『マツダスピリットレーシング ロードスター12R』は、エンジンが200psになって、そのエンジンも丁寧な組み立てが行われて、吸気ポートの内側研磨や、カム形状の変更などが行われたそうだ。
それにフライホイールをデュアルマスからシングルマスに変更。高負荷での耐久性を考慮したという。そしてS耐参戦のマシンと同じ、低抵抗のピストンとピストンリングを採用し、ピストンリングは低摩擦係数と高い硬度を併せ持つ、DLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)被膜を採用するなど、まさにレースでの知見がそのままロードカーに活かされた形である。
だが…「だが」である。実際に市中に乗り出してみると、コアモデル(マツダスピリットレーシング ロードスター)で感じられた素晴らしさに対して、圧倒的に優れていたかというと、正直なところそれを感じられなかった。でも、コアモデルの184psから200psに引き上げられたパワーに加え、車両重量は1050kgと、20kg軽量化されているのである。だから、パワーウェイトレシオは5.2kg/psにまで向上している。
◆「12R」の存在価値

もっとも、試乗車には車両価格のほかに特別付属品と、専用アクセサリーが全部載せで、本来710万500円の車両価格に対して、試乗車は866万5822円と、超がつく豪勢な仕様である。と言っても、それがパワーウェイトレシオを引き下げる要因のようなものはほとんどない。専用アクセサリーの中には、スポーツマフラーやフルバケットシート、スポーツアライメントキットなどが含まれているから、12Rの存在価値はこの部分にもあるわけで、正直なところ外せない。
もちろん特別付属品には、コアモデルと同じエアロキットやアルミ製のストラットタワーバーなどが含まれるので、12Rとしてはこちらも外せない。ということで結局は866万5822円が、12R本来の価格というわけである。もっとも限定200台はとっくの昔に売り切れているから、お買いになったユーザーは、恐らく全部載せをご所望だったに違いない。
2リットルエンジンのヘッドカバーは、それが丁寧に作られた証であるシリアルプレートが貼られている。試乗車の場合は000/200とされていて、一般販売した200台と同じ仕様とはいえ、いわゆる番外のエンジンであった。
◆コアモデル+300万円の価値はあるか

前述した「だが」について、少し個人的な見解を述べたい。データで示せるものがないから、あくまでもインプレッションである。
まず、コアとの対比で+300万円の価値があるかと聞かれたら、個人的には「無し」である。限定200台という稀少性は認めるとして、このクルマのポテンシャルを最大限に引き出そうとしたら、サーキットに持ち込むほかはなく、そもそもS耐出場車両のノウハウをこのクルマに詰め込んだわけだから、当然といえば当然である。
乗り心地にしてもそう。足回りのセッティングはコアよりもさらに締め上げられていて、サーキットのような平滑な路面ならばいざ知らず、マンホールもあれば段差もあるし、時には穴も開いているような一般道の路面では、明らかに脳みそと胃が揺すられるという感覚を持つ乗り心地である。

顕著に感じたのは、今回試乗コースとして往路は横浜から御殿場までを東名高速、帰路は富士スピードウェイから再び横浜までを、山梨県の道志みちを使って走行した結果、往路の東名高速ではあまり感じられなかった不快感(乗り心地)が、一般道に降りると明瞭な差となった現れたことである。だから正直なところ、一般道のロングドライブは疲れる。
◆フジツボマフラーの恩恵は
相変わらずシャープなハンドリングはほぼコアと同等。しかしこれもサーキットに持ち込んで、より高いスピード域で走ればその差を感じられるのではないかと思われた。

チタン製のフジツボ技研のマフラーにしてもそう。乗り始めは「んっ?どこが違うの?」という印象であった。確かによくよく聞いていると、少し音圧が高い。これが決定的になるのは、3000rpmを超えてからである。そこから先はドライバーがラテン系になったかのように制御が甘くなるから、少々危険。
それに各ギア3000rpm以上回すと、相当なスピード域となって、一般道ではあまり有難みを感じる機会が少ないのである。比較的飛ばせるワインディングで、2速3速のシフトアップ&ダウンを繰り返せるような状況だと、このマフラーのありがたみというか、醍醐味を感じられる。でもその機会はとても少ない。
◆日常的に使って楽しむならコアモデル

というわけで、あくまでも個人的な見解ではあるが、日常的に使って楽しめるモデルは?と言われたら、躊躇なくコアモデルをお勧めする。一般道ならコアで楽しみを満喫できる。もしそれで不足ならば、あるかどうかは知らないが、コアモデルにフジツボマフラーを単独で購入して取り付ければ、12R風のサウンドが楽しめる。もちろん頻繁にサーキットでスポーツ走行を楽しみたいというユーザーであれば、12R一択である。
どうも最近は鈍感になったのか、ファインチューニングが施されたエンジンに、その上乗せされた良さを感じ取ることができなかった。多分、十分なスピード領域のスポーツ走行ができなかったからだと思うが、一般道での試乗ではそれは無理だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。



