【カーオーディオ逸品名鑑】プレミアム・カーオーディオブランド『BEWITH』の 一時代を築いた名機たち 02 PROCESSOR編 | Push on! Mycar-life

【カーオーディオ逸品名鑑】プレミアム・カーオーディオブランド『BEWITH』の 一時代を築いた名機たち 02 PROCESSOR編

ハイエンド・カーオーディオブランド『BEWITH』をフィーチャーしている。独自性の高い同社の製品を見ながら、カーオーディオの奥深さ、面白さをご紹介していく。

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Mirror Station AZ-1
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ハイエンド・カーオーディオブランド『BEWITH』をフィーチャーしている。独自性の高い同社の製品を見ながら、カーオーディオの奥深さ、面白さをご紹介していく。

今週は、同社の“プロセッサー”について掘り下げてみたい。“プロセッサー”とは何なのか。そして『BEWITH』のそれは他とどう違っているのかを紐解いていく。

まずは、“プロセッサー”についての説明から入ろう。ひと言でいうならこれは、「サウンドチューニング」を行うための機器である。

“プロセッサー”は、現代のHi-Fiカーオーディオにおけるマストアイテムの1つだ。車室内はリスニング環境としてコンディションが悪い。それを是正する必要があるのだ。“プロセッサー”はそれを可能とする。是正したいポイントは以下の2点。

1つ目は、「左右のスピーカーから等距離の場所にリスニングポジションを取れない」こと。左右2本のスピーカーで音楽を再生し、それによりサウンドステージを立体的に感じ取ろうとする“ステレオ”の原理から言うと、リスニングポジションが片側に寄っていることは致命的な状況である。これに対しては、近いスピーカーから発せられる音に遅延をかけることで対策する。

2つ目は、「車室内の音響特性が劣悪である」こと。音楽を再生させるやいなや、音がガラスやパネルに反射し、あるいはシート等に吸収され、いとも簡単に特性の乱れが引き起こされる。これに対しては、“プロセッサー”内のイコライザー機能を使って対処する(その他、クロスオーバー調整、レベル調整も駆使する)。

さて、『BEWITH』である。『BEWITH』が初めて自社製品を世に送り出したのは、2002年。世界初のオール偏芯コーン方式による高級2ウェイスピーカーシステム「Confidence(コンフィデンス)」をリリースして業界をあっと言わせた。そしてその後、パワーアンプ、ソースユニットを順次発表し、初の“プロセッサー”を発売したのは2007年の10月だ。この時に発表された製品は、デジタルプロセッサー DA コンバーター「Mirror Station AZ-1」である。

この「Mirror Station AZ-1」はそれまでの『BEWITH』製品と同様に、衝撃的なデビューを飾る。その理由は以下だ。「あまりにも高価であること」、そして「あまりにも高音質であること」。価格はなんと80万円。当時、同社のソースユニット「Mirror Media MM-1」が20万円で、これでも十分に高価だと思われていたところに、その4倍となるスーパーハイエンドなユニットを登場させたのだ。

しかし、デモカーの音を聴いた人たちはすべて、その性能を認めた。乗り込みデモ音源が鳴り始めると、リアルなサウンドステージが眼前に広がるのだ。演奏者、シンガーがすぐそこにいるかのような感覚…。

また「Mirror Station AZ-1」は『BEWITH』自身にとっても特別な意味を持つ製品だった。この登場により初めて、『BEWITH』製品だけで構築するシステムが完成できることとなったのだ。『BEWITH』はほぼ純度100%の『BEWITH』サウンドを、そして自社がどのような音を理想としているのかを、遂に世に示すことができたのだ。

そして…。

その3年後に『BEWITH』は、新たなコンセプトを持つ、ニュー“プロセッサー”を発表する。その名は「BEWITHSTATE」。この製品は「Mirror Station AZ-1」以上のインパクトを放った。またしても理由は2つ。

