【アウディ A8 新型試乗】まさに時代の寵児、卓越したポテンシャルの一端に触れた…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【アウディ A8 新型試乗】まさに時代の寵児、卓越したポテンシャルの一端に触れた…中村孝仁

◆アウディのフラッグシップセダン「A8」に公道試乗 ◆レベル3自動運転は見送り、だが ◆ボディサイズからは考えられないシャープな運動性能

自動車 試乗記
アウディ A8 新型
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レベル3自動運転などなくても

ついにレベル3の自動運転を可能にしたクルマが世に出る…。そう深く印象付けたのは昨年の東京モーターショーでの出来事。アウディが高らかにそれを謳ったからだ。

そのA8がついに発売になるのだ、が残念な事にクルマの側で追いついていたレベル3自動運転は、法整備の方が追いつかず、設定を断念しての登場となった。

ダイナミックオールホイールステアリングと呼ばれる4輪操舵システムや、48Vのマイルドハイブリッドシステム搭載など、本来なら革新の固まりのようなクルマとしてデビューするはずだったのだが、レベル3自動運転が断念されたことで、少なからず肩透かしを食らった格好になった。

しかし、それで新しいA8の評価が下がることは全くない。そもそもそれ以外のすべての革新装備はすべてついているわけだし、そのレベル3自動運転のために装備した高価なライダー(LiDER)も、現実的に装備されているのである。だから、これを使ってACCを試してみれば、ほぼ完ぺきに前車を追従するはずである。それに横方向からの割り込みにもきちんと対応できるはずなのだ。すべて「はず」と書いたのは、試乗時間内でそうしたイベントに遭遇できなかったからで、単なるACCとしての機能は問題なし、というわけである。

まあ見事なほど快適な乗り心地


エアサスペンションを標準装備するA8は、一緒に試乗した『A7スポーツバック』と比較しても、やはり抜きんでた乗り心地を提供してくれた。まあ見事なほど快適である。それは高速での巡行から、巨体には似合わないワインディングロードまで如何なく発揮されたのである。

ドイツ系の高級車に乗っていつも思うことは、そのボディというか骨格の強度が、異様にがっしりとしていること。例えば比較的な大きな路面の穴にクルマを落としてしまったような時、当然ながらドスッとボディが揺すられるわけだが、ドイツ系高級車は基本的に皆一様にボディ全体がドスッと揺すられる。極端な表現をすると、すべての部位がシンクロして同時に揺れるという印象で、それは4つのタイヤのうちの一つが穴に落ちているという印象ではないのである。その力強い骨格は乗員にとてつもない安心感を与え、それがドイツ系高級車が持て囃される大きな要因なのではないかと思う。

ボディサイズをものともしないシャープな運動性能


トップグレードというだけのことはあって、エンジンはV8を筆頭に、2種用意されるのだが、今回は3リットルV6の方。ただしどちらも48Vのマイルドハイブリッドシステムは搭載していて、こいつがいわゆるISGの役割を果たす。だからまだ走っていると実感著しい、時速22km/hまで車速が下がるとエンジンが停止してしまう。もっとも走っているという実感と、エンジン停止という実感はリンクしておらず、クルマが止まったら…、あっエンジンも止まっている…と、そんな印象であった。

このクルマの試乗で何よりも驚かせてくれたのは、そのシャープな運動性能である。今回はA7と同時にクルマを持ちだし、途中で運転を変わって乗った。つまりドライバーはもう一人いた、というわけである。そのもう1人が、いわゆる飛ばし屋さん。ついこちらもその飛ばし屋さんについていく羽目になるわけだが、ワインディングに入ってこの巨体(全長5170×全幅1945×全高1470mm)が、まさに水を得た魚のごとく、スイスイ。そして機敏に動いてくれるのだ。ボディサイズなどものともしない。

それもこれも、正確無比なステアリングのおかげで、スピードレンジは高くないからステアリングの修正など一切必要とせず、まさにストレスフリーでこうした道を駆け抜けてくれたこと。それにこうした状況でも非常に静かに、そして豪快に走る。

あれやこれや試してみたいことは山ほどあるのだが、残念ながらまさに触りだけの味見に過ぎなかった。が、このクルマの卓越したポテンシャルの一端には触れられた。まさに時代の寵児的なクルマであった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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