれだけ多くのエネルギーを必要とするからです。大量の空気を振動させなければならないため、大口径でマグネットの強力なユニットが必要というわけです。

S/N

信号(signal)と雑音(noise)の比のことです。SN比と読みます。単位はdB。アンプなどの電気回路でどれだけノイズが多いか少ないかということを示すための基礎的なデータといえます。あくまで電気回路の素性を表すものですから、電源のないスピーカーやアナログ・プレーヤーなどパッシブな機器には使用しません。数値が高いほどノイズが少ないということを意味しますが、数値には現れなくとも聴感上での差異を感じることもあります。そういう場合は本来ならS/N感とでもいうべきでしょう。

エッジ

スピーカーの振動板とフレームをつなぐ支えの部分のこと。文字通り縁です。スピーカーをよく見てください。コーンの一番外側の部分が盛り上がっているはずです。逆に窪んでいることもあります。そしてこの部分がコーンと同じ材質ではなく、別の素材を継いでいるのがわかるでしょう。ここがエッジと呼ばれる部分です。


エッジにはいくつかの役割があります。ひとつはコーンを支えて正しくセンターを出すこと。また内部を密閉する働きもあります。埃の問題ではなく、空気が漏れると正しい動作にならないからです。さらにコーンが自由に動けるようにしておくことも必要です。そのために丸みを持たせて動きの幅を作っているわけです。エッジの材質や形状でも音は大きく変わるため、設計の重要なポイントともなっています。

エッジワイズ

コイルの線の巻き方です。主にボイスコイルについていわれます。


普通導線は丸型です。丸い線を巻くと、どんなにぴったり巻いても隙間が空きます。それだけ密度が低くなるわけです。そこで角型の導線を作り、これをぴったり揃えて巻くと隙間がなくなります。この巻き方をエッジワイズ巻きといいます。線の密度が高くなるので巻数が少なくても強い力を出すことができ、スピーカーの駆動力が向上する仕組みです。

エンコード

 ドルビー・デジタルやDTSなど特定の形式で信号を作ることをエンコードといいます。本来コードないしコーディングというのは暗号のことです。暗号化することをエンコード、これを解読することをデコードといいますが、信号の記録にも同じいい方を使うようになりました。ですから元の形に戻す装置はデコーダーといいます。

オクターブ

ひとつ上または下の同じ音、というと感覚的にはわかるでしょうが、つまり低いドと高いドといった関係です。周波数で見ると、これらの音は2倍あるいは半分という関係になっていることがわかっています。楽器の調音の基準になるA(ラ)の音は440Hzですが、1オクターブ上のラは880Hz、下のラは220Hzとなる計算です。オーディオでよく使うのはクロスオーバー・ネットワークで、OOdB/octという表示があります。このoctがオクターブのことで、周波数が半分または倍になるとOOdB減衰するということを表わしています。

オーバーサンプリング

例えばCDだと44.1kHzというように、デジタル録音では信号を毎秒何回取り出すかということが決まっています。44.1kHzということは毎秒44,100回ということです。この周波数のことをサンプリング周波数といいます。


これを再生するとどうなるかというと、まず44.1kHzの階段状の波形が出てきます。階段のひとつひとつが信号のレベル(大きさ)を表わしているわけですが、このままでは音にならないのでローパス・フィルターを通します。すると階段を形成している高域成分が消えて、20kHz以下の音声帯域だけが残るという仕組みです。


ところでここに問題がひとつあります。サンプリング周波数を中心に上下に20kHzの幅でノイズが広がっているということです。このノイズが入ると非常に耳障りな雑音が出るので、完全に除去しなければなりません。しかし44.1kHzから20kHz下というと24.1kHzです。音声帯域との差はわずかに4.1kHz。このわずかな間隔で高域を遮断するには、大変急峻な減衰特性を持つフィルターが必要になります。


もっともそういうフィルターがないわけではありません。実際初期の頃はそれしかないので多くのメーカーで使っていました。しかしこれには別の問題があって、フィルターが急峻だと位相がずれ、ぎすぎすした刺々しい音になりがちなのです。


そこで考えられたのがオーバーサンプリングという手法です。これはデジタル・フィルターを使ってタイミングのずれた信号を作り、元の信号と合わせて見かけ上階段の数が2倍に増えたようにするものです。もう一度同じことをすれば4倍になります。情報量そのものは変わりませんが、サンプリング周波数は2倍4倍とどんどん高いほうへ移っていきます。すると残すべき20kHzとの間隔が広がりますから、フィルターの特性も緩いもので済むことになります。結果的に特殊なフィルターも必要なくなり、音質が保たれるという具合です。