1つ目の理由は、コンセプトが斬新であるからだ。「買い換えではなく、買い足すことでシステムアップが可能」というのである。当初この意味をすんなりと理解できなかった人は少なくなかった。正直筆者も、最初はピンとこなかった。そこに隠されていた2つの狙いを聞いて初めて、新しさの意味が飲み込めた。

隠されていた狙いとは以下の2つだ。1つは「多chシステムへの対応」。実は「BEWITHSTATE」は、とあるプロジェクトにおけるキーユニットでもあったのだ。それは、メルセデス・ベンツの超高級グレード“マイバッハ”の日本仕様車に、フル・BEWITH・システムを特別装備する、というプロジェクトである。このモンスターマシンには、そもそも30個を超えるスピーカーが搭載されていた。『BEWITH』はこのスペシャルオーディオシステムにおいて、自社のフルシステムと純正システムを両立させ、それらすべてを完ぺきに制御することを目指した。そのためにはあり得ないほどの多chに対応可能な“プロセッサー”が必要だったのだ。

「BEWITHSTATE」は連結可能な“プロセッサー”だ。1台で6chを制御できるのだが、それを仮に10台連結すれば60chを制御可能となる。多ch化が進む超高級車システムへの対応も視野に入れて、「BEWITHSTATE」は開発されていたのである。

そして、「BEWITHSTATE」が目指すところのもう1点は、「完全なるチャンネルセパレーション」。“プロセッサー”を用いて緻密にサウンドチューニングを行うためには、「マルチアンプシステム」(それぞれのスピーカーにパワーアンプの1chずつをあてがうシステム)を組むことが前提となる。これにより各スピーカーを個別にコントロールできるようになるのだ。そしてこれによる究極的な結果を得ようと考えると、それぞれのchのセパレーションをどこまで厳密化できるかがポイントとなる。そのためには、“プロセッサー”においても、chごとに個別のユニットをあてがえたほうがいい。つまり、“買い足して”台数を増やし、そうすることでセパレーションを高めることができるのだ。

この考え方は、至極、理に叶った考え方である。しかしどのメーカーもそれを実践していなかった。目からウロコ的な新発想だったのである。

さて、「BEWITHSTATE」が大きなインパクトを放った2つ目の理由も解説しよう。それは、プロセッサーにおける音質性能決定のキモとなる重要パーツ、“オペアンプ”を新日本無線と共同でカーオーディオ用として求められるスペックを最適化されるよう開発し、それを基板に組み込んだから、である。

どんなハイエンドメーカーでも多くの電子部品をサプライヤーから調達する。厳選された高級パーツをおごられたハイエンド製品は多々あるものの、コンデンサーや抵抗といった受動部品以外を自社開発するオーディオ機器メーカーは皆無だ。 『BEWITH』はそこにも踏み込んだのだ。

そして、内部の重要パーツも自製することで『BEWITH』は、正真正銘の“純度100%”の自社サウンドを、メルセデス・ベンツ マイバッハで世に示した。

ところで「BEWITHSTATE」は1台でもフルシステムに対応できる。そして1台の価格は20万円。おいそれと買うことができなかった「Mirror Station AZ-1」の1/4の予算で『BEWITH』フルシステムを完結できる。この事実も大いにファンを喜ばせた。「BEWITHSTATE」はどこまでも理想を追い求めた製品でありながら、ユーザーフレンドリーな製品でもあったのだ。なんとも心憎い。

それから3年後の2013年11月「BEWITHSTATE」は、「STATE A6」に生まれ変わった。コンセプトを継承しながら内部構成を一新。筐体には、新開発の音響専用マグネシウム合金「MAGNEOLA」(マグネオラ)ボディも採用し、さらなる究極に向かって性能をブーストさせた。

このように『BEWITH』は、“プロセッサー”においても数々のトピックを紡ぎながら、多くの『BEWITH』フリークたちを歓喜させ、満足させてきた。

さて、次週は『BEWITH』の、パワーアンプについての歴史を紐解く。パワーアンプにおいても興味深いトピックが多々ある。次週もお読み逃しなく。

《太田祥三》

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