2016年より、本格的に日本再上陸を果たし、攻勢を続けているドイツの実力ブランド「rainbow」。そのニューデモカーの音を確認すべく、『ACG2016 WORLD FINA』の開催当日、会場である東京・お台場を訪ねた。
日本で手にすることができる「rainbow」製品中の最上級ユニットでシステムが構成されているという、そのデモカー。ベース車両は、「VW・Golf」だ。
これまで、「rainbow」製品を聴く機会は幾度となくあったのだが実は、スピーカーのトップエンドシリーズ、『Profi Line』だけは、テストの機会に恵まれていなかった。しかしこの「VW・Golf」を聴けば、フル「rainbow」による最高のサウンドを、車載状態でチェックできる。
さて、今もっとも勢いのあるヨーロピアン・ブランドの1つ「rainbow」の、真の実力はどのレベルにあるのか…。じっくりとリポートしていく。
ハイグレードスピーカーで、“2ウェイ+サブウーファー”システムを構成。
まずは「VW・Golf」に搭載されているシステムレイアウトからご紹介していく。
核となるのは、プロセッサーである『DSP1.8 + WiFi Module』(税抜価格:15万円)。当機はスマートフォンやタブレットとWi-Fiで繋がることをストロングポイントの1つとしている。であるので、テストにおいては、手持ちのiPhoneをソースユニットとして使用した。
スピーカーレイアウトは、フロント2ウェイ+サブウーファーというスタンダードなもの。そしてそこで使われているスピーカーそれぞれが、トップエンドシリーズ『Profi Line』の面々だ。
なお、同シリーズでは、コンポーネントキットは用意されていない。トゥイーターが1機種、ミッドレンジが1機種、そしてミッドウーファーが2機種、さらにはサブウーファーが1機種、計5アイテムが単品(サブウーファー以外はペア)でラインナップしている。
当デモカーにはその中から、以下のユニットが採用されていた。『PL-T28 SET』(トゥイーター、税抜価格:15万円)、『PL-W6C SET』(ミッドウーファー、税抜価格:15万円)、『PL-S10』(サブウーファー、税抜価格:15万円)という顔ぶれだ。
ミッドウーファーの『PL-W6C SET』は、2機種あるミッドウーファーの内の、ハイグレードモデル。とはいいつつ、2つのミッドウーファーの価格差はわずかに1万円であり、基本的なスペックもほぼ同等だ。しかし、見た目の違いはひと目でわかる。『PL-W6P SET』は、“アルミニウムフェイズプラグ”を特徴としていて、デモカーで使われている『PL-W6C SET』は、“アルミニウムクリスタルロックコーン”を特徴としている。
サウンドの傾向としては、前者は中~高域の明瞭度に特長があり、後者では、低域のエネルギー感に特長がある、とのことだ。
パワーアンプは、フロント2ウェイをマルチ駆動すべく、4chアンプである『Germanium Four』(税抜価格:12万円)と、サブウーファー用のアンプとしてモノchモデルである『Germanium One』(税抜価格:12万円)が、それぞれ1台ずつ使用されていた。
立体感の再現性が高く、音色のリアルさも好印象。
まずはiPhoneをライトニングケーブルでつないでの試聴から行った。いつものテスト音源が入っている、筆者個人のiPhoneである。
その中には、『DSP1.8 + WiFi Module』を操作するための専用アプリもダウンロードずみだ。しかしながら、選曲やトラック送り等の操作は、iPhone内のミュージックアプリでも行える。プロセッサーとiPhoneのペアリングさえすめば、専用アプリは必ずしも使わなくても良いのだ。
かくしていつもの試聴トラックを呼び出し、再生ボタンをクリックすると…。
最初の出音でまず感じたことは、サウンドステージの立体感だった。ギターのイントロが流れた後、ボーカルが入ってきた瞬間に、ボーカルの音像がすっと前に現れた。2者の音が混濁することもなく、それぞれがそれぞれの位置にあることを、実にすんなりとイメージできる。そこから楽器の種類が増えていくに従っても、常に、各楽器の立ち位置が如実にわかった。
ちなみに、「rainbow」の各製品を試聴室で聴くときにはいつも、音色の色ツヤに引き込まれる。独特の色気があり、そこが魅力の1つだと常々感じていた。
しかしこのクルマではむしろ、正確性を強く感じた。あくまでも正当的なHi-Fiサウンドが目の前に広がっていたのだ。そしてリアルさも強く感じる。音色のリアルさ、実在感、ステージの再現性、それぞれの実現性が高い。
各ユニットのポテンシャルが高いがゆえだろう。高解像度で、情報量が多いので、音色的な特長よりも、リアルさが強まったものと思われる。価格的には、至って普通のハイエンドスピーカーだ。パワーアンプにおいては、むしろお手軽なクラスに属している。にもかかわらず、システム全体の総合力は、なかなかの高さだ。まっとうな、本格的なHi-Fiサウンドが堪能できた。
Wi-Fi接続時の快適な操作感に、感心しきり…。
ひととおり試聴トラックを聴いたあと、今度はWi-Fi接続で同じ曲を聴いていった。
まず、有線、ワイヤレスの違いによる、音質の優劣は感じ取れるレベルでは存在していなかった。どちらも良い音だ。厳密なことをいえば、仕様違いによる音質差はあってしかるべきではあるが、ともに高音質で再生できているので、どちらかを“劣っている”と感じることはない。
印象的だったのは、音よりもむしろ、操作性だ。iPhoneのミュージックアプリを、ヘッドフォンで聴いているときと同じように操作すれば良いのだ。iPhone本体サイドの音量調整ボタンを操作して、カーオーディオのボリュームを変えることもできる。
ワイヤレスの状態で、普段と同じ操作でカーオーディオを操れることに、新鮮な驚きを覚えた。とても便利だ。
普通、iPhoneをカーオーディオとデジタル接続すると、iPhoneのアンプを通らないでシステムに信号が送られるわけなので、ボリューム操作はiPhone側ではできなくなる。ちなみにWi-Fi接続時もデジタル接続だ。しかしこのプロセッサーを使っているときは、iPhone側は操作機(リモコン)としても機能するのである。
この独特の操作感、利便性だけでも、このプロセッサーを選ぶ理由になりえる。そう思えるほど、快適に試聴を進めることができた。
「rainbow」のトップエンドスピーカーの実力と、『DSP1.8 + WiFi Module』の使い心地をたっぷり味わえる「rainbow」デモカー「VW・Golf」。このクルマには、「rainbow」の魅力が詰まっている。どこかのイベントや試聴会で見かけたら、ぜひぜひ試聴の列に並んでいただきたい。ジャーマンブランド「rainbow」の魅力と実力を、じっくりと体感してみよう。