カーオーディオセオリー講座“ドアの音響学” #1: デッドニングとは何だ!? | Push on! Mycar-life

カーオーディオセオリー講座“ドアの音響学” #1: デッドニングとは何だ!?

今週からスタートする短期集中連載。カーオーディオの“理論”のあれこれを解説していきたいと思う。

カーオーディオ カーオーディオ特集記事
カーオーディオセオリー講座“ドアの音響学”

今週からスタートする短期集中連載。カーオーディオの“理論”のあれこれを解説していきたいと思う。

今回のシリーズ・テーマは『ドアの音響学』。カーオーディオのスピーカーはドアに取り付けて初めて完成品となるのだが、ただ取り付けただけではまだまだ不完全。ドア内部を、またはドアそのものの音響的コンディションを整えていく必要がある。そのあたりのメカニズムを整理して解説していく。カーオーディオを始めたばかりのユーザーは特に必読! より良い音を獲得するために、大いに参考にしてほしい♪

ところで、ホームオーディオのスピーカーは、エンクロージャーと呼ばれる箱にスピーカーユニットが取り付けられた状態で販売されている。あの箱にはどんな役目があるのだろうか。

もっとも大きな役目は、「スピーカーユニットのウラ側から発生している音を閉じ込める」こと。スピーカーは、振動板(コーン)を前後させて音を発している。スピーカーのウラ側でも同じことが起こっている。そして問題となるのは、それぞれの音の“位相”。乱暴に言ってしまうと“音波”もしくは“波形”。これが、前側の音とウラ側の音では逆。いわゆる“逆相”という状態になっているのだ。なぜなら、同じ瞬間に発せられる同じ音が、表側では振動板が前に出て、ウラ側では後に引っ込んで、というように、逆の動きから発生されるからだ。

逆相の音が混じり合うと、音の打ち消し合いが起こる。これを防ぐために、スピーカーユニットは箱に取り付けられているのである。

さらにいうと、箱の中の空気がダンパーの働きをしたり、ポートが付いたスピーカーではウラ側の音を反転させて表に出したり、箱はいくつかの役目を担っている。箱は重要な音響パーツなのである。


短期集中連載! カーオーディオ・セオリー講座『ドアの音響学』 #1: デッドニングとは何だ!?

さて、クルマのドアを考えてみよう。スピーカー自体は音響パーツだが、ドア自体にはほとんど音響的なテクノロジーは注入されていない。

だからこそ、“デッドニング”という作業が必要になるのだ。

ちなみに“デッド”とは、“響かない”という意味を持っている(逆の言葉は“ライブ”)。なので“デッドニング”とは“音を響かなくさせること”とイメージしがちだが、むしろ“サウンドチューニング”だと思ったほうがいい。ドア内部の余分な響き(振動)を抑えるという目的もあるのだが、そればかりではないのだ。

“デッドニング”で何が行われるのか順番に説明していこう。

01.音の回り込みの防止


STP・GOLD AERO

写真1:STP・GOLD AERO
ロシア発のアコースティックマテリアルブランド。こちらの「GOLD AERO」は、貼りやすく、かつ柔軟性があるので、鉄板の凹凸にも追従しやすく使いやすい。制振効果が高いので、車内のいろいろな場所に使える。サービスホールを塞ぐ作業にもおすすめだが、その場合は、より遮音性能の高い「NG PREMIUM」を重ねて貼るのがおすすめ。


STP・NG PREMIUM

写真2:STP・NG PREMIUM
断熱効果の高い特殊発泡PPE層と、接着剤層で形成され、高い遮音、断熱効果を発揮する。遮音に関しては、250Hz以上の中・高周波を遮断する効果を持っている。柔軟性が高く、さらに水を吸収しない特性があるので、ドア内部への施工に向いている。フロアや天井に使うのもおすすめ。吸音効果も高いので、車内の静粛性向上にも貢献。

ドア内部にはインナーパネルと呼ばれる鉄板が入っている(外側の鉄板がアウターパネル)。このインナーパネルには、サービスホールという穴が開いている。内部のメンテナンス用の穴だ。この穴により、ウラ側の音が表側に回り込むことになる。

というわけで、この穴を塞ぐ必要がある。写真1や2のような制振材を使ってこれを行う。

02.鉄板のビビリ止め(制振)


STP・BOMB AERO

写真3:STP・BOMB AERO
ブチルとアスファルト系樹脂、アルミの3層構造で形成された低音制振シート。250Hz以下の低音域に対して優れた制振、遮音、吸音性能を発揮する。効果が非常に高い反面、他と比べ施工は簡単ではない。ヒートガンや遠赤外線ヒーターで温めながら作業をする必要がある。

次なる必須作業は、“ビビリ止め”。スピーカーのウラ側から放出される音のエネルギーが、ドア内部の鉄板を共振させて異音を発生し音を濁らせる。これを防ぐ作業が“ビビリ止め”(制振)だ。スピーカー近くの平らな部分が特にビビリやすい。ビビリやすい場所にピンポイントに施工する方法から、ガチガチにインナーパネル全体に施工する方法まで、さまざまなアプローチがあるが、最近はある程度部分的に行うやり方のほうが一般的な印象。

これも“制振材”と呼ばれる部材を貼って対処する。写真3の製品は特に制振効果が高く、おすすめアイテムだ。

03.吸音・拡散


STP・CRYSTAL

写真4:STP・CRYSTAL
制振効果の高い接着剤層、発泡ウレタンを主成分とする層、さらに表面をプレス加工されたアルミ層からなる、3層構造の多機能なアコースティックレンズ。吸音効果が高く、表面の凹凸が音波を拡散させる効果を発揮するので、スピーカーのウラ側奥のアウターパネルに貼り、ウラ側の音をコントロールするのに最適。制振、遮音効果も持っているので、ビビリ止め効果も期待できる。

もう1つ、大事な作業がある。“吸音・拡散”、言い換えるなら、ウラ側の音をコントロールする作業。スピーカーのウラ側から出る音が鉄板をビビらせる、ということを02で説明したが、それを防ぐために音を吸ったり、拡散させたりするのである。さらには、鉄板で音が跳ね返り、跳ね返った音がスピーカーに戻って行くのを防止するという意味合いもある。跳ね返った音が振動板にあたると、動きにストレスを与えてしまうのだ。

この作業のためには、写真4のような部材が有効だ。この部材なら、吸音と拡散の両方の効果を得られる。しかし、吸音は上手にやらないといけない。音を吸い過ぎでしまうと、つまらない音になってしまうケースが多い。経験がものをいう作業なのである。

さて、“デッドニング”について理解していただけただろうか。

次週からは“バッフル”の役割についてレクチャーしていこうと思う。お楽しみに!

《太田祥三》

特集

関連ニュース

page top