プロが伝授する、本格サウンドチューニング術!「基本と応用」第5回「イコライザー調整のやり方」 | Push on! Mycar-life

プロが伝授する、本格サウンドチューニング術!「基本と応用」第5回「イコライザー調整のやり方」

カーオーディオのサウンドチューニングを自分でもやってみたいと思っている方に向けて、プロのテクニックを紹介する短期集中連載をお届けしている。今回はその第5回目として、主に「イコライザー」調整の勘どころを解説していく

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三菱電機『ダイヤトーンサウンドナビ』の“イコライザー”の設定画面。
  • 三菱電機『ダイヤトーンサウンドナビ』の“イコライザー”の設定画面。
  • トヨタ・クラウン(製作:サウンドカーペンター、オーナー:永易一之さん)
  • トヨタ・クラウン(製作:サウンドカーペンター、オーナー:永易一之さん)
  • トヨタ・クラウン(製作:サウンドカーペンター、オーナー:永易一之さん)

カーオーディオのサウンドチューニングを自分でもやってみたいと思っている方に向けて、プロのテクニックを紹介する短期集中連載をお届けしている。今回はその第5回目として、主に「イコライザー」調整の勘どころを解説していく

ところで今回の特集では、詳細な調整が可能な「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)がシステムに組み込まれ、かつ“マルチアンプシステム”が構築されていることを前提として話を進めている。もしもこここで解説しているようなチューニングにご興味があれば、お近くのカーオーディオプロショップを訪ね、「DSP」の導入や“マルチアンプシステム”の構築を相談してみよう。ちなみに、もっとも簡単にそれを実現させようと思ったら、優れた調整能力を備えたナビを使うのが一番だ。そうすれば、パワーアンプや外付け「DSP」を用意しなくても、高度なサウンドチューニングを実行できる。

では、本編に入りたい。今回は愛媛県の実力ショップ、“サウンドカーペンター”の仲尾さんに訊いた話を紹介していく。なお毎回説明させていただいているとおり、サウンドチューニングのやり方は各プロショップごとでさまざまだ。ここで紹介する方法以外のやり方が取られることも多々ある。いろいろな方法を知り、その中から自分にとってしっくりくるものを見つけ出していただきたい。

■“クロスオーバー”の仮設定をするにあたり、まずはスピーカーの特性を測定。

今回は“イコライザー”調整をメインに解説していこうと思うのだが、まずは“サウンドカーペンター”流の基本セッティング法から紹介していく。

「最初にすべきは“クロスオーバー”と“タイムアライメント”の仮設定ですが、当店の場合“クロスオーバー”は、測定器を使ってスピーカーの特性を測った上で設定していきます。各ユニットごとの“f0(最低共振周波数)”や、使える周波数帯がどこからどこまでか等々を確認してから、それに応じて仮の“クロスオーバー”を設定するんです。もっとも、以前に取り付けたことのあるスピーカーについては測定データが残っていますので、都度の測定は行いません。

“タイムアライメント”については、まずは各スピーカーまでの距離を実測して、その値を入力すればOKです。

初期設定を終えたら、ツィーターとサブウーファーをミュートして、左右のミッドウーファー間の“タイムアライメント”を整えます、このとき、右ハンドルのクルマであれば、右側のミッドだけを触ります。“タイムアライメント”の数値と“音量”を微調整して、センターイメージをあるべき場所へと移動させていきます。

ちなみにここでは、“タイムアライメント”の数値を大幅に動かすことはありません。取り付けが正確であれば、実測した値から大きく変わることはないはずです。万が一大きく動かさなくてはならない場合には、取り付け上の問題を疑ってみるようにしています」

■ツィーターの“タイムアライメント”調整は、タイプと、取り付け方によって変わってくる。

基礎チューニングの解説を、さらに続けてもらった。

「その次には、ミッドウーファーをミュートしてツィーターだけを鳴らし、左右のツィーター間の調整を行います。先ほど合わせたセンターイメージの場所と同じタテのライン上にセンターイメージが来るように微調整していきます。