現在ほとんどのCDプレーヤーでオーバーサンプリングの手法は使われています。デジタルに必須の技術といって差し支えありません。

オペアンプ

英語ではOPアンプと書きます。オペレーショナル・アンプリファイアーのことで、トランジスターなどのパーツを組み合わせて作った回路ではなくIC化されたチップになっています。元は計算機用に作られたものなので、オーディオ用としては回路を小型化できるメリットはありますが、音質の点ではそれほど期待されていませんでした。ただ場合によってはアンプの入力段やCDプレーヤーなど、ハイグレードな製品にも入っていることがあります。現代では必ずしも安物専用というわけではなさそうです。

オーム

抵抗の単位。ドイツ人学者ゲオルク・シモン・オームの発見したオームの法則に因むものです。

オームの法則

電気の最も基本的な法則で、抵抗=電圧÷電流。記号ではR=E/Iと書きます。つまり電圧は抵抗に比例し電流に反比例するということを表わしています。


ところでこれの発展として、電力=電圧×電流というのもご存じでしょう。そこで先ほどの式を変形すると電流=電圧÷抵抗。そこでこれを代入すると電力=電圧×(電圧÷抵抗)つまり電力=電圧の2乗÷抵抗となります。電流値がわかっていないときに、電圧と抵抗とから電力を算出するのに便利です。

音場

文字通りに読めば音の鳴っている空間という意味ですが、オーディオではちょっと別の意味にも使います。つまりソースに含まれる演奏会場(ホールやスタジオ)、その演奏が行われている空間のことを指すのです。音場感がいいとか悪いとかというのはこのことで、つまり空間の再現力ということを言っているわけです。ステレオでは音像を定位させることができますが、楽器やボーカルといった個々の音像だけでなくその周囲の空間まで感じさせることも可能です。そのときの空間のことを音場というのだと考えていいでしょう。

音像

ステレオは立体的な音を再生する仕組みですが、いい装置を使うと声や楽器を空間中の一点に定位させることができます。ちょうどそこに像が焦点を結ぶように音が浮かぶので、音像と呼ぶのです。スピーカーによっては音像が巨大になってしまったり、ぼんやりとかすんでしまうこともあり、ステレオ特有の現象といえます。

温度補償

トランジスターなどに使われている半導体は、温度が変わると電流が変わり、回路の動作がずれてしまいます。通常の回路は温度が上がると抵抗も増加しますが、この逆の特性を持つ素子を入れておいて常に抵抗が一定になるようにすれば、回路の動作は同じ状態に保たれることになります。例えばサーミスターといって温度が上がると抵抗が減少する素子がありますが、これを回路に入れて温度による抵抗変化を防ぐのが温度補償です。熱補償ともいいます。



か行



解像度

例えばオーケストラなら各楽器の音がどれだけはっきり聴こえるか、あるいはピアノなら各音がどれだけ分離されて聴こえるかといった分解力のことを解像度と呼びます。測定上のものではなく、あくまでも聴感上での感覚です。逆の状態は団子状と呼んだりしますが、細かな音がはっきりしない混濁状態となります。

キャビネット

スピーカー・ユニットを収納する箱のことです。エンクロージャーといっても同じです。カーオーディオでもエンクロージャー方式のスピーカーがありますが、一般的にはドアの内部空間がエンクロージャーになると考えていいでしょう。


空中で裸のユニットを鳴らしても音になりません。確かに振動板は動いているのですが、背面から回り込む音波と打ち消しあって音として聴こえないのです。キャビネットにはこれを防ぐ役割があります。また振動板に適度な圧力を加えてユニットの性能を引き立てるのも目的のひとつです。

吸音材

音を吸収する素材のことを吸音材といいます。特に意識的に作らなくても、例えば衣服やカーテンなども吸音材として働きます。しかし普通はスピーカー・キャビネットの内部や室内の音響調整などを目的として作られたものをいいます。最も一般的なのはグラスウールですが、発泡スチロールなど発泡素材、各種の綿など様々な材料が試されています。ただいずれにしても全ての音を100%吸収するものではなく、材質によって吸収しやすい周波数があるのは事実です。このため吸収しきれなかった音は反射して戻ってくることになり、それによってその素材固有の音というものが生じるのです。なお吸音材は音を吸収するものなので、防音にはなりません。防音の場合は音を跳ね返してしまわないといけないので、石膏ボードなどがよく使われています。

共振

振動している物体を別の物体に付けると、一緒に振動し始めることがあります。これが共振で、楽器では共鳴というようです。共振は特定の周波数で特に強くなります。物質固有の共振周波数があるためで、もちろん音質を濁らせる元です。それを打ち消すために異種素材を組み合わせたり防振材を貼るなどの手法がよく使われています。

極性

電気にはプラスとマイナスがあることはご存じでしょうが、そのプラス/マイナスのことを極性といいます。また家庭の電源は交流ですからどちらでも同じですが、実際にはどちらか一方の電極がプラスになっています。コンセントの穴をよく見ると長いのと短いのがあるのがわかりますが、この長い方がマイナスです。交流のプラス/マイナスというのは、つないだときに最初にどちらがプラスになっているかということです。ホーム・オーディオでは、実はこの極性も音質に影響をあたえることがわかっています。

