【ホンダ WR-V 新型】209.9万円から!価格も走りもわかりやすく潔い「これぞホンダ!」な一台 | Push on! Mycar-life

【ホンダ WR-V 新型】209.9万円から!価格も走りもわかりやすく潔い「これぞホンダ!」な一台

ホンダの小型SUVとしては人気車の『ヴェゼル』があるが、何が違うのか。ホンダが目指したものとは。発表に先駆けて実現した試乗から、WR-Vの姿にせまる。

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ホンダ WR-V
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  • ホンダ WR-V 開発責任者の金子宗嗣さん

ホンダは12月21日、新規モデルとなる小型SUV『WR-V』を正式発表した。発売は2024年3月22日。「求めやすい価格帯の小型SUVが不可欠」として、価格は209万8800円からに抑えた。ホンダの小型SUVとしては人気車の『ヴェゼル』があるが、何が違うのか。ホンダが目指したものとは。発表に先駆けて実現した試乗から、WR-Vの姿にせまる。

◆ただの安価な実用SUVではない

日本市場に導入された新規モデルWR-Vは、インド市場で先行販売されたSUV『エレベイト』の日本向けアレンジモデルだ。ホンダでは20~30代の自動車ユーザーや、軽自動車から登録車へステップアップを考えてる人たちの選択肢として、求めやすい価格帯の小型SUVが不可欠であると判断。そこで税込み209万8800円~という軽自動車の中~上級グレードに相当する価格帯で小型SUVを販売するに至った。

「インドでエレベイトが人気なので日本でも販売しよう、ということではありません。そもそもエレベイトの開発段階から日本市場への導入は決定していました」と語るのは本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターLPLであり、WR-V 開発責任者である金子宗嗣さん。金子さんは2018年からHonda R&D Asia Pacific Co., Ltd.に駐在するアジア地域のスペシャリストだ。

「人それぞれに価値観が違いますし、生活スタイルも様々ですが、とにかくそういう人たちにとってなにが便利なのかを想像しながら、一人ひとりに寄り添うクルマを創り上げたかった。ズバリ、生活の自由度を高めてくれるのがWR-Vです」と金子さんは続ける。

実車に触れる前、大変失礼ながら筆者は「価格帯が安価で経済的な実用SUVなのかな」という印象を抱いていた。しかし、それは間違っていた。合理的で広大な車内空間、後席を活用した状態での優れた積載性能、十分な走行性能、そしてHonda SENSINGをはじめとした運転支援技術がその裏付けだ。

◆1.5リットルエンジンとFFのみ!その走りは

まずは走行性能から確認する。車両重量1230kg(試乗した17インチタイヤ仕様の値。16インチ仕様は1210kg)と、立派な全幅(1790mm)をもつSUVとしては軽量なWR-Vは発進加速時から元気が良い。テストコースは広大で道路幅も広いため速度感が薄くなるが、120km/hあたりまでの体感加速フィールは大人3名が乗車した状態でも十分だ。

直列4気筒1.5リットルポート噴射式ユニットは118ps/14.5kgf・mを発揮。駆動方式はFFのみでCVTと組み合わせる。出力/トルクや各最大値の発生回転数は同門ヴェゼルのガソリンモデルと同じだが、型式は異なり、ヴェゼルの「L15Z型」に対してWR-Vでは「L15D」型を名乗る。

CVTには7段相当の疑似変速ステップを設けた。たとえばアクセルペダルを全開にして6600回転の最高出力の発生回転に達すると、5600回転まで回転を落として(≒疑似変速することで)リズムの良い加速フィールを演出する(CVTなので加速度には変化なし)。

加速時のエンジン音は景気よく車内に入り込んでくるが、ノイズというより往年のホンダサウンドに近い音色で心地良い。1980年代のホンダ各モデルがこぞって搭載した名機「ZC型エンジン」にも似た図太さがあって個人的には好印象。ちなみにインド市場では「Nice honda sound!」と喜ばれているという。

ただし、加速時の賑やかさから一転、巡航時の車内はとても静かだ。1650mmとヴェゼルよりも最大で70mm高い全高で、鏡面の大きなドアミラーを備えるが風切り音はよく抑えられている。静かさの指標となる前席と後席の会話明瞭度も80km/hまでならワンランク上の『シビック』並だ。

◆インドで鍛え上げられた乗り心地と扱いやすさ

深い轍路面、左右で起伏の異なる路面、凸凹に荒れた路面、踏切を模した突起物の通過など、テストコースならではの様々な路面状況で粗探しならぬテスト走行を行ったが、WR-Vは一切顎を出さない。それもそのはずで、日本市場よりも路面状況が安定していないシビアコンディションが続くインド市場で鍛え上げられているからだ。

最小回転半径5.2m(16/17インチ共)と小回りが効くが、見通しの悪い市街地を模したテストコースでは数値以上に扱いやすいことが確認できた。分厚くて迫力満点のロングノーズ(ホンダが北米市場に投入するピックアップトラック『リッジライン』似!?)に、高めのウエストラインだから、さぞかし運転席からの見切りが悪そうに思える。

しかし実際は真逆で、運転席からの視界はものすごく良好だ。まず、ボンネットフード中央部分を低くして前方視界を確保。次に、フード左右部分を緩く山なりに盛り上げて、そのラインを車内のサイドウインドの下端ラインと重ね合わせて一体感を高めた。

こうした手法はポルシェ『911』やマツダ『NDロードスター』も採り入れているが、これにより鼻先がどちらを向いているのか一発で把握できて運転がしやすくなり、同時に見切り性能も向上する。とくに狭い道での離合や、死角に障害物が入り込みやすい場所での車両感覚の把握には効果が大きい。

