“パッシブ”か“アクティブ”か、“2ウェイ”か“3ウェイ”か。フロントスピーカーの『鳴らし方』大研究! Part.1「パッシブ」 | Push on! Mycar-life

“パッシブ”か“アクティブ”か、“2ウェイ”か“3ウェイ”か。フロントスピーカーの『鳴らし方』大研究! Part.1「パッシブ」

フロントスピーカーの“鳴らし方”には、いくつかの選択肢がある。それはつまり、どのようなシステムレイアウトにするのか、というなかなかに大きな問題であり、かつ、奥の深いテーマでもある。それについて改めて整理し、それぞれの特徴・利点・楽しみ方を考察していく。

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フロントスピーカーの“鳴らし方”には、いくつかの選択肢がある。それはつまり、どのようなシステムレイアウトにするのか、というなかなかに大きな問題であり、かつ、奥の深いテーマでもある。それについて改めて整理し、それぞれの特徴・利点・楽しみ方を考察していく。

第1回目となる当回では、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使ったスピーカーの“鳴らし方”について考えていく。

■“パッシブ”を使うアプローチは、カーオーディオの基本スタイル。

“パッシブクロスオーバーネットワーク”とは、パワーアンプの後段で音楽信号の帯域分割を行う装置である。それに対して、パワーアンプの前で帯域分割を行うものは、“アクティブクロスオーバーネットワーク”と呼ばれている。

さて、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使うシステムは、カーオーディオにおいてのもっとも基本的なシステムと言っていい。帯域分割をパワーアンプの前段で行う場合は、フロント2ウェイスピーカーを鳴らすためには4ch分のパワーアンプが必要となるが、パワーアンプの後段で帯域分割を行うのであれば、アンプのch数は2chあればこと足りる。合理的にシステムを構成できるのだ。

これが、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使ってスピーカーを鳴らすときの、最大のメリットだ。パワーアンプにかける予算が少なくてすむのである。これは同時に、2chに集中的に予算がかけられる、ということでもある。10万円の4chアンプと、10万円の2chアンプがあったとしたら、後者は1ch当たりの価格が倍。その分、質も上がるのである。

また、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使うシステムは、「スピーカー開発者の意図を忠実に再現できる」という特長も持っている。カットオフ周波数をどこにするか等々も含めてスピーカーは開発されている。どのようにクロスさせるとそのスピーカーがベストパフォーマンスを発揮できるのか、そこのところも考え尽くされてスピーカーは設計されているのだ。つまり、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を介して鳴らした音が、そのスピーカーのそもそもの音なのである。

しかし、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使うシステムには、不利な要素も存在している。それは、「コントロールに限界がある」というものだ。

車室内環境は、正しいステレオイメージを再現するのに、条件があまりよろしくない。左右のスピーカーから等距離の場所にリスニングポジションを取れないこと、各スピーカーユニットの取り付け位置・角度がバラバラなこと、反射や吸収の影響が大きいことなどが、具体的な欠点だ。

それらに対処しようとするのなら、“アクティブクロスオーバーネットワーク”を用いたシステムを構築したほうが有利なのだ(その詳細は次回に解説する)。

■“パッシブ”を使ったスペシャルな“鳴らし方”もある。

ただし、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使ったシステムでも、詳細なコントロールを効かせることは可能だ。やり方は2つある。

1つは“バイアンプ”対応の“パッシブクロスオーバーネットワーク”を活用する方法だ。通常の“パッシブクロスオーバーネットワーク”では、入力は1系統だけなのだが、“バイアンプ”対応であれば、入力が2系統備えられている。そうであったなら、トゥイーター用とミッドウーファー用それぞれにパワーアンプのchを用意し、クロスオーバー以外のコントロール(タイムアライメントやイコライザー)をパワーアンプの前段に行い、クロスオーバーだけをパワーアンプの後段で行う、というシステムを構築することが可能となる。

メインユニットが簡易的なタイムアライメントを搭載しているとき、この方法は特に力を発揮する。リアchをバイアンプ対応パッシブのトゥイーター入力に接続し、フロントchをミッドウーファー入力に接続することで、フロントスピーカーを詳細にコントロールすることが可能になるのだ。

なお、“バイアンプ”対応の“パッシブクロスオーバーネットワーク”ならば、“バイワイヤリング”接続も可能だ。アンプは2chのままで、しかしそれぞれのchから2系統のスピーカーケーブルを引き回し、それぞれをネットワークのトゥイーター用入力端子、ミッドウーファー用の入力端子に接続する。これを行うだけでも、1ランクスピーカーの性能が上がったような音質向上効果が得られるはずだ。お使いのスピーカーに付属のクロスオーバーが“バイアンプ対応”だったら、試す価値は大いにある。

もう1つ、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使いながらも、詳細なサウンドコントロールが可能となる手段が存在している。それは、『ダイヤトーン・サウンドナビ』を使う、というものだ。

『ダイヤトーン・サウンドナビ』には、“マルチウェイタイムアライメント”という機能が搭載されている。この機能を使うと、実際のクロスオーバーは“パッシブクロスオーバーネットワーク”で行うものの、トゥイーター帯域とミッドウーファー帯域のそれぞれに、タイムアライメントをかけることが可能となるのだ。この画期的な機能を使えば、“パッシブ”のメリットを活かし、デメリットを消せるのである。

以上が、“パッシブクロスオーバーネットワーク”を使うフロントスピーカーの“鳴らし方”の、利点・特徴・楽しみ方のすべてだ。基本のスタイルであり、かつ奥深いアプローチであることがお分かりいただけただろうか。

さて次回は、“アクティブクロスオーバーネットワーク”を使うフロントスピーカーの“鳴らし方”について解説していく。次回もお読みいただけたら幸いだ。

《太田祥三》

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