今さら訊けない“カーオーディオ”の素朴な疑問 Part6「サブウーファー編」その2「サブウーファーが再生する音ってどんな音?」 | Push on! Mycar-life

今さら訊けない“カーオーディオ”の素朴な疑問 Part6「サブウーファー編」その2「サブウーファーが再生する音ってどんな音?」

「カーオーディオはどうも“分かりづらい”」、そう感じている方々に向けて、その“分かりづらさ”を解消していただくための解説を展開している当特集。現在は「サブウーファー」に関する説明を行っている。今回は「サブウーファー」が担当する音について解析していく。

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ユニットサブウーファーの一例(DLS)。
  • ユニットサブウーファーの一例(DLS)。
  • パワードサブウーファーの一例(カロッツェリア)。
  • ユニットサブウーファーの一例(モレル)。

「カーオーディオはどうも“分かりづらい”」、そう感じている方々に向けて、その“分かりづらさ”を解消していただくための解説を展開している当特集。現在は「サブウーファー」に関する説明を行っている。今回は「サブウーファー」が担当する音について解析していく。

「サブウーファー」が担当する再生帯域の範囲は、案外狭い!?

最初に、「サブウーファー」の担当帯域について説明していく。「サブウーファー」が担当する再生帯域はいうまでもなく“重低音”だが、その再生帯域の範囲は、実はそれほど広くはない。ドアスピーカーとの役割分担をする境目は大体、60Hz(ヘルツ)から80Hzあたりに設定されることが多く、そこから可聴帯域の下限である20Hzまでの、ごく狭い範囲のみを受け持つにすぎないのだ。

なお人間の可聴帯域の上限は大体20kHzあたりで(加齢とともに高域の音は聴き取りづらくなる)、全可聴帯域は音域でいうと10オクターブ分に相当するのだが、「サブウーファー」が担当する範囲は音域でいうと、大体1オクターブ半から2オクターブ程度ということになる(20Hzの1オクターブ上は40Hzでそのさらに1オクターブ上が80Hz)。つまり「サブウーファー」の担当範囲は、全帯域のせいぜい20%程度(またはそれ以下)、というわけなのだ。

で、「サブウーファー」の担当範囲の中にはどのような楽器の音が存在しているのかというと…。実は、音階を伴う楽器の音はほんの一部しか含まれていない。音階を奏でる楽器の中で低音を鳴らすものといえば「ウッドベース」や「4弦エレキベース」が思い付くが、これらの楽器で出せる最低音は、約40Hzだ。そしてその1オクターブ上の音が約80Hzなので、「サブウーファー」から聴こえてくる音階を伴う音は、多く見積もっても1オクターブ程度なのである。

パワードサブウーファーの一例(カロッツェリア)。パワードサブウーファーの一例(カロッツェリア)。

「サブウーファー」は空間音も再生する!?

また、音階を伴わない楽器についても、「サブウーファー」から聴こえてくる音は限定的だ。ロックやポップスであれば、ドラムセットの中のバスドラムの音くらいだ。

このような状況を踏まえると「サブウーファー」の役割は小さいように思えてしまうが、実際はそうではない。「サブウーファー」は実は、低音楽器の音を再生する以外の役目も果たしている。それは「空間音の再生」だ。

空間音とは、残響音と言い替えても良いだろう。マイクを使って録音する楽器の場合、多かれ少なかれ演奏している部屋の中で響く音も録音される。それが空間音だ。ちなみにいうと、シンセサイザーやドラムマシーンといった電子楽器は、録音する際に楽器から録音ミキサーにダイレクトに音を送り込む場合が多く、そうであると空間音は録音されない。対して例えばフォークギターの前にマイクを立てて録音する場合には、少なからず空間音も録音される。クラシックの演奏をホールで録音する場合にももちろん、ホール全体で響く音も録音される。

で、空間音は主には低周波だ。というのも、高い音ほど減衰するのが速いので、中高音は反響しながらも比較的に早く消えてしまう。結果、空間音として最後まで残るのは低音だ。例えば音域が高めな楽器であっても、そして女性ボーカルであっても、空間音として録音されるのは主には低音となる。

なので、「サブウーファー」を導入してボックス製作やチューニングが上手くいくと、空間音がしっかり再生できるようになり、余韻が豊かに奏でられることとなる。ゆえに、各楽器の音がより豊潤に響くようになり、ボーカルも一層艶やかに聴こえてくる。「サブウーファー」によって音楽がより魅力的になる、というわけなのだ。

ユニットサブウーファーの一例(モレル)。ユニットサブウーファーの一例(モレル)。

「サブウーファー」を導入すると、ビートも一層心地良く響く!

なお「サブウーファー」から鳴らされる楽器の音の種類は少ないとはいっても、その音は音楽において重要なパートであるので、それがしっかりと鳴らされることによっても当然ながら好影響がもたらされる。特に、ビート感が重要な音楽においては影響度が大きい。バスドラムやベースの低音がしっかりと鳴り響くことで、パンチが出てノリが良くなる。

そしてさらには、「サブウーファー」を導入すると余韻だけにとどまらず、中高音の音色にも良い変化が現れる。なぜならば、「倍音がより豊かに響くようになるから」だ。

実は、音は“基音”と“倍音”という2つの要素で成り立っている。“基音”とはその名のとおり基礎となる音で、それによって音程が決定される。例えばギターのチューニングで使われる「ラ」の音は周波数で言うと440Hzなのだが、つまりこの「ラ」の音は、440Hzの“基音”を中心として成り立っている。

そしてその“基音”に“倍音”が乗り、音色が決定される。なお“倍音”は、“基音”の周波数と整数倍の関係にある。この「ラ」の音の場合であれば、2倍音は880Hz、3倍音は1.32Hz、4倍音は1.76kHz…、このように整数倍の周波数の“倍音”が、440Hzの音と共鳴しその楽器ならではの音色を醸し出す。

で、「サブウーファー」を導入して空間音も含めて低音がしっかり鳴るようになると、それに伴ってさまざまな楽器の“倍音”にも好影響がもたらされる。土台となる成分が確実に再生されるので、それに乗って響く成分もより豊かに鳴ってくれるのだ。

ちなみに、ツイーターが再生する帯域よりもさらに高い音を担当する「スーパーツイーター」を導入する場合にも、音楽全体の響き方が良い方向へと変わってくる。このように、音は低い音から高い音までが互いに影響しあっていて、再生レンジが広がると音楽全体に良い変化がもたらされるのだ。

今回はここまでとさせていただく。次回も「サブウーファー」に関する解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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