サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #16: 特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ! | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #16: 特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!

#16:
特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!

カーオーディオ カーオーディオ特集記事
サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#16:
特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!


今回からは、松居さん流の調整における勘どころを、惜しげもなく公開していただこうと思う。まずは、『クロスオーバー調整』について(「マルチアンプシステム」で「デジタルプロセッサー」を活用したときの調整方法)。ウンチクを交えて、じっくりと綴っていただいた。


オーディオの調整について僕の経験をお話しする第1回目。今回は、スピーカーのクロスオーバーについて説明してみたいと思う。

ところで、今僕らが使っているオーディオシステムの原型はトーマス・エジソンが発明した蓄音機だ。エジソンの蓄音機は機械式であったわけだが、後にその構造を電気信号に置き換えた方式が登場する。マイクロフォンがこの変換装置だ。今は電送時のロスを少なくするためアナログ信号をデジタル信号に変換して取り扱うようにもなっている。


(サムネールはクリックで拡大。拡大後は写真右側クリックで進む:左側クリックで戻る)


特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!#1

特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!#2

特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!#3


スピーカーについては、ダイナミック型と呼ばれるタイプが広く普及している。電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する部分はモーターと同じ方式で、回転運動をするモーターに対し、スピーカーはピストン運動をするという点が違うだけだ。力の源は同じである。振動板、ボイスコイル、磁気回路、この3種類で構成されるシンプルな物だが、開発から80年以上経過した今でもこれに変わる方法はまだ生まれていない。

ちなみに、この方式のエネルギー変換効率は極めて悪く、1%を割っている(92db)。99%が熱に変わっているわけで、極めて効率の悪い装置である。

また、振動する源であるコイルの加速度も一定ではない。フラットに近いレスポンスを保つためには神技的な技術が必要だ。このシンプルな構造のままで現代のHi-Fiレベルにまで到達しているのである。スピーカーの技術は、大変多くの積み重ねを地道に繰り返し進歩している、と言うことができる。

ユニット単体での基本方式は変わっていないが、録音技術が進歩し、再生帯域が拡大するにつれて、スピーカーはフルレンジ再生からマルチウェイシステムに進化していく。

Hi-Fiカーオーディオでは、サブウーハー+フロント2wayまたは3wayが最適なマルチウェイシステムとされている。そしてここ10年の間で、デジタルを最も有効に利用した方式を活用することで、クルマの中でのマルチウェイシステムをより的確に鳴らすための実践が繰り返されてきた。その結果、Hi-Fiカーオーディオは、家庭用のHi-Fiシステムと肩を並べる再生レベルに到達しているのである。


特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!


さて、デジタルを有効に活用した方式、つまり、デジタルプロセッサーを使ってのクロスオーバー調整について説明していこう。

ぼくはクロスオーバーポイントを決めるにあたって、トゥイーターのレンジを最大限に活用したいと考えている。それを実践するためには、トゥイーターのf0を意識することが重要となる。


特別編 サウンドチューニングのすすめ Part.2 クロスオーバー調整にキモ!


このグラフを例にすると緑の曲線(インピーダンスカーブ)で突き出ている部分、1500hz近辺がf0(最低共振周波数)なので、1oct上の3khzあたりをクロスポイントに設定する。

f0のポイントが、スピーカーの加速度のもっとも早い箇所であるが、この共振点を避けることでその他を均一な振幅で振動させることが出来る。

この緑のグラフがトルクカーブで、青のグラフが実際に放出される音波のグラフである。

3wayの場合はクロスミッションのように受け持てる帯域に余裕が出てくるが、平面波として伝わる帯域(スピーカーの軸上に振動が伝わる周波数帯域)は出来るだけリスナーに向いているスピーカーに分担させたくなる。空気にも質量があり、速度が速くなるほど空気抵抗が増えるのと同じで、ピストン運動で音波に変換する今のスピーカーでは、無指向性に近い伝わり方をする帯域はだいたい2khzまでで、それ以上の帯域は平面波として伝わるため、2wayの場合2.5khz以下でクロスしたい、もしそれが不可能なのであれば、ミッドハイを追加した3wayとしたい。

サブウーファーとのクロスポイントは、ミッドローのf0の位置を考慮し決定したい。人間の聴覚では200hz以下は方向を特定出来ないはずであるが、出来るだけ低い位置でクロスさせたほうが音像を前方に安定させやすい。

スロープについてはパッシブネットワークの場合は低次(緩やかな)フィルターの優位性があるが、デジタルクロスオーバーにおいては高次な(急峻な)フィルターを使用しても情報量は劣化しない。

お酒の蒸留度数にも似た感覚があり、高次にする程、振動板の混変調も少なくなるのか、切れのあるクリアーな世界が目の前に広がる。

ただこれだけは好みの問題で、これが正しいという答えはなく、各装置の選択に始まり、探求の続く果てしなき道なのである。

《松居邦彦》

特集

page top