【マツダ2 XD Sport+ 新型試乗】470km走って感じた「ディーゼル×MT」の魅力…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【マツダ2 XD Sport+ 新型試乗】470km走って感じた「ディーゼル×MT」の魅力…中村孝仁

『デミオ』と呼ばれていた時代からコンパクトで上質な内外装を持ち、しかもディーゼルエンジンがチョイスできる車として、個人的に高く評価してきたのがこのクルマ。

自動車 試乗記
マツダ2 XD Sport+
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『デミオ』と呼ばれていた時代からコンパクトで上質な内外装を持ち、しかもディーゼルエンジンがチョイスできるモデルとして、個人的に高く評価してきたのがこのクルマ。

2019年に車名を『マツダ2』と改めたが、マツダお得意の商品改良の一環であって、成り立ちはデミオの時代から何ら変わらず、新たにSKYACTIVアーキテクチャの要素を取り入れたことで、ブランド的に車名の統一を図ったものだった。マツダは以前からラインナップにMT(マニュアルトランスミッション)の設定を残し、運転好きには秘かな人気を得ていたことが広く知られていたが、ディーゼルにMTが存在したことは迂闊にも見逃していた。

というわけで昨年商品改良を受けたマツダ2の「XD Sport+」のMT車を借りてじっくりと乗ってみた。

◆今も動的質感はトップクラスにある

デミオ以来のコンパクトカーとしては異例の上質感を持つ室内や適度な解放感などは、マツダ2となっても何ら変わっていない。ただ、デビューからすでに10年の歳月が流れ、常に商品改良を続けてきたとはいえ、アップデートできない部分もあるので、時代にアンマッチという部分があることは否定できないが、それでも良質なコンパクトカーであるというベーシックな部分は今の時代にも立派に通用し、少なくともクルマとしての動的質感はトップクラスにあると言って過言ではない。

かつて、ヨーロッパのコンパクトカーと言えばMTにディーゼルが定番だった時代が長く続いた。そんなあちらのクルマ事情に強く憧れたものだ。何故かというと、ご存じのように現在のクリーンディーゼルのターボエンジンは絶大なトルクを持ち、マツダ2の場合でも僅か1.5リットルながらその最大トルクは250Nmと、同じマツダではガソリンの2.5リットルエンジンに限りなく近いスペックなのである。

しかも発生回転数は1500~2500rpmと完全に常用回転域をカバーしているから非常に乗り易い。これが憧れる大きな理由で、正直に言えば敢えてMTをチョイスしなくてもATでその感触は十分に味わえるのだが、それでもMTに拘るのはやはり乗っていて楽しいからである。

◆クラッチ操作も気にならない、ディーゼル×MTの魅力

実際、乗り出してみるとやはり極低回転域からもりもりとトルクが沸き上がるので、エンジンを回す必要を感じさせない。2500rpmを超えると最大トルクの範囲から外れてしまうから精々3000rpmあたりまで引っ張れば十分である。この辺りがガソリン車とは大きく異なる点で、ガソリン車の場合はトルク不足をエンジン回転で補い、高回転域で最大出力方向にバトンタッチしてエンジンそのものを楽しめる。そういった点ではディーゼルはある意味実用一点張りで、エンジン回転を楽しむ類のクルマではないのは少し残念だが、実際に乗ってみるとやはり確実にATよりも力感が強い。

1速で引っ張るのはあまり意味がなく、発進後すぐに2速に入れてそこからアクセルに力を籠めると極めて力強い加速感を示し、あっという間に流れをリードする。今回は高速を使って静岡まで走ってみた。往復およそ400kmほどである。クルージングにはACCが使える。新東名で120km/h区間をそのスピードで巡航する際は、ACCがMTでも使えるのは非常にありがたい。スピードが落ち、前車を追い抜きたい場合などそこからドライバーがオーバーライドしてアクセルを踏み込めば、コンパクトカーとは思えぬほどの加速感を示す。

渋滞にも遭遇したが、クラッチ操作が気になるというか、面倒だと感じることもなかった。もっともゴールデンウィーク並みの渋滞に嵌まった場合はこの限りではないとは思った。今どきのMT車は、信号待ちなどの場合にアイドリングストップが働く。再始動はクラッチを床まで踏み込むことでエンジンがかかるから、通常操作からは何も逸脱しないのだが、エンジンが切れてすぐに再スタートしなくてはならない時などに若干のタイムラグが生じて、クラッチを踏んでもなかなかスタートしない時もあった。

また、坂道発進は楽なもので、ブレーキから足を離してもわずかな時間ブレーキを保持していてくれるから、サイドブレーキに頼る必要などない。この辺りも今どきのMT車の優れた点だと思う。

◆10年経っても全く色褪せていない

アップデートできていない点があると前述したが、さすがにそろそろEPB(電動パーキングブレーキ)にしても良いのかなと感じたり、ご立派なアナログタコメーターが主役を務めるメーター回りなどは時代に合っていないと感じてしまう。センダーのディスプレイは8.8インチに僅かながら拡大されているが、ベンチレーターのデザインも含め、そろそろリニュアルの必要性を感じた。

ただ、そうは言っても自動車の持つ本質的な良さは全く色褪せていない。車名を変えた時に何故フルチェンジしなかったのかという疑問をメーカーにぶつけた記憶があるが、まさに愚問だったと今更ながら思う。このクルマは10年経っても全く色褪せていない。

最後に燃費が恐ろしく良かったことを付け加えよう。写真にもある通り、リッター25km以上をコンスタントに記録していた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

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