フロントスピーカーの“セッティング術”、大研究!! 第9回「“デッドニング”を実行!」 | Push on! Mycar-life

フロントスピーカーの“セッティング術”、大研究!! 第9回「“デッドニング”を実行!」

フロントスピーカーを“どう鳴らすか”について考えている当短期集中特集。その第9回目となる今回は、“デッドニング”をテーマに据えてお贈りする。“デッドニング”の目的や行われる作業内容、そしてそれによって得られる効果を解説していく。

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吸音材の施工例。
  • 吸音材の施工例。
  • 吸音材の一例(フェリースソニード)。
  • 制振材の施工例。

フロントスピーカーを“どう鳴らすか”について考えている当短期集中特集。その第9回目となる今回は、“デッドニング”をテーマに据えてお贈りする。“デッドニング”の目的や行われる作業内容、そしてそれによって得られる効果を解説していく。

部材を用いて“物理的”にサウンドチューニング!

最初に、“デッドニング”の目的を説明しよう。“デッドニング”は何のために行われるのかというと、答はズバリ「スピーカーとしての完成度を高めるため」だ。

というのも、カーオーディオ用のスピーカーはスピーカーユニットのみで売られている。対してホームオーディオ用のスピーカーは、スピーカーユニットが箱に取り付けられた状態で売られている。つまり、その状態がスピーカーとしての完成形なのだ。

では、スピーカーユニットをドアに取り付ければスピーカーとして完成するのかというと、答はノーだ。取り付けて配線をすればとりあえず音は出るが、スピーカーとしての完成度はまだまだ低い。なぜならば、クルマのドアの内部はスピーカーとしては設計されていない。音響的なコンディションがよろしくない。

そこに“デッドニング”を施していくと、音響的なコンディションを上げていける。そうすることで、スピーカーとして完成させられる、というわけなのだ。

ゆえに“デッドニング”は、“ドアチューニング”と呼ばれることもある。部材を用いて物理的にスピーカーとしてのパフォーマンスを高めようとするものなのだ。やるやらないで、鳴り方がガラリと変わってくる。

なお、行うタイミングはいつで良い。スピーカー交換をする前(スピーカーが純正のままのとき)に行っても良いし、スピーカーを交換した後日にやっても構わない。そして、細かなやり方も案外、ショップごとで異なっていたりもする。さらには、どの程度まで手を掛けるかもケースバイケースだ。予算に応じて、できる範囲のメニューを施そう。

ドア内部の鉄板は共振しやすい。そして共振はとにかく有害…。

逆に、せっかくスピーカーを市販品に交換したのに最後まで何もやらない、というのは避けたい。何もしなければ、交換したスピーカーの性能を十二分に引き出せないままで終わってしまうからだ。せっかく予算を投じてスピーカーを交換するのだから、それではもったいない。予算ができたタイミングで、頃合いをみて何らかを実行しよう。

続いてはどのようなことが行われるのかを解説していく。メニューは大きく2つに分類できる。1つは「ドア内部の鉄板の共振を止める作業」で、もう1つは「スピーカーの裏側から発せられる音を閉じ込める作業」だ。

それぞれについて目的と効果を詳しく説明していこう。まずは「共振を止める作業」から。当作業が必要となる訳は単純明快だ。「ドア内部の鉄板が共振しやすいから」だ。ドア内部の鉄板は、実は案外に薄い。特に最近は、燃費性能を高めるために至るところで軽量化が進められていて、ドア内部の鉄板も、強度は保たれていながらもより軽い(薄い)材料が使われたりもしている。ゆえに、より共振しやすくなっているという側面もある。

また、スピーカーを市販品に交換した場合には、純正スピーカーよりも大きな音が出せるようになる。そうなるとスピーカーの裏側から放たれる音エネルギーも大きくなる。なので鉄板の共振を止めるための作業の必要性も高まってくる。

なお、目立ってビリビリと共振している場合にはその音がすなわち耳障りだが、目立って音を立てていなくても、共振はスピーカーの表側から放たれる音を知らず知らずのうちに濁らせる。音を曇らせてしまうし、各楽器の音の分離感も悪くなる。

鉄板の共振は、とにもかくにも不必要だ。そしてそれを止められれば、状況はガラリと一変する。

スピーカーの裏側から放たれる音が表側に回り込むと…。

続いては、「スピーカーの裏側から発せられる音を閉じ込める作業」の目的と効果を解説していこう。

ところでホーム用のスピーカーは、スピーカーユニットが箱に取り付けられた状態で完成品となっているわけだが、その箱はすなわち「スピーカーの裏側から発せられる音を閉じ込めるため」にある。というのも、スピーカーの裏側から発せられる音は、表側から発せられる音とは波形的に逆の状態となっている。振動板の動きが逆の状態にあるからだ。振動板が表側に出る動きをしているときにそれを裏側から見ると、振動板は引っ込んだ状態となっている。ゆえに、音波としては真逆の関係となるわけだ。

そして、もしもその両方が同一空間で混ざり合うと…。互いを打ち消し合う“キャンセリング”を起こしてしまう。そうならないように、裏側から出る音は箱の内部に閉じ込めておかなければいけないのだ。

ゆえに“デッドニング”では、ドア内部の密閉性を上げるための作業がいろいろと施されることとなる。サービスホールを制振材や遮音用の部材で塞いだり、吸音材を使って裏側の音を吸い取ったり、内張りパネルを響きにくくする等々の作業がいろいろと実行されていく。

こうして“キャンセリング”を防ぐことができると、音のクリア度が上がる。特に低音に効いてくる。低音の方が表側に伝わりやすいので、“キャンセリング”もしやすい。それが改善されて、低音の質が上がっていくのだ。

なお、エンクロージャー(スピーカーボックス)を組んでそれをドア内部に設置する、というやり方もある。しかし、通常の大きさのスピーカーの場合、ある程度大きなボックスが必要となるので作業の難易度はかなり高くなる。ただ、そのような作戦もあるということは頭に入れておいても良いだろう。興味があればショップと相談してみよう。

今回はここまでとさせていただく。次回もスピーカーの“セッティング術”についての考察を継続する。お楽しみに。

《太田祥三》

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