【キャデラック CTS 新型試乗】これが最後のミッドサイズ・アメリカンになるのか…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【キャデラック CTS 新型試乗】これが最後のミッドサイズ・アメリカンになるのか…中村孝仁

GMジャパンから丁寧に広報車に関する案内を頂き、変更が加えられた2019年式のキャデラック『CTS』と書かれていたので早速試してみた。

自動車 試乗記
キャデラック CTS 2019年モデル
  • キャデラック CTS 2019年モデル
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GMジャパンから丁寧に広報車に関する案内を頂き、変更が加えられた2019年式のキャデラック『CTS』と書かれていたので早速試してみた。

実際に借りてみたら、変わっていたのはインフォテイメントの一部だけだったようで、本質的な部分では前年モデルと変わっていなかった。それにしても、ジープを除くとアメリカンブランドの情報の乏しさが際立つように感じる。

キャデラックは下から『ATS』、CTS、『CT-6』、『CTS-V』のセダン系と、『XT5』それに『エスカレード』のSUV系と結構なラインナップがあるのだが、ほとんど紹介されていない。限りなくバイアスのかかった目で見られていると感じる。と言って、書いている本人もかなりバイアスをかけてしまっている感は否めない。

何故か。それは長い間、「アメ車」というくくりで日本人はアメリカンブランドを見ていたからではないかと思う。

「アメ車」らしいV8も一部の特異例に


メルセデスやBMWをひっくるめて誰がドイツ車と呼ぶだろうか。確かにドイツ車である。でもその前にメルセデスでありBMWだ。しかし、アメ車の場合はキャデラックである前にアメ車というくくりが来ている気がしてならない。

それは1980年代までアメリカ車は世界的に見ても特異な存在で、大きなボディ、独特なスタイル、独特な乗り味、それに大きなエンジン等々、明らかにヨーロッパ車とも日本車とも違う個性を作り上げていたからに他ならない。しかし今、グローバル化が進みどこの国のクルマでも同じ評価基準でくくられるようになると、ボディは小型化せざるを得ず、スタイルもグローバルを踏襲、さらにエンジンのダウンサイズかが進んだ結果、アメリカ車をアメリカ車として特徴づける何物もなくなってしまったと言って良い状況になった。

ヨーロッパ車や日本車は元々似たり寄ったりのサイズ感とデザインの方向性、それにエンジンサイズを持っていたから、グローバル化されてもアメリカ車ほどの影響は出なかったのだろう。

キャデラックと言えばかつてそのエンジンはほぼV8と相場は決まっており、余程の特異例が4気筒車。しかし今は真逆で、V8はエスカレードに使われているのが唯一の特異例で、あとは4気筒が主流。上級モデルにV6が使われるという状況なのである。そしてこうしたアメリカ車、否キャデラックの変化に対して日本のユーザーが付いていけないのが現状なのではないだろうか。

指摘すべき大きなマイナス要素はほとんど無い


CTSはその基を辿ると『セビル』に行きつく。そのセビル、かつては僕も所有していたモデルだ。勿論エンジンは4.5リットルV8で、非常に個性の強いシビアノッチと呼ばれたリアウィンドーがほぼ直立したデザインのモデルだった。そんなわけで外観からも、そして乗った印象でも簡単に差別化が出来た。

新しいCTSは、その僕が乗っていた頃のセビルとほぼ同じサイズ感。だから、サイズに関しては当時と変わりないのだが、僕のセビルは当時のキャデラックラインナップの中で最もコンパクトなクルマであった。それが今CTSは上級のCT6より少し小さなモデルで、実はほぼ最上級と言っても過言ではない。それだけボディがダウンサイズされたということだ。

そしてエンジンは2リットル直4ターボである。サイズ感と性能面でライバルを探すと、メルセデス『E200』もしくは『E300』あたり。BMWだと『523i』もしくは『530i』あたりだ。いずれの場合でもキャデラックの価格が安く設定されているのは間違いないのだが、それが販売に好結果を与えているとはとても言えない。しかし、実際に試乗してみると、指摘すべき大きなマイナス要素はほとんど無いのである。

世界的に売れないセダン、だが…


最大のデメリットは左ハンドルの設定しかないことだろう。2リットルの直4ターボエンジンはスムーズで良く回るし、すこぶるスムーズだ。アイドリング時にエンジンが揺れて振動を伝えるのはまあ愛嬌といったところ。300km弱走行して得られた燃費は8.7km/リットル。決して褒められた数値ではないが、昔のような大食いではない。

今や当たり前のモード切り替えはツーリング、スポーツ、それにスノー/アイスという3つから任意にセレクトできる。しかし、どう切り替えてもそれほど大きな差異を感じさせなかった。

ボディはだいぶコンパクトになったとは思うが、正直視界は前後ともあまり良くなかった。特にリアはシート後方がせり上がっていて、見切りが良くない。それにヘッドレストも邪魔をする。もっともリバースの場合はカメラがあるので駐車の際はあまり苦にならない。フロント側はAピラーとその直近に付くサイドミラーによる死角が比較的大きいこと。この見にくさを除けば快適だし、良く走るし、ハンドリングもキビキビ感の高いものだ。

というわけで、本当ならキャデラックCTSに死角はないはずなのだが、ではメルセデスにするか、BMWにするかそれともキャデラックにするかと言われた時、キャデラックを押す決定的な要素は正直、ない。

周囲にキャデラックCTSを見せた時、一言「小さっ!」と言われた。やはりイメージしているキャデラックと現物との間に大きなギャップがあるのかもしれない。もっとも今、セダンは世界的に売れないからそれも仕方のないことなのか?余談ながら、北米の情報を見るとCTSはどうやら今年で生産をやめるようである。

5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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