グラフィック・イコライザー

信号をいくつかの細かい帯域に分け、その帯域ごとに音量を増減することができるものをグラフィック・イコライザーと呼んでいます。トーン・コントロールをいっぱい付けたようなものと思えばいいでしょう。どれくらいの帯域に分割するかはその機械によって異なりますが、少ないものだと5つないし7つ、多いものだと30以上になるものもあります。そのときの様子をグラフ的に表示するので、この名称があるのかと思われます。カーオーディオでは車室内の音響が平らではありませんから、どうしてもこの機能が必要になってきます。分割帯域は多いほど高性能と思われがちですが、あまり多いと聴感で調整するのは不可能になってしまいます。ですから高級機だからといって必ずしも帯域分割が多いとは限りません。

クロスオーバー・ネットワーク

スピーカーは普通2つないし3つまたはそれ以上のユニットで構成されています。ひとつのユニットで全帯域を十分均一に再生できるものはほとんどないからです。そこでどのユニットにどれだけの帯域を担当させるか決めなければなりません。この担当帯域を分割するのがクロスオーバー・ネットワークです。コイルやコンデンサー、抵抗などを組み合わせたパッシブ回路として構成されるのが普通ですが、このときの分割点となる周波数のことをクロスオーバー周波数といいます。

クロック

CDプレーヤーなどのデジタル機器では、デジタル信号をアナログに変換するなど信号処理の全てがタイミングを同期させて行われます。つまり全ての回路が同じタイミングでそれぞれの動作を行わなければなりません。このタイミングが極端にずれると音にならないのです。タイミングの大本になるのがクロックと呼ばれる発振器で、通常は水晶発振器を使います。発振器の正確な振動を元にクロック信号が作られ、この信号を時計代わりとして全回路が同期を取って動作を行っているわけです。

ゲイン

アンプというのは入力信号を増幅して出力するものですが、このとき入力に対して何倍ぐらいの大きさで出力されるかという数値をゲインとか利得といいます。通常はdB(デシベル)で表示されますが、もちろん数値が大きいほどゲインが高いということになります。

コイル

導線をぐるぐる巻きにしたものをコイルといいます。コイルは直流に対しては何も影響を及ぼしません。しかし交流を流すと面白い現象が現れます。一定の周波数以上の信号を通さなくなるのです。これは自己誘導と呼ばれる現象によるものです。


導線に電流を流すと、その周囲には必ず渦巻き状に磁界が生じます。コイルは導線を巻いてあるわけですから、その内側には1本1本の線に生じた磁界が束になって通っていることになります。この磁界は鉄芯を入れるとよけい強くなります。これは直流のときでも生じているものです。


ここで電圧を徐々に下げてゆくと内側の磁界も弱まりますが、それを打ち消そうとして逆方向に電流が起きるのです。電圧を上げると、今度は逆の方向に電流が起きます。このようにコイルでは、電圧の向きや強さが変化すると、内部の磁界を保とうとして逆方向に電流が生じます。これが自己誘導という現象で、インダクタンスと呼ばれます。


交流では常に電圧の向きと大きさが変化していますから、コイルには常に逆方向の電流が生じていることになります。そして電圧変化の速さが一定以上になると、電流の変化が追いつけず流れなくなってしまいます。これはコイルのサイズや巻線の数にもよりますが、この性質を利用して一定周波数以上の信号を流さないローパス・フィルターとして使われることになります。この性質によってオーディオでは基本的なパーツのひとつとなっているわけです。

高調波

ハーモニックスともいいますが、音楽でいえば倍音に当たります。真空管やトランジスターではある特定の周波数の信号が流れると、その2倍3倍といった整数倍の周波数の信号も発生してしまうことがあります。この整数倍周波数の信号のことを高調波ないしハーモニックスと呼ぶのです。

高調波歪み

アンプの回路に特定の周波数の信号を流したとき、その整数倍の周波数の信号が発生することがありますが、これは元の信号にない成分なので歪みです。そこでこの種の歪みを高調波歪みと呼びます。特に3倍5倍などの奇数倍の高調波は耳につきやすいため、歪みとして性質のいいものではないとされています。

コーン

スピーカーの振動板のことをコーンと呼びます。コーンというのは三角錐のことですが、スピーカーの振動板は大概すり鉢状になっているためこういう呼び方になったようです。ですからドーム型スピーカーの振動板はコーンとはいいません。素材にはパルプやポリプロピレン、金属、セラミックなど様々なものが用いられていますが、基本的には軽量で剛性が高く、共振しないという3つの性質を持つことが理想とされます。

コンデンサー

コンデンサーというのは、2枚の電極の間を絶縁した格好をしています。ここに電圧をかけると、ほんの瞬間的に電流が流れてあとは止まってしまいます。直流ですとこのままです。ところが交流になると電流が流れ始めるという不思議な性質があります。


