サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #7: ダイヤトーン Part.1 | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #7: ダイヤトーン Part.1

#7:
ダイヤトーン Part.1

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サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


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ダイヤトーン Part.1


アンティフォン・松居さんによる実体験製品インプレッションをお届けしている当コーナー。今回から、DIATONEスピーカーについて語っていっていただこうと思う。まずは、松居さんが考えるDIATONEの魅力について、そして、フラッグシップモデル、DS-SA1の評価について。次回以降の、DS-SA1実体験インプレッションの序章としてお読みいただきたい!


僕のジェネレーションでは、ライフスタイルの中でオーディオのプライオリティは高く、時代時代でいろいろな製品に親しんできた。

僕が高校生のころには、山水、トリオ、パイオニアがオーディオ界の御三家と呼ばれ、三菱電気のオーディオ部門、DIATONEも、特にスピーカーについてはパイオニアと並ぶ草分けメーカーだった。その当時、ラジオ番組に出演する機会があったのだが、その時プレイバック用スピーカーとして使われていたのがDIATONE(2S305)。その音質の良さにビックリしたことを今でも記憶している。

当時の物価水準からなのか、オーディオ製品が開発途上だからなのか、民生機の価格帯と業務用機器の価格に今より大きな格差があった。当時はオーディオに求める要求が現在と違っていたのだ。民生機に、高い価格を付けられず、その結果、業務用と民生機の実力差は、おのずと大きくなってしまっていた。その隔たりがあったため、民生機と業務用の文化が違っていて、DAIATONEの良さを市場が理解出来ていなかったのではないかだろうか。それもあってか、後にDIATONEは、家庭用スピーカーとしては残念な結末を迎えてしまう…。


ダイヤトーン Part.1


オーディオを楽器的にとらえていた未成熟な時代でもあり、音楽のスタイルと組み合わせ、これはjazz向き、これはクラシック向き、というような言葉がオーディオショップや雑誌で飛び交っていた。オーディオについての評価基準も今とは違っていた、いや遅れていたのだ。これも、DIATONEにとっては向かい風だったように感じる。

また、例えばパイオニアは、開発に際し外国からも優秀な人材を登用し、インターナショナルに進化をしたわけだが、対照的にDIATONEは、純粋に一途な進化を遂げたブランドだと僕は思っている。

空気を振動させる装置として一途に、そして純血に進化したDIATONEだったのだが、時代に合わなかった、ということなのだと思う。DIATONEは、成熟した今の時代にこそマッチしているように感じている。


ダイヤトーン Part.1


ところで「いい音」という表現は、聴いて気持ちいいことを指す言葉で、オーディオを評価する言葉としてふさわしくないと、僕は思っている。オーディオ装置を評価するならば、「オーディオ装置の存在を意識せず音を感じられる装置であるかどうか」、ここにあると思う。

「すごい迫力ですね、おなかに響きました」と言われてはだめなのである。オーディオ装置の評価が、「いい音」から「いいHi-Fi」という言葉でされるようになった時こそ、DIATONEの時代がやってくると僕は思っている。


ダイヤトーン Part.1


さて、DS-SA1。このスピーカーは、DIATONEが昔から一途に育んできた技術の、ハイエンドの部分を復刻した製品である。アラミドハニカム構造のウーファー、純粋なボロンを使用したトゥイーター、これらはDIATONEが培ってきた究極の技術であり、今の時代にこそ評価されるべきと考える。

DS-SA1にはこのスピーカーでないと味わえない世界がある。浸透性が高い、密度が高いのだ。銅より銀、銀より金といった感じで分子構造が小さく感じる、純粋で隙間がない。

この剛性の高い振動板は、コンプレッションドライバー & ホーンでしか味わえないような音形をダイレクトラジエターで実現した。マイルスデイビスのミュートトランペットが粉臭くない、シンバルの金属感、余韻が静寂で美しい。

気難しく神経質な部分も垣間見せる瞬間もあるが、それにも勝る魅力を、僕はDIATONEに感じているのだ。

《松居邦彦》

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