電動パワーステアリングは低速域でのアシスト量を意図的に増やした。ヴェゼルのe:HEVモデルのような「VGR」(可変ステアリングギアレシオ)は持たないが、体躯によらず正しい運転姿勢がとりやすいシートポジションと相まって、フルロック(左右いっぱいまでステアリングを切ること)操舵が難なく行える。視界の広さと死角の少なさ、そして低速域での操作系サポートによって同じ車幅のヴェゼル(最小回転半径5.3m)よりも取り回しが格段にしやすい。

◆チップアップ&ダイブダウン機構がない理由

車内は黒が際立ち色気こそ少ないが、水平基調を採り入れた最新のホンダデザインを採用。エアコンなどの物理スイッチは走行中であっても扱いやすかった。メーターは左側のエンジン回転計とマルチインフォメーションディスプレイを7インチの液晶フルカラーディスプレイで構成し、右側の速度計には自発光式のアナログメーター(物理式)を採用。パッと見は12.3インチの大画面液晶ディスプレイのようだ。

WR-Vのハイライトは後席! しかし、ホンダお得意のチップアップ&ダイブダウン機構はつかない。なぜなのか。
「インド市場では後席の利用率が日本市場よりも高く、同時に乗り心地に対しての要求値も高いことがわかっています。一方、チップアップ&ダイブダウン機構を設けるにはフラットなフロアを実現するため物理的にシート座面をやや薄くせざるを得なくなります。よってWR-Vでは乗り心地を優先しチップアップ&ダイブダウン機構を採用していません」(デザイナー 中村啓介さん)。

WR-Vの後席はシングルフォールディング式で座面の広さ、背もたれの角度も筆者(身長170cm)には最適だった。足元も広くてフラットだ。

肝心の座面の厚みは中央席でも十分に確保され、高速走行時でも減衰がしっかり効いて乗り心地は良かった。また、乗降性を高めるため、シート座面形状をmm単位で繰り返し調整したというだけあって足の出し入れもやりやすかった。

「インドの方々は日本人よりもふくよかな方が多く、体重も重めです。そういった方々でも満足いただける乗り味に仕上げました」(パワーユニット・車体研究開発責任者 平村亘さん)というから納得だ。

その後席と連動するラゲッジルームも広大。後席を利用することを条件にヴェゼルと容量を比較してみると300リットルを超える程度のヴェゼルに対して、WR-Vは460リットル程度(共にホンダによる測定値)と1.5倍以上に達する。ラゲッジフロアは低く、適度にバンパー部分との段差もあるから積み込んだ荷物も固定しやすい。筆者の取材実績からの判断ながら、トノカバーを使った状態での積載量はこのクラスではトップだ。

◆「足をしっかりと動かすことで接地性能を高めています」

冒頭、元気よく走ると紹介した走行性能だが、その印象はワインディング路でも変わらず。足回りは17インチタイヤを基準に設計したというが、具体的なシーンではこうだ。

100km/hから減速しつつ左カーブに進入。徐々に曲率がきつくなるがWR-Vは曲率に合わせてダイアゴナルロール角を徐々に深める。そのカーブ途中には、いやらしくも(失礼!)路面を斜めに横切る高めの突起物が設けられていたが、車体はあおられこそするも、走行ラインを乱すことなくヒタッと走り切った。ステアリングへの外乱もほとんど感じないから修正舵も必要なし。

転がり抵抗の低い(≒ハイグリップタイプではない)タイヤを標準装着(試乗車は215/55R1794Vのブリヂストン・トランザT005A)しているが、登り坂カーブ途中でジャンプしそうなほどの凸路に遭遇しても、欧州のランナバウンドに近い円形交差点を高速で旋回しても、WR-Vは音を上げない。

タイヤのスキール音はかなり高めの速度、もしくは乱暴なステアリング操作をしない限りほぼ発生しないことから、じんわりと沈み込み、対角で伸び上がるサス特性が実感できた。

「フィットやヴェゼルのプラットフォームをベースにしつつ、安全性能とのバランスを図りながら、外乱をいなすWR-V独自のシャシー開発を行いました。サスの設定については、インド/日本仕様で変えていません。足をしっかりと動かすことで接地性能を高めています」(平村さん)とのことだが、ここには間違いなく車両重量の軽さや、余裕あるタイヤサイズの設定も大きく貢献している。

◆「4WDやe:HEVはヴェゼルをどうぞ!」と言わんばかりの潔さ

試乗と取材を終えて、洗いざらしのジーンズのようなWR-Vに、初代『CR-V』がもっていたシンプルでタフなイメージがオーバーラップした。多少の汚れは気にせずに、山道だろうと砂利道だろうとガンガン入っていける気軽さがある。FFながら最低地上高は195mmとたっぷりだ。

4WDモデルの設定がなく、ハイブリッドシステムであるe:HEVモデルの設定もない。しかし、たとえばヴェゼル4WDの販売比率は10%台に留まる。

「予定も計画もありませんが、仮にWR-Vに4WDを設定するとなれば、車両価格には開発費用が上乗せされます。また、こちらも予定や計画はありませんが、仮にe:HEVが加えればヴェゼルとの価格差はほぼなくなってしまいます」(金子さん)。

WR-Vは税込み209万8800円~という車両価格と、ガシガシ使い倒せる満足度、そして軽自動車からの乗り換え組みも納得の運転のしやすさが武器だ。ここにHonda SENSINGによる運転支援技術の組み合わせとくれば、所有満足度が倍増する。「4WDやe:HEVはヴェゼルをどうぞ!」と言わんばかりのじつにわかりやすい、そして潔いスタンスにホンダらしさを実感した。

《西村直人@NAC》

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