電圧がかかっているときのコンデンサーの状態というのはどういうものかといいますと、マイナス極には電子が、プラス極には電子を失った原子核がばったりと張り付いています。電流は通じていないけれども電圧はかかっているので、お互いに相手の極に引っ張られているのです。これはいってみれば電気が溜まっているようなものですから、両極を外側からつなぐと瞬間的に電流が流れます。放電といいます。


ところで極性をさっきと逆にして電圧をかけてみると、当然逆方向に電気が溜まります。充電といいます。この電圧の交代をものすごく速い周期で行うとどうなるか。電極に溜まった電子は導線の中を行ったり来たりすることになり、見た目には導線に電流が流れているのと同じになります。この周期が十分短くないと、コンデンサーには電気が溜まってしまいそれ以上は流れないことになります。つまり一定の周波数以上の交流でないと流れない。それは電気を溜める容量の大きさできまります。容量が大きいと溜まる時間がかかりますから、その間は電流が流れます。だから周期が長くても電流が通じることになります。容量はコンデンサーのサイズによりますから、大きいコンデンサーほど低い周波数まで通すというころになるわけです。


このようにコンデンサーには一定以上の高い周波数の交流を流すという性質があります。これを利用したのがハイパス・フィルターで、ちょうどコイルとは逆の働きであることがおわかりでしょう。やはりオーディオ回路の基本的なパーツとなっているのはこのためです。なおコンデンサーという呼び方は日本だけで、英語ではキャパシターと呼びます。

コンプレッション・ドライバー

ホーン・スピーカー用のドライバー・ユニットのことを、特にこう呼びます。ホーンというのはメガホンと同じ原理で、狭い口径に音波を吹き込んで口径の大きな出口から出すことで音圧を高める装置です。ドライバーは吹き込み口に取り付けてありますが、口が小さいので圧力をかけなければなりません。そのため専用のドライバーが必要になるわけです。吹き込み口でかかった圧縮エネルギーが、出口で音となって現れると思っていいでしょう。ですから通常のコーンやドームのユニットをホーンに取り付けたからといって、本物のホーン・スピーカーになるわけではありません。

混変調歪み

アンプなどで周波数の近い2つの信号を同時に流すと、その周波数の和や差に相当する別の周波数の信号が発生します。これを混変調歪みといいます。高調波と並んで代表的な歪みですが、高調波のように倍音関係がありませんからいっそう耳に付きやすいという性質を持っています。また和や差のさらにまた和や差といった二次的な混変調も生じます。アンプの性能の基本となる歪みです。



さ行



サイン波

三角関数でサインというのがありますが、これは直角三角形の斜辺(直角に対向する辺)と底辺との比率を表わしたものです。この比率は斜辺の角度によって変化しますが、このときの角度と比率との関係がサイン曲線です。電気信号は基本的にサイン波しか作ることはできません。後は全て複雑なサイン波の合成です。すなわちオーディオの基本は全てこのサイン波にあるということができるわけです。

サブウーファー(スーパーウーファー)

100Hz程度以下の低域を専門に再生するスピーカーのことです。通常は専用に設計されたアンプを内蔵していますが、カーオーディオではマルチアンプにすることが多いためアンプは付いていません。一般のウーファーでは足りない低域の音圧を強化するためのものです。

磁気回路

強い磁界(磁力の働く空間)の中に置いたコイルに電流を流すと、コイルが動くという原理に基づいて作られています。この磁界を作り出すのが磁気回路です。単純に磁石といわないのは磁石だけでできているわけではないからです。磁石があり、そのS極とN極をつなぐように磁気を通しやすい素材がぐるりと配置されています。この一連の装置のことを磁気回路と呼んでいます。

周波数特性

オーディオ機器の性能は全帯域を通じて均一というわけではありません。これはアンプでもスピーカーでも同じですが、どの帯域がどれくらい強いか弱いかということを示すのが周波数特性です。グラフで見るとわかりやすいのですが、スピーカーの場合は特に凸凹しているのが普通です。また数値として表わすときは、再生できる最高・最低周波数を指すことがあります。限界値ということですが、限界といってもそこですぱっと切れてしまうわけではありません。そこで平均レベルからどれくらい下がったら限界とするという約束を作り、そのときの周波数を示すようにするのが一般的です。例えば20kHzで-3dBという具合です。それ以上の周波数ではもっとレベルが下がるということですから、大体この辺が限界という意味になるわけです。

出力音圧レベル

スピーカーの効率を示す用語です。スピーカーにも効率のいいものと悪いものがあって、同じ大きさの信号を入れても出てくる音の大きさが違います。この大きさの違いを表わすのが出力音圧レベルです。具体的には1Wの信号入れてスピーカーを再生し、1m離れたスピーカーの正面でマイクで音圧の大きさを測るのが普通です。単位はdBを使います。能率という言い方もありますが、同じと思っていいでしょう。

