“低音”を増強すると心地良くなるのは、なぜ? 「サブウーファー」、導入のススメ 第1回 「必要なワケとは?」 | Push on! Mycar-life

“低音”を増強すると心地良くなるのは、なぜ? 「サブウーファー」、導入のススメ 第1回 「必要なワケとは?」

カーオーディオシステムのポテンシャルを上げたいと思ったとき、「サブウーファーの追加」も有効な作戦のうちの1つとなる。今回から開始する当特集では、その理由から導入方法、そして使い方のコツまでを詳細に解き明かしていく。

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「サブウーファ−」の取り付け例(製作ショップ:フィスト<北海道>)。
  • 「サブウーファ−」の取り付け例(製作ショップ:フィスト<北海道>)。
  • ユニットサブウーファーの一例(フォーカル・P20F)。
  • ユニットサブウーファーの一例(モレル・ウルティモエスシー)。
  • 「サブウーファ−」の取り付け例(ケンウッドデモカー)。
  • ユニットサブウーファーの一例(カロッツェリア・TS-W312S4)。
  • パワードサブウーファーの一例(カロッツェリア・TS-WX010A)。

カーオーディオシステムのポテンシャルを上げたいと思ったとき、「サブウーファーの追加」も有効な作戦のうちの1つとなる。今回から開始する当特集では、その理由から導入方法、そして使い方のコツまでを詳細に解き明かしていく。

フロント2ウェイスピーカーで、全帯域の音を鳴らし切るのは難しい!?

最初に、「サブウーファーとは何か」、を説明しておこう。カーオーディオにおいての「サブウーファー」とは、超低音を再生するためのスピーカーユニットだ。

これが必要となる理由は以下のとおりだ。カーオーディオでは「2ウェイスピーカー」が使われることが多く、その場合には高音再生を担当するツイーターと中低音再生を担当するミッドウーファー、この2つを使って全帯域を鳴らそうとするのだが、しかし実を言うと、「ミッドウーファー」の低音再生能力には限界がある。

というのも、ドアに装着できるスピーカーのサイズはある程度限られる。一般的には、17cmクラスが最大サイズだ。しかしこの大きさでは、超低音までのスムーズな再生は物理的に困難だ。スピーカーは、振動板の口径を小さく作るほど高音再生がしやすくなり、口径を大きく作るほど低音再生が得意になる。で、17cmクラスでは超低音をスムーズに再生するにはサイズ的に不十分なのだ。

ちなみに17cmクラスのスピーカーユニットでも、しっかり設計された強固な箱(エンクロージャー)に取り付ければ超低音までの再生は不可能ではない。しかしクルマのドアはスピーカーとしては設計されていないので、コンディション的にも超低音再生は難しい。

また、ドアのスピーカーに超低音までを再生させると、ドア内部の鉄板がビビリやすくなる。鉄板を振動させるのは主に低音成分だからだ。その意味でも、ドアのスピーカーには超低音再生までを担わせない方が良いのだ。

ユニットサブウーファーの一例(フォーカル・P20F)。ユニットサブウーファーの一例(フォーカル・P20F)。

「サブウーファー」を導入すれば、聴こえていなかった低音が出現する!

またクルマの中では、そもそも低音が聴き取りづらい。なぜならば、走行することで発生する「ロードノイズ」に低音がマスキングされがちだからだ。「ロードノイズ」とは、タイヤのパターンが路面を蹴ることで発生する騒音のことを指すのだが、これは主には低音だ。かくしてスピーカーから再生される低音に「ロードノイズ」が覆い被さり、低音が聴き取りにくくなる。

しかし「サブウーファー」を導入すれば、ドアのスピーカーでは鳴らしきるのが難しい超低音までをスムーズに再生できるようになり、ドアスピーカーが超低音までを再生しなくてすむので鉄板のビビりやすさも緩和できる。そして「ロードノイズ」に低音をかき消されにくくなる。ある程度の速度で走っても、低音がしっかり耳に届くようになるのだ。

結果、聴こえ方がガラリと変わる。実際、フロントスピーカーを交換したとき以上の変化幅が得られた、という声も多々聞く。なぜなら、それまでは聴こえていなかった音が聴こえてくるようになるからだ。あったものの質が変わるよりも、なかったものが出現することの方がインパクトが大きい、というわけなのだ。

ところで、低音を強化するとヒップホップとかリズムアンドブルースとかロックとか、ビート感が重要な音楽がより一層楽しく聴けるようになる。なぜならドラムスのバスドラムやベースラインがきっちり再現されるので、ノリが良くなり、サウンドがより快活になる。

その一方でクラシック音楽でも、「サブウーファー」は多大な効果を発揮する。なぜならば、環境音を再現できるようになるからだ。環境音とは、演奏されている部屋やホールでの響きの成分のことを指す。そして環境音は実は、主には低音だ。

ユニットサブウーファーの一例(モレル・ウルティモエスシー)。ユニットサブウーファーの一例(モレル・ウルティモエスシー)。

「サブウーファー」を導入すると、クラシック音楽の臨場感が増す!?

というのも、ホールの中で最後まで響いているのは超低音だ。音は、音程が高くなるほど減衰するのが速い。逆に低い音ほど減衰するのが遅い。なので、ホールやレコーディングスタジオの部屋の中で余韻として響くのは主には低音なのだ。「サブウーファー」を導入するとその環境音をしっかり鳴らせるようになるので、臨場感が増すのだ。

ちなみに言うと、すべての要素がコンピューター(電子楽器)で作られたサウンドには、環境音が含まれていない。そのような楽曲はコンピューターと録音機材とを直結して録音されることが多く、リアルな残響音が録音されないのだ。なので「サブウーファー」を足せば低音の再生レンジを広げられ音量も上げられるが、臨場感はあまり変わらない。

また、「サブウーファー」を用いて超低音をしっかり再生できるようになると、中音から高音の響き方も変わってくる。音は超低音から超高音までが互いに影響しあっている。なので超低音が充実するとそれによる良い影響が、サウンド全体に及ぶのだ。

さて最後に、「サブウーファー」の“サブ”の意味も紹介しておこう。ちなみに、“サブ”という言葉そのものにはさまざまな意味がある。補助的な、副、補欠、下の、さらには会費(サブスクリプション)という意味もある。で、「サブウーファー」の“サブ”には、「下の」という意味があり、「補助的な」という意味も含まれている。

つまり、「ドアのスピーカーよりも“下の(低い)”音を担当するスピーカー」であり、さらには「ドアスピーカーを補助するスピーカー」でもあるわけだ。

ちなみに「スーパーツイーター」と呼ばれるユニットもあるが、これは「ツイーターよりも“上の(高い)”音を担当するスピーカー」のことを指す。

今回は以上だ。次回からは「サブウーファー」の導入方法について詳しく説明していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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