排気効率の改善はパワーやトルクだけでなくアクセルレスポンス向上にも効果的だ。そこで注目したいのがスポーツ触媒。排気抵抗を抑えながら浄化性能を確保する排気系チューニングのひとつだ。
◆スポーツ触媒はなぜ走りに効くのか
エンジンは吸入した混合気を燃焼させ、その際に発生した排ガスを外へ排出する。この排気経路において大きな抵抗のひとつとなるのが触媒だ。触媒は排ガスに含まれる有害物質を浄化する重要な装置で、環境性能を維持するために欠かせない。
以前は触媒がフロア下に配置されるクルマも多かったが、触媒は一定の温度まで上昇しなければ十分な浄化性能を発揮できない。そのため近年は排出ガス規制への対応から、エンジン始動後にできるだけ早く触媒を活性化させることが重要になり、エンジンに近い位置へ配置する車種が増えている。
エキゾーストマニホールドと触媒を一体化した車種もあれば、ターボ車ではタービン出口のすぐ後ろに触媒が配置されるケースもある。こうしてエンジンに近い位置へ触媒が設置されることで、触媒部分の排気抵抗を減らした際の変化を感じやすい車種も増えている。
◆純正触媒とスポーツ触媒はセル数と排気抵抗が違う
純正触媒の内部には細かなハニカム状の構造があり、その表面にプラチナやパラジウムなどの貴金属を担持させることで排ガスを浄化している。
セルの細かさは「cpsi」と呼ばれる1平方インチあたりのセル数で表される。車種によって異なるものの、純正触媒では400~600cpsi程度の仕様が見られる。セルが細かければ浄化性能を確保しやすい一方、排ガスが通過する際の抵抗も大きくなりやすい。
これに対してスポーツ触媒では150~300cpsi程度とセルを粗くした製品が多く、排ガスの通路を確保することで圧力損失を低減する。単純にセルを減らすだけでは浄化性能が低下してしまうため、触媒に使う貴金属や担体構造などを工夫して排気効率と浄化性能の両立を狙っている。
ただしスポーツ触媒なら何でも公道で使用できるわけではない。購入時には愛車の型式や年式への適合、排出ガス試験など必要な条件を満たしている製品かを確認することが大切だ。
◆スポーツ触媒のメリットはパワーだけでなくアクセルレスポンスにもある
スポーツ触媒へ交換するメリットのひとつが排気抵抗の低減による出力特性の改善だ。エンジンに近い部分の抵抗を減らせるため、車種や仕様によっては幅広い回転域でパワーやトルクの向上が期待できる。
さらに注目したいのがアクセルレスポンスだ。アクセル操作に対するエンジンの反応が良くなることで、単純な最高出力の数字以上にクルマが軽くなったように感じられることがある。信号からの発進やコーナー立ち上がりなど、日常的な運転でもレスポンスの変化を体感しやすいのがスポーツ触媒の魅力だ。
シャシーダイナモ上で得られる最高出力の差だけでなく、アクセルを踏んだ瞬間の反応や中間加速のフィーリングまで含めて変化を楽しめるのがポイントとなる。
◆ターボ車では過給レスポンス改善も期待できる
スポーツ触媒との相性が良いのがターボ車だ。ターボエンジンは排ガスのエネルギーでタービンを回転させ、その力を使って吸入空気を圧縮してエンジンへ送り込んでいる。
ここで重要になるのがタービン出口側の排気抵抗だ。タービン後方の排気がスムーズに流れればタービンを回転させやすい環境を作ることができ、低中速域からの過給レスポンス向上につながる。
高回転域でも排ガスを効率良く流せるようになるため、車両やECUの制御次第では高回転までパワーを伸ばしやすくなる。特にタービン直後に触媒が配置されている車種では、スポーツ触媒への交換が排気系チューニングの重要なポイントになることもある。
◆ECUチューンは必要なのか 車種と製品の指定を確認
スポーツ触媒は単体でも排気抵抗低減の効果が期待できるが、車種や製品によってはECUセッティングと組み合わせることで本来の性能を引き出しやすくなる。
近年のクルマは各種センサーを使って排ガスやエンジンの状態を細かく監視している。そのため純正状態から排気特性が大きく変化すると、車種によっては警告灯が点灯したりECUによる補正が入ったりするケースもある。
だからといってスポーツ触媒交換時に必ずECUを書き換えなければならないわけではない。スポーツ触媒単体で純正ECUに対応する製品もあれば、指定されたECUデータとの組み合わせを前提とする製品もある。購入時にはメーカーが指定する装着条件を確認し、必要なら専門ショップでECUセッティングまで含めて相談するのが確実だ。
◆スポーツ触媒のデメリットは価格と適合条件
スポーツ触媒にもデメリットはある。まず価格が安くないことだ。車種による差は大きいものの、スポーツ触媒だけでも10万円台からの製品が多く、ECUチューンを組み合わせればさらに10万円以上の費用が必要になるケースもある。
また車種、年式、エンジン型式などによって適合が細かく設定されているため、価格だけで製品を選ぶのは避けたい。警告灯点灯などのリスクも含め、愛車でどの組み合わせがメーカー推奨なのかを確認した上で導入することが重要になる。
一方でマフラー交換とは異なり、エンジンに近い部分から排気抵抗を減らせるのは大きなメリットだ。費用は掛かるものの、パワーやトルクだけでなくレスポンスまで含めて改善したいユーザーには魅力的なチューニングと言える。
◆純正マフラーとの組み合わせなら静かなスポーツ触媒仕様も狙える
スポーツ触媒の後方にあるマフラーも高効率なアフターパーツへ交換すれば、排気系全体の効率をさらに高めることができる。しかし、あえて純正マフラーを残す方法もある。
エンジンに近い触媒部分の排気抵抗を減らしつつ純正マフラーを組み合わせれば、排気音の変化を比較的抑えながらレスポンスや出力特性の改善を狙える。大きな排気音は避けたいが走りは気持ち良くしたいというユーザーには注目したい組み合わせだ。
スポーツ触媒は単に最高出力を求めるためだけのパーツではない。アクセルレスポンスやターボの過給特性、排気音とのバランスまで含めてセッティングできるのが魅力だ。適合やECUとの組み合わせを確認した上で、自分が求める走りに合わせた排気系チューニングを楽しんでみよう。