出力段

アンプは信号を歪みのない形で取り込み、これを増幅してスピーカーへ送り出す装置です。このうち特に信号を増幅する部分の回路を出力段あるいは出力ステージといいます。ほかには信号を取り込み入力段、出力段のトランジスターなどを駆動するドライバー段などがあります。出力段ではスピーカーを動かすだけの大きな電流を作らなければならないので、ここには特に大電流の流せるトランジスターや真空管を使います。またひとつだけでなく複数のトランジスターや真空管を並列あるいは直列につないでいっそう大きな電流を作ります。この部分でアンプのパワーが決まるわけです。

真空管

プラスとマイナスの電極を空中に置いてものすごい高電圧をかけると、マイナス極から電子が飛び出します。放電、いわゆるスパークです。空中では空気の粒子にぶつかって電子の流れはできませんが、真空中でこれを行うと、電子がマイナス極からプラス極へ飛びついて電流が流れます。ところでこの両極の間にもう一枚電極を置きます。そしてそこにマイナスの電圧をかけます。電子はプラス極へ引っ張られますが、間のマイナス極が邪魔してそれ以上進めません。そこでこの中間のマイナス電極を金網状にして隙間を作ってやります。するとその網の目をすり抜けた電子がプラス極に飛びついて電流が流れることになります。


ここで金網状電極にかかる電圧を増減するとそれに応じて流れる電子の量が変わりますから、電流も増減します。この電圧変化を音楽信号にするとどうなるか。音楽信号に応じた電流の変化が得られることになるのです。これが三極管と呼ばれる最も基本的な真空管の仕組みです。通常はプラス極とマイナス極には高圧をかけて大電流が得られるようにし、音楽信号(金網状電極で邪魔をする電圧)に比べて大きくしておけば、音楽信号に比例した大電流が得られることになり、つまり見かけ上音楽信号が増幅された結果になるわけです。増幅というのはつまりこういう動作のことなのです。


ところでこの大電流の方はどこから来るのか。もちろん100Vの電源電流から来るのです。つまり増幅というのは、電源電流を音楽信号でコントロールするものだということもできるわけです。

スーパートゥイーター

一般のトゥイーターでは不可能な超高域信号まで再生するために設計されたスピーカーのことをスーパ−トゥイーターと呼びます。トゥイーターの高域を補うとともに、20kHz以上の超高域再現によって音場感を高める役割があります。構造上リボン型が有利ですが、ドーム型でもあるいはホーン型でも設計することはできます。

スコーカー(ミッドレンジ)

3ウェイ・スピーカーの中央帯域を再生するスピーカーのことをいいます。英語のsquawkから来たもので、現在ではミッドレンジを呼ぶことが多くなりました。

スルーレート

アンプに信号を入力したとき、瞬時に反応するのかというとそうでもありません。反応の速さにも差があるのです。アンプに信号を入れたとき、1μ秒の間にどれくらい高く立ち上がるかという数値をスルーレートといいます。これがあまりに遅いと、次の信号が来たときにまだ立ち上がっている間であったりして、信号が変化していまします。また立ち上がりは速くても高さが足りないということもあります。この場合はディテールに力のない音になります。いずれにしてもアンプの反応の速さを表わすものとして、音質に直接結びつく性能といっていいでしょう。

スロープ

傾斜という意味です。何の傾斜かというと、フィルターの遮断特性を表わす傾斜です。フィルターというのは特定周波数より上または下の信号だけを通す回路ですが、ぴったりそこで切れるわけではありません。段々と減衰してゆく形になります。グラフで示すと、その周波数まで平らに来たものが、そこから徐々に下がってゆくという形になります。この下がり方の急峻さ加減を遮断特性といい、傾きのことを傾斜ないしスロープといいます。スロープが急なほど遮断特性が鋭いということになりますが、またその副作用も強くなるという事情もあります。どういったスロープを選ぶかは、設計次第ということでしょう。

整流

オーディオ回路には直流が必要です。ところが電源は交流ですから、そのままでは使えません。そこで交流を直流に直す必要があります。直すといってもそう簡単なものではありませんが、整流管(真空管)やダイオードといった一方向にしか電流を流さない素子を使って波状の電流を作るのが基本です。この作用を整流と呼んでいます。もっともこれだけでは直流になりませんから、このあと大きなコンデンサーに溜めてそこから電流を引き出します。すると貯水池から水を引くように、ある程度はまっすぐな流れができるわけです。これでも完全とはいえませんが、実用になる直流は得られます。いずれにせよいかにきれいな直流を得るかが、オーディオの最も根本的な大問題であるわけです。

ソース

音源といいます。ただ音の出どころのことも音源といいますが、オーディオでソースというときは、音楽を収めたメディア(CDやテープ、レコードなど)とそれを再生する装置(プレーヤー)のことを指すことが多いようです。

ソリッドステート

トランジスターやダイオードなど、半導体を使った素子のことです。球に対して石という言い方をしますが、その石に当たるのがソリッドステートです。半導体という石つまりソリッドな状態で動作する素子なので、こう呼ばれるようになりました。



