【ゴルフGTI 40周年】受継がれる「GTI」の魂…歴代モデルとその時代背景をふり返る | Push on! Mycar-life

【ゴルフGTI 40周年】受継がれる「GTI」の魂…歴代モデルとその時代背景をふり返る

初代ゴルフGTIは110馬力の1.6リットルエンジンを搭載したモデル。日本には正規輸入が行われなかったが、ヨーロッパでの人気は非常に高く、GTIファンを獲得するとともにフォルクスワーゲンの技術力を大きくアピールした。

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VW ゴルフGTI の登場40周年を記念する特別モデル「クラブスポーツ」
  • VW ゴルフGTI の登場40周年を記念する特別モデル「クラブスポーツ」
  • VW ゴルフGTI クラブスポーツと初代ゴルフGTI
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  • VW ゴルフGTI 初代
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1975年に初代誕生

フォクスワーゲン・ゴルフのスポーツモデル「GTI」が生まれて40周年を迎えた。

1973年の第四次中東戦争に端を発する第一石油ショックの影響で、この時期の世界経済は壊滅的な状況となっていた。ニュルブルクリンク24時間レースは74年、75年と連続して中止。日本でもワークスチームのレース活動が休止するなど、石油依存度の高い自動車業界は冬の時代であった。

そうした真冬の待っただ中の1974年にフォルクスワーゲン『ゴルフ』は登場した。ゴルフは「ビートル」の後継車であり、効率を追求したコンパクトカー。オイルショックのなかにあって登場したのはじつにタイムリーで、時代に則したクルマであった。ところがその翌年の1975年にフォルクスワーゲンは『ゴルフGTI』というスポーツモデルを発表。1976年より市場投入する。日本では昭和50年排出ガス規制が開始され、数多くのスポーツカーが骨抜きにされた時期だ。

ここにゴルフGTIの心意気がある。大きなエンジンを積んで、大排気量のパワーに頼るスポーツモデルではなく、小さなエンジンの効率を向上し、なおかつスポーティなものという考え方だ。初代ゴルフGTIは110馬力の1.6リットルエンジンを搭載したモデル。日本には正規輸入が行われなかったが、ヨーロッパでの人気は非常に高く、GTIファンを獲得するとともにフォルクスワーゲンの技術力を大きくアピールした。

◆日本でも存在感を高めた2代目

2代目のゴルフGTIが登場するまでには10年の月日がかかった。2代目ゴルフGTIのデビューは1984年。輸入は85年から行われた。時代、とくに日本の時代は大きく変化。9月にはニューヨークでG5がプラザ合意となり、日本はバブル景気に突入する。夜の街にはフェラーリやランボルギーニが普通に出現し、BMW 3シリーズが“六本木のカローラ”と揶揄されたこの時代。ゴルフGTIは普通に買いやすい輸入車、外車入門用として大歓迎された。

その気軽さから多くのGTIがさまざまなユーザーの手に渡った。このことがGTIの存在感の大きさと、そのポテンシャルの高さを世に広めることとなった。2代目のゴルフGTIは1.8リットルの排気量で、OHC-8バルブの弁駆動方式が当初輸入された。こちらのパワースペックは105馬力/15.2kgm。すぐに弁駆動はDOHC-16バルブに改められ、パワースペックは125馬力/17.1kgmとなった。

3代目ゴルフGTIは1991年に現地で発表され、日本へは93年から導入される。すでにバブルははじけていたが、その余韻はまだ色濃く残り、皇太子のご成婚などもあり、世の中は明るい雰囲気にあふれていた。それまでの角張ったボディから丸みを帯びたボディとなったゴルフに用意されたGTIはエンジンの排気量を2リットルにアップ。パワースペックは145馬力/18.3kgmとなった。このゴルフ3にはGTIよりもさらにパワフルなモデルVR6も導入されたが、GTIの人気は相変わらず高いものであった。

4代目ゴルフGTIが日本に導入されたのは1998年。長野オリンピックが開催、映画タイタニックが大ヒットを飛ばしたこの年に登場したゴルフGTIは史上初となるターボエンジンを搭載する。排気量は2リットルから1.8リットルに減少。つまり早くもダウンサイジングターボの傾向が見られる。パワースペックは150馬力/21.4kgmとなった。注目すべきは4速ATという2ペダルモデルが導入されたこと。日本でも1991年からAT免許制度が始まっていただけに、この2ペダルモデル導入はゴルフGTIの普及に大きく寄与したはずだ。

◆受継がれる魂

第5世代のゴルフGTIは2005年の日本へ導入された。ゴルフV(ファイブ)最大のトピックはガソリン直噴エンジンのTSIを採用したことと、デュアルクラッチ式のギヤボックスDSGを採用しシーケンシャルシフトを可能としたこと。京都議定書の発効、愛・地球博が愛知県で開催、クールビズのスタートなど環境問題がクローズアップされる時代であった。パワースペックは200馬力/28.6kgmで、ついに200馬力を突破。排気量は2リットルだったのでリッター100馬力エンジンとなった。

さて、時代はかなり現在に近づく。6代目ゴルフGTIは2009年に日本に導入された。こうやって歴史をなぞると、モデルチェンジサイクルがだんだんと短くなっていることがわかる。2009年といえば、総選挙で民主党(当時)が圧勝し、政権交代が行われた年だ。6代目ゴルフは5代目同様に直噴ターボの2リットル。パワースペックは211馬力/28.6kgm。2009年、およそ35年の月日を経てエンジンの出力は2倍以上へとパワーアップしている。

現行のゴルフGTIは2013年の9月に登場した。2リットル直噴ターボのままで、エンジン出力は220馬力、最大トルクは35.7kgmにまで高められた。組み合わされるミッションは「DSG」のみでスタートしたが、のちに6速MTを追加設定した。また、GTI登場から40年を記念して『ゴルフGTIクラブスポーツ・トラックエディション』を設定。パワースペックは265馬力/35.7kgmを発生するが、条件が合うときには10秒だけ290馬力/28.7kgmにパワーアップするブーストモードも備える。その後、『ゴルフGTIクラブスポーツ・ストリートエディション』も発売されたが、エンジンのスペックは同様だ。

40年の月日を経て、3倍ちかくものパワーを手に入れたゴルフGTIだが、小排気量エンジンの効率を最大限に活かした軽量スポーツハッチ、というコンセプトは今も変わらない。そしてその魂は、よりコンパクトな『ポロ』や、プラグインハイブリッドの「GTEシリーズ」にも継承されている。その唯一無二のアイデンティティ、そしてそれに魅せられたファンもまた脈々と受け継がれていくに違いない。

《諸星陽一》

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