なお、ツィーターのタイプと取り付け角度によって、微調整の仕方が変わってきます。指向性が強いタイプのツィーターをリスナーに正対させて取り付けた場合には、“タイムアライメント”の数値はほとんど動かさなくてもいいはずです。“音量”だけを整えれば、センターに定位するはずです。逆に、指向性の弱いタイプのツィーターを中央に向けて取り付けるときには、“タイムアライメント”の微調整幅は、やや大きくなると思います。

そしてツィーター間の調整がすんだら、フロントの4つのスピーカーをすべて鳴らして、センターイメージの高さを整えていきます。

ここからは細かく調整します。微調整を加えては、フロントスピーカーのすべて、左右のツィーターだけ、左右のミッドウーファーだけ、それぞれの音を確認し、追い込んでいきます」

■「測定機をかけて周波数特性の乱れを把握したら、まずは“クロスオーバー”で乱れを整える」

この次にはどのように進めていけばいいのだろうか。

「ここまで仕上がったら、当店ではプロ用の“RTA測定機”を使って、車内の周波数特性を測ります。当店で使っている機械は、バンド数を相当に細かく設定することができるのですが、“DSP”の“イコライザー”が31バンドであるならば、測定機も31バンドに設定して測ります。

測定すると、ピーク(音が盛り上がっている部分)やディップ(音が減衰している部分)がどこで起こっているのかが見えてきますが、それを“イコライザー”で調整する前に、当店ではまず、“クロスオーバー”を使って整えます。最終的には“イコライザー”を使うわけですが、“クロスオーバー”でできる限りを整えるべきだと、当店では考えています。

例えば、1kHzあたりにディップがあったとしたら、スロープを-18dB/octから-12dB/octに変えることでそれが解消されることもありますし、また、ツィーターとミッドウーファーの“クロスポイント”を離したり近づけたり、追い越させたりすることでも解消できるピークやディップもあります。

なお、最初にスピーカー自体の特性を測ってありますので、各スピーカーの鳴らせる範囲(使える範囲)は分かっていますから、調整はあくまでもその範囲内で行います。

そして、“クロスオーバー”でできる限りの調整をした上で、いよいよ“イコライザー”調整に入っていきます」

■「“イコライザー”調整は、下側から整えていくのが基本」

“サウンドカーペンター”ではプロ用の測定機を使って“イコライザー”調整を進めていくとのことなのだが、そのような機材を持っていない場合はどうすると良いのだろうか。

「その場合は、1/3オクターブ刻みの調整用信号を使うと良いと思います。可聴帯域の20Hzから20kHzを1/3オクターブで刻んでいくと31バンドとなるわけですが、それを1つ1つ聴きながら、センターイメージが中心にあるかどうか、そして変な鳴り方がしていないかを確認していきます。

調整信号の音を確認する際には、下側から確認するのがセオリーとなります。で、1つ1つ聴いていくと、ピークが出ているバンドでは、ハウリングを起こしたような聴こえ方になったりします。そのときにはそのバンドの“イコライザー”を下げてみてください。そして同時に、その周波数帯の1/2の周波数帯や1/3の周波数帯についても触ってみましょう。

そうすべきである理由は以下のとおりです。音は“基音”と“倍音”で成り立っています。例えば基音が200Hzの音があったとき、それに対して整数倍の音が倍音として乗っていきます。400Hz、600Hz、800Hzというように。で、もしも800Hzのところにピークがあったなら、そこよりも下の、“基音”と“倍音”の関係に当てはまる周波数帯のところに原因があったりするんです。基音部分が乱れていると、倍音成分が乱れることが往々にしてあるんですよ。

なので、“イコライザー”調整は下側から整えて行くことが基本となるんです。先に高域側を整えても、下を触ると上が変わってしまいますから。

そして当店では、“イコライザー”で特性を整えた後に、その音と“イコライザー”を使っていない状態の音とを聴き比べます。聴感上で確認すると、“イコライザー”を使わないときのほうが良く聴こえることもあるんです。そういうこともあり得ることも、頭に入れておくと良いと思います」

仲尾さんから教えていただいた内容は以上だ。今回も、参考になる話をたくさん訊くことができた。これを参考にいろいろと実践していただきたい。そうして操作することで音がどのように変わるのかを確認し、経験則を積み上げていこう。経験則が積み上がるほどに、サウンドチューニング能力は向上していく。ぜひぜひトライを♪

《太田祥三》

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