サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #50: 第8章 オーディオを追求するにはお気に入りの音楽が必要だ…。“マイ・フェイバリット・オーディオ・チューン”について Part.2 | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #50: 第8章 オーディオを追求するにはお気に入りの音楽が必要だ…。“マイ・フェイバリット・オーディオ・チューン”について Part.2

#50:
第8章 オーディオを追求するにはお気に入りの音楽が必要だ…。“マイ・フェイバリット・オーディオ・チューン”について Part.2

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サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#50:
第8章 オーディオを追求するにはお気に入りの音楽が必要だ…。“マイ・フェイバリット・オーディオ・チューン”について Part.2


前回は、『装置と“お気に入りの音楽”との関係』について解説していただいた。オーディオは音楽を楽しむための装置。そして、“お気に入りの音楽”をいかに心地良く聴かせてくれるか…、これを追求するところに醍醐味がある、というお話だった。で、今週からは、松居さんにとっての“お気に入り”を具体的に紹介していただこうと思う。音楽、そしてオーディオとの向き合い方の、1つの参考にしていただけたら幸いだ。


前回の続きである。

個人的思い込みの世界にお付き合いいただくことに一抹の心苦しさを感じながら、この原稿を書いている。今回から、ぼくにとってのお気に入りの音楽を紹介させていただこうと思うのだ。

ところで実は、音楽を聴いているとき僕は、装置のコンディションについて意識がいってしまうことが度々ある。ピアノの調律師の方も多分同じで、ピアノ演奏を聴いていてもピアノの状態に意識がいってしまったりするのではないだろうか。それぞれ、仕事柄やむを得ないことだとは思うが、余計なことを考えてしまい、音楽に没入しにくいいやな職業である。

その一方で、何かにつけ聴きたくなり、飽きないレコードも存在していて、それらは大好きな映画や絵と同じで、細部まで覚える程繰り返し観・聴きしているのに、聴く毎に新しい印象が加わり、思い入れが深まる。

新しい装置をテストしていて「これは!」と思った装置と出会った時、それを自分のシステムに組み込み一人っきりで聴きたくなる、とっておきのレコード(CD)。

そんなレコードを1つあげろと言われたら、これだ。マイルス・デイビス・バンドの『カインド・オブ・ブルー』。

あまりにも有名なレコードなので、これについて詳しく説明する必要はないだろう。僕が生まれた頃に録音された作品で(1959年録音)、僕はこの作品を、音楽に目覚めた頃から30年以上にわたって聴き続けている。彫刻のような音楽だ。

完璧な建築、構図が完璧な絵と同じく完璧な音楽で、漂うようなハーモニー、順に登場するプレーヤーの絡みやコントラストが物語の奥行きを深くしている。1曲目は『ソー・ホワット』。ポール・チェンバースのベースとビル・エバンスのピアノの平行的な関係でスタート。マイルス、コルトレーン、キャノンボール・アダレイとソロが続く。そして、それぞれをサーポートしていたビルエバンスが最後に「それがどうした?(So What)」というソロをする。

その後へと物語は続いていくが、すべての曲が1話完結の短編なのだ。白黒映像で、“遠”も“近”もジャストにピントが合っている切れのある映像。そんなイメージだ。

この作品を聴くとき僕は、ジョン・コルトレーンのテナーサックスの彫りの深さや「硬さ」が表現出来ていて、ラストをどれくらいのバランスで描いているか。この部分には特にこだわりを持って注力して聴いている。そしてこのアルバムのストーリーを引き立てるために、全体を少し冷たくてクールな(カッコイイ)音で再現してほしいと思う。

ホームオーディオでは、マークレビンソン・LNP-2を初めて聴いた時、まさにその通りと思った。「シビレタ」のだ。

カーオーディオでは、ダイヤトーン・DS-SA1が「これだ!」と感じられたスピーカーだ。このマイルス・デイビス、ビル・エバンス、ジョン・コルトレーンといったモードjazzの雰囲気を、DS-SA1以上に描き切ることのできるスピーカーには、まだ巡り会っていない。

メタリックで少し冷たい音楽を、暖かい雰囲気の部屋で聴くのが好きだ。この『カインド・オブ・ブルー』、もし、まだ聴いたことがなくて、そしてこれからjazzを聴いてみたいと思っていたら、ぜひチェックしてみてほしい。これを聴いてどう感じるか、それを確かめてみるだけでも面白いと思う。

《松居邦彦》

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