【メルセデスAMG GLC43クーペ 試乗】どえらいクルマに乗っているといった緊張感は皆無…齋藤聡 | Push on! Mycar-life

【メルセデスAMG GLC43クーペ 試乗】どえらいクルマに乗っているといった緊張感は皆無…齋藤聡

今回試乗した「AMG GLC43クーペ 4MATIC」は、まさに『Cクラス』のプラットフォームを採用したクロスオーバー(≒オンロードからオフロードまでカバーする)SUV。

自動車 試乗記
メルセデスAMG GLC43クーペ 4MATIC
  • メルセデスAMG GLC43クーペ 4MATIC
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いま世界的にSUVが人気を集めている。ブームというより一つの形としてSUVが定着したといっていいようだ。『Gクラス』のようなラダーフレームが姿を消しつつあり、代わって乗用車と同じようにモノコックフレームが採用されるようになってきた。そのため、操縦感覚は乗用車そのものと言ってよく、グッと乗り易くなったことが理由の一つに挙げられるのだと思う。

まあ、荷物がたっぷり積めて、車高が高い分走破性も高く、アイポイントが高いので視界も良い。それでいてセダンやハッチバックと変らない操縦性を備えているのだから、フォーマルさを重視しないのであればセダンと比べても劣るところはほとんどない。実際のところ、メルセデスベンツでもSUVのラインナップを充実させ、『GLA』『GLC』『GLE』『GLS』のモデルが用意されている。メルセデス・ベンツ日本(MBJ)の2017年登録構成比を見ると、SUVはセダン28%に次ぐ2位で、22%の販売割合となっている。

今回試乗した「AMG GLC43クーペ 4MATIC」は、まさに『Cクラス』のプラットフォームを採用したクロスオーバー(≒オンロードからオフロードまでカバーする)SUV。リヤハッチの傾斜をなだらかにしたクーペスタイルを採用したスタイリッシュなモデルだ。そのGLCクーペのなかでも、3リットルツインターボエンジンを搭載し、367馬力/520Nmを発揮するハイパフォーマンスモデルをドライブ。

最低地上高が180mmとさほど高くなく、フロントオーバーハングも長いので、アプローチアングルは19.9度、ディパーチャーアングル14.1度、ブレークオーバーアングル12.1度とSUVとしてはやや控えめな数値。また4WD(≒4MATIC)はほかのGLCと異なり前後31対69の不均等駆動トルク配分を持ったセンターデフ式を採用する。それだけオンロード寄りの味付けになっているということ。

ちなみに他のGLCモデルは前後駆動配分50対50のセンターデフ式だ。よりハイパフォーマンスなAMG GLC63 4MATICは多板クラッチを使った可変トルク配分式となっており、駆動トルク配分も50対50~0対100。

いずれにしても、GLC43 4MATICはかなり後ろ寄りの駆動配分を採用している。もっとも普通に走ってすぐに判るような差異はほとんどなく、乗り味はいたって普通。ただ、山道をちょっと速めに走らせているときはハンドルの効きがよく、かつカーブの立ち上がりでアクセルを踏んだとき、後輪をやや沈めながら路面を蹴って加速していくような仕草を見せる。あるいはABSを効かせるような急ブレーキをかけながらハンドルを左右に切った時の、ノーズの動きの良さ(≒フロントタイヤの曲がる方向へのグリップの余裕)といった場面にあらわれる。

実際に走らせてみても、すべてがカチッとしていて、アイポイントの高い操縦性のいいクーペといった感覚。シートの着座感も全くスポーティな乗用車的。乗り味については電子制御可変ダンパーを採用するAIRマティックサスペンションの効果も少なからずあるのだろう。ハンドル操作の微細なところにも遊びがなく、サスペンション回りの緩さもない。

装着しているタイヤもミシュラン ラティチュードスポーツ3というオンロード重視のハイパフォーマンスSUV用タイヤ。オンロード用タイヤを装着していないことや、最低地上高180mmあたりにオフロードへの未練(?)を少し感じるが、基本的にはオンロードでの快適性を主体にセッティングされている。東京湾アクアラインを、横風を受けながら走っているときの直進安定性の良さはまさに4WDの恩恵だし、風で微妙に左右に動きたがるボディをステアリングの微細な動きで抑えられるのはオンロードを重視した足回りセッティングの証左。

エンジンのパフォーマンスもAMG GLC43クーペの魅力の一つ。とはいえ、どえらいクルマに乗っているといった緊張感は皆無。367馬力/520Nmというパワースペックは、冷静に考えるとかなりいかつい数値だが、4つのタイヤで受け持つ4MATICなので、あっけないくらいあっさりとパワー&トルクを受け止めてくれる。急発進してもパワーに負けてタイヤがホイールスピンなんてことはない。そもそもパワー(トルクも)の出し方が比較的穏やかで、炸裂するような粗暴さがない。穏やかと言って語弊があるが、いつまでも背中を強く押し続けられているような途切れない加速感が、このクルマのパワー感をよく表している。

SUVの楽しさは、どこにでも走って行ける(ように思える)解放感を持っていることだろう。たとえ一度もオフロードに足を踏み入れることがなくても、それが可能な性能を持ったクルマに乗っていることが大切なのだ。そのワクワク感がSUV人気の一つの理由だろうと思う。AMG GLC4クーペ 4MATICはまさにその典型かもしれない。でもここまでオンロードを快適に気持ちよく走ってくれると、それで十分とさえ思えてくる。ちなみにこのクルマ、雪道に持っていくととてつもない走破性と操縦性を披露してくれるのだけれど…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

齋藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

《斎藤聡》

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