た行



ダイオード

一方向にしか電流を流さない半導体素子のことです。電気的な性質の異なる半導体を結晶化し、そこに電流を流すと、一方からの電流はよく流れるのに、反対側からの電流はほとんど流れないという現象が生じます。これは一方の半導体は電子過剰の状態であるのに対し(N型)、もうひとつは電子不足の状態(P型)であるためです。こういう半導体を選んで結晶にするわけです。するとP型の方にプラスの電圧をかけるとN型から電子が引っ張られてやってきますが、途中のP型は電子不足ですからここで取り込まれてしまい、電流は流れません。反対にN型をプラスにすると、電子はそちらへ引かれて導線の中を流れP型に達します。つまり電流が流れたということです。この作用と使うと交流を一方通行にすることができます。これを整流と呼んでいるわけです。

ダイナミック型

強い磁界の中にコイルを置き、これに電流を流すとコイルが動きます。反対にコイルを動かすと電流が生じます。発電機です。いずれにしても、磁界とコイル、電流という組み合わせで動作する装置で、これをまとめてダイナミック型と呼びます。スピーカーがそうですし、発電機としてはアナログのカートリッジがこれに当たります。別の原理で動くものとしては、コンデンサー型と呼ばれるものがあります。

ダンパー

スピーカーの振動板を根元で支えているバネのような部品です。強靭な布を波状に折って振動板の根元に取り付けているのが普通です。振動板が左右にずれないように支え、同時に動きを制御するためにバネ状としているわけで、スピーカーの音質にとって重要な役割を持っています。

チャンネルデバイダー

トランジスターなどのアクティブ素子(電源が必要なもの)を使って信号の帯域を分割する装置です。働きとしてはクロスオーバー・ネットワークと同じですが、電気的にこれを行うためスロープや分割周波数などの調節が可能です。アンプを複数使うマルチアンプに欠かせない装置ですが、最近ではデジタル構成の製品も増えてきました。

チューナー

放送の電波を受けてオーディオ信号に戻す装置です。FM、AMなどがあるのはご存じでしょう。カーオーディオの主役でもありましたが、現在はCDに押されて注目度を下げています。

定格出力

アンプのパワーを示す規格のひとつで、一定の歪み率で連続して出力が取り出せる最大値を示します。歪み率には規定がありませんが、0.05%ぐらいが普通とされています。瞬間的にはもっと大きな出力が出せるので、平均的な値ということができます。

デジタルアンプ

音楽信号をデジタルのままの形で増幅するアンプのことをいいます。いろいろな方式がありますが、電源電流を音楽信号でコントロールするアナログ増幅とは違って、0と1のデジタル信号の振幅を大きく取ることで増幅が行われるのが原理的な手法です。増幅されたデジタル信号をフィルターに通せば、それで出力電流が得られるという仕組みで、効率が高く小型大出力のアンプを作りやすいという利点を持っています。

デジタル出力

CDプレーヤーなどのデジタル・ソースで、読み取ったデジタル信号をそのまま出力すること、あるいはそのための端子のことをいいます。通常はCDの信号形式であるPCMという形で出力されていますが、映画などではドルビー・デジタルやDTSといった形での出力もあります。いずれにしろデジタルで伝送するこtによって途中での劣化を防ぎ、アナログに変換するのを最後まで伸ばすことで信号の鮮度を保つことが可能です。

電圧

電流は電子の流れによって生じますが、その電子を動かそうという圧力の強さを電圧といいます。電流は線がつながっていないと流れませんが、電圧はプラスとマイナスの電位差があれば生じます。川を流れる水が電流、滝の高さが電圧だと理解してください。

電源

電気を取り出す元のことですが、カーオーディオではバッテリーがこれに当たり、家庭ではコンセントに来ている商用電源がそうです。これとは別にアンプやCDプレーヤーなどで電源というと、電源回路のことを指します。オーディオ製品には直流が必要ですし、電圧も変えなければなりません。また各回路に電源電流を分けて供給することも要求されます。こうした働きを行うのが電源回路で、トランスで電圧を落とし整流して直流にする、DC-DCコンバーターで直流の電圧を変更するなどの作業が必要です。オーディオの音質を決める最も基本的な部分といえます。

トゥイーター

高域再生専用に設計されたスピーカーのことです。以前はホーン型やコーン型が一般的でしたが、現在ではドーム型やリボン型が主流となっています。

同軸ケーブル

1本の導体を絶縁材でくるみ、その上に編み組み状の導体を被せた構造のケーブルを同軸型と呼びます。外側の編み組みはマイナス側の導体として働きますが、外部から飛んでくる電磁波などのノイズを遮断することができるため、外来ノイズに強いケーブルとして主に高周波用につかわれてきました。映像用のビデオ・ケーブルやデジタル・ケーブルがそれに当たります。

