サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #40: 第4章 ヘッドフォン、ホームオーディオ、カーオーディオ それぞれでの音楽の聴こえ方の違いとは…Part.4 | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #40: 第4章 ヘッドフォン、ホームオーディオ、カーオーディオ それぞれでの音楽の聴こえ方の違いとは…Part.4

#40:
第4章 ヘッドフォン、ホームオーディオ、カーオーディオ それぞれでの音楽の聴こえ方の違いとは…Part.4

カーオーディオ カーオーディオ特集記事
サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#40:
第4章 ヘッドフォン、ホームオーディオ、カーオーディオ それぞれでの音楽の聴こえ方の違いとは…Part.4


スピーカーがリアルに音楽を感じるための装置だ、というテーマで展開してきた当シリーズ。今回はまとめとして、そのリアルを感じるための環境としてカーオーディオにはどのようなメリット、デメリットがあるのか、ということを語っていただいた。じっくりとお読みいただきたい。


ヘッドフォンではなく、スピーカーで音楽を聴くほうがよりリアルを感じられる、ということを言いたくて始まった話の続きである。リアルを感じるための環境としてカーオーディオはどうなのかということを考察して、この話をまとめてみたいと思う。

さて。リアルを再現するということは、リアルと錯覚する環境を作り出すということである。そのためには聴くポジションが固定されているほうが条件としては良く、その点でカーオーディオは、リアルを感じるために適した環境だと言える。

そしてタイムアライメントの調節ができるようになったことが、この可能性を劇的に変えたと僕は思っている(革命のような出来事だと感じている)。いつも同じ位置に座るドライバーの耳の位置に合わせて時間を調整することで、各帯域を受け持つスピーカーの位相を整合でき、その位相の復元の度合いが一定のレベルを超えた瞬間、リアルと出会うのである。

ただ、邪魔も多い。ビリヤードのように壁にぶつかってからたどり着く反射音が加わると濁り、残響で嘘がばれ、現実に引き戻される。

家庭用オーディオは、前回も触れたがホーンスピーカーのように指向性をもたせたスピーカーを使用したり、反射を起こす壁に反射波の位相を破壊するディフラクションパネルを仕掛け、妨害を阻止する。

ちなみ現在の家庭用におけるHi-Fiな再生は、無指向性スピーカーをステージに立つアーティストと同じように設置し、壁面をディフラクションパネルで反射を制御する方法が主流で、再生レベルは今のところカーオーディオより高い次元にある。しかしクルマでは視界を妨げる行為になるので、同じ手法をとれないのが現実だ。ならばもう1つの方法、指向性を制御する方法)はどうかと思っている。それが前回書かせていただいた「コーンをホーンとして利用した小型同軸2wayにしてはどうか」という話だ。

もう1つ深刻な問題は、エアーボリュームである。

車室内の容積では低音は簡単に飽和状態になってしまうので、許容されるダイナミックレンジは低音が中高音に比べ小さくなってしまうのだ。

これを逆手に取ってSPL競技なるものが存在し、ありったけの状態では160dbといったとんでもない音量に達することも分かってきた。

サブウーハーを使わなければ良いのだが、やはりこぢんまりとした感じで物足りない。ではどうすればいいのか。それは、Hi-Fiな再生においてサブウーハーとエンクロージャーの関係を見直すことだろう。具体的にはエアーボリュームに合わせた最適なQファクターのエンクロージャーを設計することだ。

一般的にカタログに書いてある最適なエンクロージャーの容積は、家庭用で使用する場合の容積である(0.7程度の制動)。クルマ、特に小さなクルマはこの値では制動が足りないので、カタログのサイズより小さくしてQ1程度まで上げたほうが良い結果が得られたこともあった。

ここらが、経験とセンスのみせどころでもある。

音波以外の振動も妨害要因の1つであるが、最近PIONEERからHVT方式で振動を打ち消し合うパワードサブウーハーが発売された。1つの 突破口になるのだろうか。

難しい話にもなってしまったが、スピーカーでリアルに音楽を聴く環境としてクルマにはどんなメリットやデメリットがあるのか理解していただけただろうか。対処の方法がないデメリットもあるが(反射音の問題)、カーオーディオのHi-Fi度はかなり成熟しているし、かなりの精度でリアルを感じられる域に到達している。もう少しの所まで到達しているように思えてならない。景色を眺めながら運転する楽しみと、リアルな音楽、これをダブルで楽しめるカーオーディオはリスニング環境として最適である、メリットを活かし、デメリットを鑑みながら、さらなるリアルを目指していただけたらと思う。

《松居邦彦》

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