【アウディ Q8スポーツバック e-tron 新型試乗】2640kgでも「軽快」と呼びたくなる性能…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【アウディ Q8スポーツバック e-tron 新型試乗】2640kgでも「軽快」と呼びたくなる性能…中村孝仁

アウディ『Q8』についてはじめに一言。Q8と名の付くモデルに乗ったのは4年前のことだ。しかし、今回試乗した『Q8 スポーツバック55e-tron』は全くの別物である。

自動車 試乗記
アウディ Q8スポーツバック 55 e-tron
  • アウディ Q8スポーツバック 55 e-tron
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アウディ『Q8』についてはじめに一言。Q8と名の付くモデルに乗ったのは4年前のことだ。しかし、今回試乗した『Q8スポーツバック 55 e-tron』は全くの別物である。

当初説明を受けてもあまり理解していなかったのだが、要はかつて単純に『e-tron』と呼ばれていたモデルがQ8 e-tronに名前を変えたという話である。ただ、ホームページを見る限りはe-tronはまだ紹介されているし、ガソリンエンジン搭載のQ8もカタログに残っている。ただ、今回試乗したスポーツバックはe-tronにもQ8にも存在しないニューモデルである。

御存知の通り「スポーツバック」の名称はアウディが以前から使っているものだが、SUV系のモデルに関して言えば、いわゆるクーペ風のスタイリングを持ったものを指す。で、このところ思うのは…アウディ…カッコイイ…だ。全く個人的な感想に過ぎないが、現ラインナップを見るとどれもカッコいい。なんとなくあか抜けているし、洗練されている。

その昔ドイツに住んでいて、彼の地で言われていたことは、南ドイツのクルマは粋で洗練度が高く、北は昔ながらのドイツ的気風が残っているのだそうだ。だから、ミュンヘンのBMW、シュトゥットガルトのメルセデスとポルシェ、それにインゴルシュタットのアウディは南ドイツの気風が当てはまる。他については敢えて言及しないが、まあこれも40年も前の話だから今は必ずしも当てはまらない…と思う。

◆ベンチャーが作ったBEVとは比較にならない奥深さ

とまあそんな話はどうでも良いかもしれないが、アウディを含むドイツの自動車産業全体がEV化に前のめりなことはよく知られている事実だが、このところヨーロッパではその傾向に少しブレーキがかかっている。

アウディの公式コメントでは、2026年以降発売される、すべてのニューモデルを電気自動車へ移行させるとともに、2033年までに内燃エンジンを段階的に廃止することも宣言している。だからもう内燃エンジンは作らないと言っているように聞こえるし、その旗振りの先頭に中国企業FAWとの合弁会社Audi FAW NEV Companyがあるのも少し気になる。まあ、そんなことはないと思うが「中国こけたら皆こけた」状態を危惧するわけである。

この会社からはすでに新しい『Q6 e-tron』が生み出されているが、とりあえずQ8スポーツバック 55 e-tronはアウディがBEVとして開発した第1世代のモデルである。それでもこのクルマの持っているポテンシャルは個人的な意見としては、ベンチャーが作ったBEVとは比較にならない自動車を操るという上での奥深さを感じさせてくれるモデルである。

◆2640kgでも「軽快」と呼びたくなる性能

具体的にそれがどういうことかというと、初期のBEVはただひたすら初期加速の鋭さを売り物にしていたと思うが、満を持してしっかりと作り込んできた自動車メーカーが作ったBEVはスピードの追求以上に運動性能を追求してきたから、重い車重をデメリットにしない運動性能が出来上がっているという気がしてならない。一番最初にそれを感じさせたのは他銘柄で恐縮だがジャガー『I-PACE』であった。

この公式に当てはめると、残念ながらQ8 e-tronのプラットフォームはBEV専用のものではない。しかし、MLBと呼ばれるプラットフォームはアウディとポルシェが共同で開発した縦置きエンジン用のプラットフォームを基本としていて、こと走りに関しては元来定評のあるプラットフォームだったことが功を奏しているのかもしれない。

アメリカではこれがミッドサイズになるのかもしれないが、日本では立派にフルサイズと呼んで差し支えない。3サイズは全長4915×全幅1935×全高1635mm。1935mmの全幅はやはり物理的な問題を見せてくれたし、車重も2600kgにパッケージオプションを40kg加えているから2640kgとまあ、重量級である。ところがそんな重さなどカンケーネェ!と叫ぶかのように強烈な加速と、並外れた運動性能…それは最早軽快と呼べる領域だと言っても過言ではない性能を示す。

そもそも軽快とは「軽々としていて動きが素早いこと」とあるのだが、どう考えても2640kgは軽々としていない。それがそのような動きを見せてくれるのだから、クルマの作り方そのものが大きく変わってきていると考えるべきなのだろう。

◆走って楽しいを体現できるBEVであることは間違いない

114khwのバッテリーはWLTCモードで501kmの走行を可能とカタログでは謳うが、どう頑張っても400km以上の航続距離を示すことはなかった。もっとも長距離に連れ出したわけではないので何とも言えないが、加減速の多い都市内での走行はガソリン車同様BEVにも不利に働くということのようである。

走行モードは5種類あるが、とりあえずAutoに放り込んでおけばよい。そもそも、Efficiencyといういわゆるエコモード以外積極的に選ぶ必要があるのか?という疑問もわく。因みにダイナミックをチョイスすれば車高が下がり、オフロードのすると車高が上がる。具体的に何ミリ上がったり下がったりするかは聞きそびれた。

少なくとも、走って楽しいを体現できるBEVであることは間違いない。東京の街中でEVのフォーミュラカーがレースをする時代である。こうした機運がまたEVの活性化につながるのかもしれないが、それでもEVの春はまだ先のような気がする。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

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