ドライバー・ユニット

スピーカーについている個々のユニットのことです。ドライブ(音を出す)するためのユニットという意味。単にユニットということもあります。

トランジスター

増幅作用を持つ半導体素子のことで、トランスミッターとレジスターの合成語として命名されました。発明は1948年のことです。


半導体には電子不足のP型と呼ばれる半導体と電子過剰のN型半導体があります。例えばP型の間にN型のごく薄い層を作って結晶化すると、両極間に流れる電流がN型層に加えた電流によって増減するという、ちょうど三極管と同じような現象を起こします。PとNが反対でも同じです。この現象を使って増幅作用を引き出したのがトランジスターで、真空管に代わる増幅素子として現代では欠かせない存在となっています。



な行



ネオジウム

ネオジウムは原子番号60の希土類金属で、記号はNd。これと鉄に微量のボロンを加えてできた磁石がネオジウム・マグネットで、住友金属の開発です。現在最強の磁石で、スピーカーを始めいろいろなところに活用されています。



は行



ハイブリッド

合いの子、ハーフという意味だが、オーディオでは特に真空管とトランジスターを組み合わせて使った回路のことを指します。アンプに多く見られますが、CDプレーヤーなどにも存在します。

半導体

一般的な金属は温度が上がると電気抵抗が増し、下がると減少するのが普通です。ところがこの逆に温度が上がると抵抗が減少するゲルマニウムやケイ素などの金属があり、これらを導体と絶縁体の中間という意味で半導体と呼びます。トランジスターなどソリッドステート素子のベースとなる素材として、現代社会に欠かせない存在です。

ヒートシンク

放熱板。アンプの増幅作用を行う出力トランジスターは発熱が大きいため、そのままにしておくと破壊されてしまいます。そこで熱を逃がすためにアルミなど熱伝導性の高い素材で板を作り、これにトランジスターを取り付けて熱を逃がす工夫をしています。これをヒートシンクと呼んでいます。

光伝送

デジタル信号の伝送には同軸ケーブルが使われますが、これとは別に光伝送という手法も存在します。デジタル信号は0と1ですから、これを光のオンとオフに変換します。フォトカプラーというパーツを使えば簡単にできます。これを光ファイバーに流して伝送し、受け側で再びフォトカプラーを使って電気信号の0と1に戻す。こうすることによって電気的な関係が一旦遮断されますから、アース回りなどのノイズが伝わらないという利点があります。CDプレーヤーにはほとんど装備されています。

ビット

0と1でできている2進数の1桁のことをビットといいます。バイナリー・ディジットの略で、1ビットつまり1桁増えるごとに数は2倍になる計算です。なお8桁つまり8ビットをまとめてバイトと呼び、大文字のBで表わします。コンピューターではおなじみです。

ピンクノイズ

ノイズつまり雑音のことですが、測定用に作られた人工的なノイズです。1オクターブまた3分の1オクターブごとに帯域を区切り、それがどこでも同じ強さになるように作ってあります。オクターブというのは周波数が2倍になるわけですから、高域と低域では同じ1オクターブでも実際の周波数の幅は違います。高域ほど周波数の幅が広いわけです。それが同じというわけですから、同じ帯域幅で見ると高域の方がエネルギーは弱くなる計算です。人の聴感により近い測定をするときに使います。

フィードバック

情報を元に帰還させるということで、アンプの出力を入力に戻すことを指します。


アンプの増幅回路には歪みが付きものです。そこで出力の一部をプラス/マイナスを反転して入力に戻します(全部戻すと信号が消えてしまいます)。すると次に入ってきた信号には歪みの加わった出力信号が反転して足されることになる、つまりあらかじめ歪み成分を差し引いた形になるわけです。これを増幅回路に入れると、歪みの分だけ差し引いてありますから、回路での歪みが足されてちょうどいい形に戻ります。これをネガティブ・フィードバックといい、通常のアンプには不可欠のものとされています。


オーディオ信号というのは意外に変化がゆっくりで、同じ形の波形が何度も繰り返されます。そこでこのようなことが可能なのですが、周波数が高くなると変化も速くなります。フィードバックされた信号と入力信号の形が違うことも出てきますので、それが歪みになることもあります。うっかりすると位相が逆転して差し引くよりも強めてしまい、それがピーという発振につながってしまうこともないではありません。このためどれくらいの量をフィードバックさせるかという点が設計のポイントになっています。

フェライト

オーディオで最も一般的に使われている磁石です。酸化第2鉄(黒サビです)とバリウムを主原料とし、粉末を焼き固める焼結法という方法で作られます。磁力はそれほど大きくありませんが、コストが安定しているためスピーカーの磁気回路にごく普通に使われます。

フィルター

濾過器のことですが、オーディオでフィルターといえば一般には特定の周波数帯域を遮断したり通過させたりする回路を指します。一定周波数より上の帯域を遮断し下側だけを通すものをローパス・フィルター、逆に上側だけを通すものをハイパス・フィルターといいます。また2周波数の間だけを通すのはバンドパス・フィルターと呼びます。スピーカーのクロスオーバー・ネットワークに使われるのが代表的な例です。

