【ホンダ ヴェゼル 新型試乗】もう少し力強さを感じさせてくれたら言うことなし…塩見智 | Push on! Mycar-life

【ホンダ ヴェゼル 新型試乗】もう少し力強さを感じさせてくれたら言うことなし…塩見智

ひと目見ると、目を離した後もボディ同色で縁取りのないフロントグリルの印象が強く残るホンダ『ヴェゼル』。ボディカラーが白系だと佐清みたいに見えなくもないが、フロントマスクのみならず、サイド、リアも含め要素が少なくシンプルでクリーンなスタイリングだ。

自動車 試乗記
ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)
  • ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)

ひと目見ると、目を離した後もボディ同色で縁取りのないフロントグリルの印象が強く残るホンダ『ヴェゼル』。ボディカラーが白系だと佐清みたいに見えなくもないが、フロントマスクのみならず、サイド、リアも含め要素が少なくシンプルでクリーンなスタイリングだ。ホンダ車にはクロームメッキを多用するモデルもあるが、こっちのほうがずっといい。カタログや画像で見るよりも、街中に置かれた実車を見るほうがしっくりくるとも感じた。

狭くなったという印象はない室内

一見して先代モデルよりも大きく見えるが、プラットフォームは先代と同じものをベースとする改良型であり、ホイールベースは2610mmで同一。全長が+35mmの4330mm、全幅が+20mmの1790mm、全高は-20mmの1590mm。長く、幅広く、背が低くなったが、さほど変わらない。室内寸法は80mm長くなり、40mm幅が狭まり、40mm低くなっている。つまりはずんぐりした形から細長い形になったということだ。

実際に乗車してみると、前後席ともに狭くなったという印象はない。頭上空間は明らかに減ったとわかるが、残念かと言われればそんなことはない。資料によると、後席のヒップポイントから足先までの長さは35mm拡大している。もはや先代の記憶が曖昧なため、座った瞬間により広くなったと体感することはできなかったが、先代ユーザーならわかるレベルだろう。先代よりもリアハッチの角度が寝たスタイリングを採用したため、後席背もたれが2度立てられたが、気にならなかった。「後席座面がフラット。もう少しクッション性があるとよかった」とは同乗したスタッフの感想。

ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)

パワーは過不足なし、街中での実用重視

パワートレーンはハイブリッド(e:HEV)と非ハイブリッドの2種類。ハイブリッドは1.5L直4エンジンと電気モーターの組み合わせ。『フィット』と同じだが、ヴェゼルのほうが最高出力がモーターで22ps、エンジンで8ps高められている。最大トルクはモーター、エンジンともに同一。ヴェゼルはフィットよりも約200kg重いので、その対策と思われる。

ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)

空いた山中湖周辺の一般道と中央高速河口湖線で、約2週間前に試乗したフィットの印象を思い出しながらヴェゼルを走らせた。発進加速はフィットのほうが軽快にダッシュしていく。50~60km/hから80km/hを目指す加速の力強さは同等だったので、まんま重さの違いが印象の違いとなって現れていた。パワーが不足していると感じるほどではないが、力強いなとも思わなかった。過不足なし。さぁ行け! とばかりにアクセルペダルを深く踏み込むと、あれこんなものかと一瞬拍子抜けするものの、ペダルを軽く踏んでゴー&ストップを繰り返す街中ではスイスイ進む。実用重視。ただエンジン音は結構乗員に届く。

ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)

最も進化したのは乗り心地

ドライブモードスイッチはエコ(ECON)、ノーマル、スポーツとあるが、スポーツにしてもさほどスポーティーになるわけではなく、これならノーマル一択でOK。ステアリングパドルは減速度をコントロールするためにあり、左を引くと強まり、右を引くと弱まる。4段階で調整が可能だ。ATセレクターでBレンジを選べば、最も強い減速度を得られるモードで固定される。慣れるとアクセルペダルとブレーキペダルの踏み換え頻度を減らすことができて便利。各社モーター駆動車には同様の機構を採用しており、電動化時代の新常識となりつつある。

ホンダ ヴェゼル 新型(e:HEV Z)

1.5L直4エンジンを搭載するガソリンモデルは、はっきりともっとパワーが欲しいと思わせた。強くハイブリッドをオススメする。ハイブリッドが3グレード設定されるのに対し、ガソリンモデルは装備が簡素な1グレードのみ。スターティングプライスを低くするために設定しているが、ホンダの“推し"も完全にハイブリッドだ。

ホンダ ヴェゼル 新型(G)

新型になって最も進化したのは乗り心地だ。路面状況を問わず、終始落ち着きがあってバタつくことがない。ボディ剛性の高さや、サスペンションがスムーズに動いていることを常に乗員に感じさせてくれる。実際より大きなクルマを走らせているような印象。どうやってこのフィーリングを実現したかというと、例えばステアリングコラムやフロア部分の剛性を高めたほか、よりよい部材を使ってフロントサスペンションのフリクションを減らした。そうやって各部をしっかりつくっておいて、4輪のスプリングのバネレートを先代よりも10%落とし、ソフトな乗り心地とした。

使い勝手も大きく向上

フルモデルチェンジによって、ADAS(先進運転支援システム)や予防安全装備などもアップデートされ、ライバルと同等以上の性能が備わった。ボディの下に足をかざすだけでリアハッチを開閉できるだけでなく、ヴェゼルはハッチが開いた状態で予約クローズスイッチを押せば、人間が離れると自動的に閉まる機能が付いた。自動でロックされるようにもできる。またブレーキペダルを踏み続けなくても停止保持されるオートブレーキホールドが、いったんエンジンを切って再始動してもオンの状態が維持されるようになった。使い勝手が大きく向上する地味な変化がいくつか見られ、よく煮詰められていると感心した。

新型ヴェゼルは、飛び抜けて他車を出し抜く性能こそないものの、細かくネガを潰し、使い勝手を高めた実用的なコンパクトSUVだ。初期にリコールを重ねたにもかかわらずモデル末期までよく売れたロングセラーの初代から、スムーズに世代以降できるのではないか。もう少し力強さを感じさせてくれたら言うことなし。

ホンダ ヴェゼル 新型と塩見智氏

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

塩見智|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1972年生まれ。岡山県出身。地方紙記者、自動車専門誌編集者を経てフリーランス・ライターおよびエディターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。文章はたとえツッコミ多め、自虐的表現多め。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。趣味ゴルフ。日本カーオブザイヤー選考委員。

《塩見智》

特集

page top