やっぱりいつかは“フロント3ウェイ”…!? その利点とシステム構築のポイントを、徹底検証!! 前編「メリット分析」 | Push on! Mycar-life

やっぱりいつかは“フロント3ウェイ”…!? その利点とシステム構築のポイントを、徹底検証!! 前編「メリット分析」

サウンドコンペの上級クラスへの参加車両を見ると、“フロント3ウェイ”システムの採用率が高いことに気が付く。高音質を突き詰めると“フロント3ウェイ”システムに行き着く、ということなのだろうか…。

カーオーディオ カーオーディオ特集記事
3ウェイシステムでの、トゥイーターとミッドレンジスピーカーの装着例(by オートステーションK2)。

サウンドコンペの上級クラスへの参加車両を見ると、“フロント3ウェイ”システムの採用率が高いことに気が付く。高音質を突き詰めると“フロント3ウェイ”システムに行き着く、ということなのだろうか…。

当企画では、そこのところを検証しつつ、さらには賢い“フロント3ウェイ”の構築法までをご紹介していこうと思う。今日と明日の2回に渡ってお届けする。まず今回は、“フロント3ウェイ”のメリットについて、改めて深く検証していく。

■“フロント2ウェイ”のミッドウーファーには、多大な負荷がかかっている…。

ところで、スピーカーには、フルレンジスピーカーとマルチウェイスピーカーとがある。そのフルレンジスピーカーは、ある意味においてスピーカーとして理想的な特長を持っている。それは、音の出所が1つであるのでステレオイメージを正確に再現しやすい、というものである。ステレオ再生が正しく行われればスピーカーの存在感は消えるのだが、左右それぞれ音の出どころが1か所であれば、その状況を作りやすいのである。

しかしながら、理想的なフルレンジスピーカーを作ることはなかなか難しい…。それは、口径に応じて再生帯域の得意・不得意が出てくるから、である。口径の大きなスピーカーは低音を再生するのが得意だが、高音の再生は苦手だ。反対に、口径の小さなスピーカーは、高音の再生は得意だが、低音の再生は苦手だ。であるので、担当範囲を分け、それぞれのユニットに得意な仕事だけを担当させようとする、マルチウェイスピーカーが存在している、というわけなのである。

さて、カーオーディオにおけるマルチウェイスピーカーの基本形は、“フロント2ウェイ+サブウーファー”というスピーカーレイアウトだ。ドアには基本的に、口径的にはせいぜい17cmくらいのものまでしか装着できない。なので、まず重低音の再生をサブウーファーに任す。具体的に言えば、80Hzから60Hzくらいがその境目になるだろう。それ以上を、“フロント2ウェイ”スピーカーに任せる、といういう形を取るわけだ。

しかしながら、“フロント2ウェイ”には限界もある。2ウェイにしたところでも、ドアのスピーカー(ミッドウーファー)の担当範囲がかなり広くなっているからだ。下限を仮に80Hzとしたとして、上限はどうだろう、多くの場合は4から5kHz前後くらいに設定されることになるだろうか。もしも5kHzだとしたら、80Hzから5kHzの範囲は、音域でいうと約6オクターブ分である。人間の可聴帯域とされる20Hzから20kHzの範囲は約10オクターブだ。サブウーファーの80Hzまでが約2オクターブ。そしてトゥイーターは残りの約3オクターブを担当することとなるのに対して、ミッドウーファーはそれらの倍くらいの範囲を受け持たなければならないのである。負荷は相当に大きい。

しかし、“フロント3ウェイ”にすれば状況は一気に好転する。ミッドウーファーの負担を大幅に軽減させることが可能となるのだ。

■カーオーディオならではの、“フロント3ウェイ”の利点とは…。

そして、カーオーディオにおける“フロント3ウェイ”の利点は、もう1つある。それは、中音域を、目の前のスピーカーから聴けることによってもたらされる。そうなることで、中音域の情報量が上がり、かつ、解像度も上昇するのである。

対して“フロント2ウェイ”では、中音域までをドアのスピーカーから出している。中音域には、音楽の美味しいところが凝縮している。しかしそれを足元のスピーカーで聴くという状況は、結構厳しい状況と言わざるを得ない。上から聴こえてくれば音像も上げやすくなるし、より正対しているスピーカーから聴ければ、直接音を多く聴けることにもなり、ロスなく情報を感じ取ることができるのだが…。

また、“フロント2ウェイ”では、以下のような弊害も発生する。それは、中音と低音で聴こえ方が異なり、定位がぼやけがちになる、というものである。

低音は指向性が弱いので、聴こえ方はスピーカーの向きによってはそれほど大きくは変わらない。近いか遠いかが問題となり、近い側のスピーカーからの音をより強く感じることとなる。しかし中音は指向性が強い。となると、近いか遠いかよりもむしろ、正対しているかしていないか、ということのほうが聴こえ方に及ぼす影響が大きくなる。ドライバーに近い側のミッドウーファーは、ドライバーから見て、明後日のほうを向いた状態だ。しかし遠い側のスピーカーは、より正対している状態に近い。結果、振動板から発せられた音が真っ直ぐ飛んでくる分量が多くなり、遠いところにあるにも関わらず、そちらからの音を強く感じることとなるのだ。

その違いを、チューニングで補正しようとするのだが、これがなかなかに難しい。あちらを立てればこちらが立たない、というジレンマの中で、ベストな状況を作り出すことが、なかなかできないのである。微妙な定位のぼやけが、どうしても発生してしまうのである。

これについても、“フロント3ウェイ”とすることで、状況を一気に好転させることができるのである。

車室内環境においては、“フロント3ウェイ”の優位性は、相当に高いのだ。一般的な観点、カーオーディオ特有の観点、両方において、“フロント3ウェイ”にはメリットが多大にある。

さて次回は、メリットが大きい“フロント3ウェイ”を楽しむためのコツを、全方位的にご紹介していこうと思う。明日の続編を、乞うご期待。

《太田祥三》

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