【アウディ RS4アバント 海外試乗】感動的にスムーズな“原点回帰”V6ツインターボ…山崎元裕 | Push on! Mycar-life

【アウディ RS4アバント 海外試乗】感動的にスムーズな“原点回帰”V6ツインターボ…山崎元裕

◆1993年・RS2アバントから受け継がれるコンセプト

自動車 試乗記
アウディ RS4アバント
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1993年・RS2アバントから受け継がれるコンセプト

『RSシリーズ』や『R8』といった高性能モデルの開発や生産を、ビジネスのひとつのコアとするアウディスポーツ社にとって、『RS4アバント』は、その前身であるクワトロ社の時代から、最も伝統的な、そして象徴的な存在として位置づけられてきたモデルだ。

そのヒストリーは1993年にポルシェとのコラボレーションで誕生した『RS2アバント』にまでさかのぼることが可能で、そのコンセプトは2000年に初代RS4アバントへと受け継がれた。その後ベースとなるA4アバントのモデルチェンジに伴い、一時的に生産が行われない期間はあったものの、2006年には2代目の、2012年には3代目のRS4アバントが登場。それらはドイツを代表する高性能ワゴンとして常に高い評価を得てきた。

そのRS4アバントが第4世代へと進化した。ベースとなるのは、もちろん最新のB9型アウディA4アバントであることは言うまでもない。

V6ツインターボへの「原点回帰」

そのワールドプレミアが行われた、2017年のIAA=フランクフルト・ショーでファースト・コンタクトは果たしていたものの、改めて12月にもかかわらず、強い太陽光が降り注ぐ南スペインのマラガで対面した新型RS4アバントは、その時よりもさらに魅力的なデザインのワゴンに見えた。

アウディスポーツによれば、かつてアメリカで活躍したレースマシン、「アウディ90クワトロ IMSA GTO」からインスピレーションを得たディテールを、さまざまなパートで効果的に採り入れたというRS4アバント。ハニカムデザインの大型エアインテークが採用されたフロントマスク、30mmワイド化されたフェンダー、そしてリアデフューザーやルーフスポイラーなどによって、そもそもシャープなライン構成で端正な雰囲気を醸し出していたエクステリアデザインは、速さを直感させるさらに魅力的な姿を見せることになった。前後のホイールは19インチ径が標準だが、試乗車にはオプションの20インチ径が装着されており、それもまたRS4アバントに備わるフットワークの力強さを、見る者に強く印象づける。

今回のフルモデルチェンジでの最大のトピックスは、搭載エンジンが、これまで2世代にわたって採用されてきた4.2リットルのV型8気筒自然吸気から、新たに2.9リットルのV型6気筒ツインターボへと変更されたこと。ちなみに初代RS4アバントには、2.7リットルのV型6気筒ツインターボエンジンが搭載されていたから、今回のフルモデルチェンジでRS4アバントは原点回帰を果たした、と表現することもできるのだろう。

組み合わせられるミッションはトルクコンバーター方式の8速AT。駆動方式はもちろんクワトロシステムによる4WDで、RSダイナミックパッケージがオプション装着された試乗車には、さらにリアにスポーツデファレンシャルも装備される。

ドライバーが簡単なスイッチ操作で走行モードをチョイスできる、アウディ・ドライブセレクトで、まずは「オート」モードを選択してRS4アバントのドライブをスタートさせた。このモードは走行状況に応じて、パワートレーンやサスペンションなどを、自動的にベストな制御へと切り替えてくれるもの。ほかには「コンフォート」、「ダイナミック」、「インディビジュアル」の各モードが選択可能となっている。

感動的なまでにスムーズなパワートレイン

RSのロゴがあしらわれた専用のスポーツシートに身を委ね、さっそく新型RS4アバントのパフォーマンスを楽しむことにした。

450psの最高出力と600Nmの最大トルクを発揮するV6ツインターボエンジンの動きは、感動的なまでにスムーズだ。1900~5000rpmまでのレンジで、最大トルクは完全フラットに発揮されるから、どのような速度域からでもアクセルペダルを踏み込むだけで、RS4アバントは瞬時に加速体勢を整える。8速ATのシフト制御も素晴らしく、それがRS4アバントの走りに独特な高級感を生み出していることに気づく。さらにドライバーはパドルでこの8速ATをマニュアルシフトすることもできるのだが、その機能を使う必要性を感じさせないほどに、アクセルペダルに込めた意思を正確に、そして瞬時に理解してくれるミッションだ。

マラガの市内を抜け、ワインディングロードへと入ったのを見極めて、ドライブモードをダイナミックへとスイッチすると、RS4アバントはさらに官能的なエグゾーストノートを響かせるようになった。同時に前後のサスペンションの制御もスポーティーなフィーリングに変化し、ステアリングの手応えもよりしっかりとしたものに変わる。コーナリングを続ける中でとりわけ印象的だったのは、このステアリングの正確さだった。ロールは量、スピードともに絶妙にチューニングされ、なおかつ十分に快適な乗り心地も演出されていることに驚く。ただしリアシートでは、どのモードを選んでも走行中の上下動がやや大きめに感じられたことは、今回の試乗で感じた数少ない不満だった。

リアにスポーツデファレンシャルを備える駆動システムの制御も、ライバルに対しての絶対的なアドバンテージとなるだろう。とりわけタイトなコーナーが連続するようなシチュエーションでは、この巧みな制御の恩恵を強く感じる。試乗ルートの途中には制限速度こそ低いものの高速道路も含まれていたが、ここでもエアロダイナミクスとともに、そのスタビリティを魅力的なものにしている理由が駆動システムにあることは十分に理解できた。

0-100km/h加速を4.1秒でこなし、最高速では280km/hを可能にする(RSダイナミックパッケージ装着車)、新型RS4アバント。一方で燃費は先代比で17%改善し、8.8リットル/100kmを達成。さらにベースのA4アバントが持つ、ワゴンとしての高い機能性はそのまま継承されていることも忘れてはならない。

こういうコンセプトのスポーツカーがあってもいいな。試乗を終えて、素直にそう思えた一台だった。

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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