KYBから新時代サスペンションシステム「ActRide」が登場した。スマホで減衰力を調整でき自動制御にも対応する注目のアフターパーツだ。
◆純正サスペンションメーカーKYBが生んだ新時代のActRide

KYBは純正ショックアブソーバーを手がける日本のメーカーで、クルマやバイク、重機など幅広い分野で純正ショックアブソーバーを製造している。こうしたメーカーではアフターパーツをラインアップしないことも多いが、KYBは古くから純正形状サスペンションの「NEW SR」などを販売してきた。さらにサーキット走行向けの全長調整式車高調もラインアップし、競技やタイムアタックでも数多く使われている。
そんなKYBから新たに登場したのが新時代サスペンションシステム「ActRide」である。簡単に言えばスマホで減衰力を遠隔調整でき、さらに自動調整にも対応するサスペンションシステムだ。しかも減衰力調整にはソレノイドバルブを採用している。

コントローラーと呼ばれる本体は車内に設置され、その内部には3軸加速度+3軸角速度を計測できるIMUセンサーを内蔵。前後左右上下方向の挙動を把握し、それに合わせて最適な減衰力を算出できる。
◆ソレノイドバルブが生む高レスポンスな減衰力制御

算出した減衰力は有線でショックアブソーバー内部に備わるソレノイドバルブへ伝えられる。ソレノイドバルブとは電気信号を使い、ダンパーオイルが流れる流路を狭くしたり広くしたりできるもの。日本語で言えば電磁弁である。
ソレノイドバルブの利点はレスポンスの良さにある。これまで減衰力調整は細い穴を通るオイルの量を、鉛筆の先のような形をしたニードルで塞ぐことで調整していた。ニードルを締め込むと穴を通るオイルが少なくなり減衰力がアップ。逆にニードルを引き上げるとオイルが通りやすくなり減衰力は弱くなる。
減衰力の自動調整などは、このニードルの先にモーターを取り付け、それを回転させることで行っていた。しかしソレノイドバルブは電気信号に応じてダイレクトに動くため反応速度が速い。より路面状況に合わせた素早い調整が可能になったのだ。
そして減衰力の調整はスマホとリンクして行う。速度情報はスマホから読み取るため、速度が上がったときに減衰力をどう変化させるか設定することもできる。
◆スマホで4種類の減衰力制御を直感的に調整

減衰力は(1)ベースダンピング(2)ライドコントロール(3)ハンドリングコントロール(4)スピードアダプトの4種類で調整できる。
まず(1)はベースとなる減衰力のこと。オートモードをオフにすると、このベース減衰力のまま走行する。減衰力の値はスマホで0~100の範囲で調整でき、前後を独立して設定できる。今回最初に発売されたハイエース用サスペンションの場合、純正サスペンションもKYB製。純正サスペンションの減衰力は50程度ということで「ActRide」では純正サスペンションよりも減衰力を強くも弱くもできる。
(2)は乗り心地の制御。主に上下方向の突き上げなどをコントロールできる。緩めればゆったりとした乗り味になるが、フワフワもしやすい。締めていけば硬めに感じるが収まりは良くなる。
(3)は操縦性の制御。ハンドル操作やアクセル、ブレーキに応じて自動的に減衰力が変化していく。
(4)は車速連携。高速走行時に減衰力が上がるように設定すれば、安定感をアップさせることができる。
(1)のベース減衰力をどう変化させるかを(2)(3)(4)で決めることができ、それぞれ変化する度合いを0~100で設定できる。(2)のライドコントロールの数値を大きくすれば上下振動に合わせて減衰力が大きく変化し、(3)のハンドリングコントロールの数値を大きくすれば曲がり出したときに減衰力が高まるような設定が可能だ。
◆市街地と特設コースで体感したActRideの効果

今回は市街地と特設コースで試乗することができた。車両はハイエースの4WDガソリン車だ。
まずベース減衰力を調整してみる。弱めるとノーマルよりもソフトな乗り心地になる。しかし段差を乗り越えたあとに上下動の余韻が残る。強めにするとしっかり感は出るが、路面状況が伝わりやすくなり乗り心地はやや硬く感じられる。
そこで自動調整をONにしてみる。ライドコントロールを強くすると、クルマの揺れを上手く抑えてくれる。ベース減衰力を弱めて乗り心地は良いが、段差のあとに余韻が残るような状況でも、減衰力が上手く変化して縦揺れの余韻を短くしてくれる。

ハンドリングコントロールを強くすると、ハンドルを切っていく場面で適度に減衰力が高まり、しっかり感のあるコーナリングが楽しめる。スピードアダプトは今回高速道路での走行がなかったため体感しにくかったが、速度に応じて全体の減衰力が高まっていく感覚は確認できた。
◆ハイエースの積載変化にも対応する実用性

KYBのオススメはベース減衰力を弱くしておくこと。これはそのとおりで、基本的な減衰力を弱めにしておくことで足まわりは動きやすく、路面からの衝撃を吸収してくれる。しかし上下にフワフワしやすい状況では減衰力が高まり、曲がるときや速度が上がったときにも減衰力が高まってくれる。
その度合いをスマホで調整できるため直感的に味付けでき、それに応じて減衰力が変わってくれる。そして何より、その減衰力変化のレスポンスが良い。
KYBは純正納入サスペンションを製造しており、現在では純正で室内から減衰力を調整できるサスペンションも増えている。そこにはこのソレノイドバルブが採用されている。それだけ大量のソレノイドバルブを作っているからこそ、アフターパーツのサスペンションにも転用できたと言える。

その機構を見れば高価なことは一目瞭然だが、純正サスペンションメーカーだからこそできる大量生産により、24万5000円(税別)という価格でアフターパーツにソレノイドバルブを投入できたと言えるだろう。決して安くはないが、積載量変化の大きいハイエースだけに空荷と荷物を積んだときで調整できる魅力は大きい。前後のベース減衰力をそれぞれ設定できるため、荷物を積んだ際にはリアのベース減衰力をアップさせるといった操作もスマホでサクッと行える。
◆スポーツ走行にも広がる次世代サスペンションの可能性

ちなみにサスペンションが劣化した際にはソレノイドバルブも含めて交換となる。ソレノイドバルブとしての寿命は10万km程度は十分にあり、サスペンションよりも先に寿命が来ることはまずないという。今後はSUVなどを中心に「ActRide」のラインアップを拡大していく予定だ。
これだけハイレスポンスな減衰力自動調整機構であれば、スポーツカーでワインディングを走ったり、サーキットを走ったりしたときにもメリットが得られるはず。ある程度減衰力を強めておきながら、縁石に乗ったようなシチュエーションでは逆に瞬間的に減衰力を弱めることで、縁石からの入力を吸収しながらボディの揺れを抑えることも可能になるだろう。
そういった新たなサスペンションの世界を開いてくれる機構だけに、今後の展開に期待したい。