プリアンプ

スピーカーを駆動する電流を作るパワーアンプと違って、ボリュームを調節したり複数のソースを切り替えたりするアンプのことをプリアンプといいます。コントロール機能が大半なので、コントロール・アンプと呼ぶことも少なくありません。ただ完全にコントロールだけではなくある程度の増幅も行うのでアンプと呼ぶことになっています。なければないで済むものですが、ボリュームだけは最低限システムに必要なので、一般的にはパワーアンプと組み合わせて使用します。なおプリメイン・アンプというのは、このプリアンプとパワーアンプを一体化したものです。

フルレンジ

スピーカーの多くは2ないし3個のユニットを使って帯域を広げますが、ひとつのユニットで全帯域をカバーするタイプをフルレンジ・タイプと呼びます。2ウェイ3ウェイなどに対してシングルユニットのスピーカーのことで、帯域としては劣るもののクロスオーバーがないため位相が乱れず、フォーカスのいい再現を得ることが可能です。

分割振動

スピーカーは振動板がピストン運動をすることによって音を出す装置ですが、信号の周波数が振動板の限界を越えて高くなると、振動板自体がぴりぴりと振動し始めます。俗に「ユニットが鳴く」という現象で、原理からすれば決して望ましいものではありません。しかし純粋なピストン運動だけで高域再生を得ることは難しいため、ある程度は分割振動の現象を使って帯域を広げている製品があるのは事実です。特にメタル系など硬質な振動板を使った場合に、分割振動が起きやすいということがいえます。

変調

信号の形を変化させることを広く変調といいます。AM変調、FM変調など、別の形の信号で原信号の情報を表現したものです。デジタルも一種の変調です。英語ではモジュレーションといいますが、再生では元の信号がなんらかの原因で変容することも変調といいます。例えば振動などによって特定の波形が乗ってしまうなどがそれです。俗にモジられるというのがこれに当たります。

ボイスコイル

スピーカーは振動板を前後にピストン運動させて音を出す仕組みですが、その運動の元になるのは磁界とコイルの関係です。磁界の中でコイルに電流を流すとコイルが動く。このコイルに振動板を取り付けたのがスピーカーですが、このときのコイルのことを特にボイスコイルと呼びます。スピーカーの音の源となるわけですから、ボイスコイルの役割は極めて重要です。

ホワイトノイズ

1kHzの帯域幅ごとに、どの周波数でも同じエネルギーの強さとなるように作られたノイズのことです。光でいえば白色になるわけです。測定用のノイズですが、特に均一な周波数分布が必要な場合に使われます。

ホーン・スピーカー

専用のドライバー・ユニット(コンプレッション・ドライバーという)にホーンを取り付けたスピーカーです。ホーンの増幅作用で音圧を得るため、一般に高い能率を得ることができます。なおコーン型など直接放射型のユニットにホーンを取り付けたものはホーンの負荷を利用しただけのものですから、厳密にはホーン・スピーカーということはできません。またホーン・スピーカーではどれだけ低い音まで再生できるかということは、ホーンの長さだけで決まります。開口部の大きさなどには無関係ですので、見かけのイメージで誤解しないようにしてください。



ま行



マグネット

スピーカーを駆動するための磁石のことをこう呼びます。ネオジウムやアルニコ、フェライトなど、磁力の強いものが使用されます。以前はアルニコが強力磁石の代名詞でしたが、原料になるコバルトの価格が極めて高くなってしまったので、あまり使われなくなりました。代わってはるかに磁力の強いネオジウムが開発され、現在高級モデルには必ずといっていいほどネオジウム・マグネットが搭載されています。

マルチチャンネル

ステレオは2チャンネルです。左と右で違う信号を流すと音が立体的に聴こえるという原理を活用したものです。この左と右のそれぞれをチャンネルといいます。系統といっていいでしょう。このチャンネルをさらに増やして、センターや後方にも設けたのがマルチチャンネルです。例えばコンサート・ホールの後ろからの反射音を収録して前方と同時に流せば、ステレオでは得られなかった周囲全体の響きが再現できます。こいいった3チャンネル以上の再生法をマルチチャンネルと呼びます。映画がそうですし、オーディオでもDVDやSACDなどマルチチャンネルが開発されました。

無指向性スピーカー

普通のスピーカーは前にだけ音が出ます。もちろん横の法に広がってしますが、後ろには出ないようになっています。これに対して複数のユニットを組み合わせたり、反射板を使うなどの方法で360度全方向に音を出すようにしたスピーカーがあります。これを無指向性スピーカーと呼びます。音が一定方向だけを向いていない、つまり指向性がないという意味です。部屋全体に音が拡散されるため、独特の音場感のある再現ができます。



や行



ユニット

箱に入ったスピーカー・システムを構成するひとつひとつのスピーカーのことです。正しくはドライバー・ユニットといいます。



ら行



わ行



《編集部》
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