スバル『レヴォーグレイバック』はかつてない「土の香りがしないSUV」…デザイナーが込めた“凛と包”コンセプトとは | Push on! Mycar-life

スバル『レヴォーグレイバック』はかつてない「土の香りがしないSUV」…デザイナーが込めた“凛と包”コンセプトとは

スバルは9月7日より、ステーションワゴンの『レヴォーグ』をベースにした都市型SUV『レヴォーグレイバック』の先行予約を開始した。これに先立ち行われた一部メディア向けの取材会で、レイバックの肝であるデザインについてスバルのデザイナーに直撃。

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  • スバル商品企画本部 デザイン部 デザイン価値企画主査 兼 レヴォーグ/WRXデザイン開発主査の源田哲朗氏
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  • レヴォーグレイバック(左)とレヴォーグ(右)
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スバルは9月7日より、ステーションワゴンの『レヴォーグ』をベースにした都市型SUV『レヴォーグレイバック』の先行予約を開始した。これに先立ち行われた一部メディア向けの取材会で、レイバックの肝であるデザインについてスバルのデザイナーに直撃。そのコンセプト、レヴォーグとの違いとは。

インタビューに答えてくれたのは、スバル商品企画本部 デザイン部 デザイン価値企画主査 兼 レヴォーグ/WRXデザイン開発主査の源田哲朗氏だ。

◆土の香りがしないSUV

----:源田さんは、レイバックのベースとなったレヴォーグのデザインも手掛けていらっしゃいます。まずはレイバックのデザインを開発することが決まったときにどう思いましたか。

源田哲朗氏(以下敬称略):いままでのスバルにない領域、新しいお客様のところに価値を届けられそうだなと正直思いました。それは、「土の香りがしないSUV」というものです。

スバルには、『クロストレック』とか『アウトバック』などのSUVがありますが、それらはいわゆる土の香りのするアウトドア志向のクルマ達で、その領域はたくさんやってきていますし、当然得意領域です。しかし、土の香りがしないSUVを求めるお客様を狙うということは、いまの世の中としてはその動きが大きくあり、実際にお客様の気持ちの変化が我々にも伝わってきています。スバルもいよいよそこにきちんと踏み込んで、お客様の期待に応えるべきなのだろうと思いました。

----:一方で手掛けたレヴォーグのデザインに手を加えなければいけないことに対して、どのようにお考えでしたか。

源田:ここがデザインコンセプトを作るうえでのポイントだった、より豊か、リラックス、コンフォートに繋がります。つまりお客様がこのレヴォーグレイバックとともにより豊かな時間を過ごしていただきたいという狙いがあります。その時に我々が考えたのが、“凛と包”というデザインコンセプトです。

当然、この骨格はレヴォーグなんですよね。そのレヴォーグが持っている良さは何かと考えると、シャープさとか、スポーティー性、先進性、つまり凛としたさまです。そこはきちんと生かしつつ、豊かさやおおらかさなどで包み込む。これが包の部分です。その凛と包を、ただ足し算や引き算をするのではなく掛け合わせて、全く違う価値として作り上げれば、いままでにない新しい価値をお客様に提供できると思いました。ですからレヴォーグがあったからこそ、この凛と包という新しい価値に到達できたのかなと考えています。

◆フロントマスクに込められた意味

----:今回のエクステリアデザインで、具体的にレヴォーグから変えた部分は。

源田:変わったところはフロントグリルとフロントバンパー、それからクラッティングと呼ばれる部分、そしてホイールとリアバンパーが違います。フードとランプ、鉄板の部分は基本的にレヴォーグと同じです。

----:そのグリルですが、六連星から横にメッキパーツを左右に伸ばすなど特徴を出していますね。

源田:いままで顔回りはフロントグリルとかヘッドランプ、フロントバンパーと要素でデザインしていたところがありました。それがダメというわけではないんですけれど、このレイバックはそういう要素ごとのデザインではなくて、豊かに大きなひとつの形、ひとつの表情を作り上げようとしたのです。ですから、あまりグリルがどうという意識はしていませんし、グリルの枠もありません。大きなフロントフェイスの中に大きなグリルがあるということがここで形作られているのです。

またしっかりとしたSUVらしい厚み感を見せたいので、このウイング(グリル内で左右に伸びるサテンメッキ調のモノ)の位置も出来るだけ高い位置に通しています。そうすると見た目の重心がグッと上がるので、そこが厚みに効いてくるんです。しかもこの通し方を、目(ヘッドランプ)を突き抜けるように意識することで、勢いがクルマの後ろまで続いていくイメージも持たせています。この勢いを止めずに、ということがこの顔の構成の要素となっています。

もうひとつこだわりは、バンパー左右に縦のフォグランプを設けているんですが、ただ厚みを増やしました、ひとつの面にしましただけだと、どこか締まりが無いものになってしまうんです。そこで最後はキリッと引き締まったところがあって、この凛と包という組み合わせが表現できるわけなのです。

----:細かい部位で全体を上手く表現されているのですね。

源田:今回は変えられるところが少なかったので、面の微妙な表情や、線の運び方、その線もどこかで止めるのではなくて、ずっとどこかに勢いが続いているようなことを意識しました。おおらかさや、上質さの表現に繋がっていると考えています。

◆フロント以上に苦労したリアの「厚み」

----:一方でリアの変更はバンパーのみですが。

源田:でもそこにもポイントがあります。まずフロントと同じで、SUVらしい厚みを出したい。特にクルマに乗っている時は(他車の)後ろ姿を見ている時間が多いでしょう。ですからSUVらしい縦の厚みは後ろでも表現しなければいけませんので、実はフロント以上になかなか苦労したところです。

具体的にはボディカラーと黒いクラッティングの部分の比率に凄くこだわっているんです。この黒いところの最後の仕舞い込みの面の角度(アンダーフロア側に巻き込んでいく角度)でしっかりと縦の厚みが見えるようにしています。

またレヴォーグ譲りのリアアウトレットはフロントフォグの要素を取り入れて表情を引き締めています。つまり前後とも同じ考えでまとめていますので全体のリズムが取れているんです。

----:このリアバンパーの黒い部分をもっと厚くすると腰高に見えてしまうものなのでしょうか。

源田:これが不思議なもので、いろいろ試したんですが、本当にちょっとの差で急に華奢に見えたりするんです。バンパー周りを厚く見せるためにライトキャッチ面といって、一番下に逆に上向きの面を設けることでそこに光をあてる手法があります。そうするとそこに面が感じられますので、実際以上の寸法が感じられます。レイバックでも試してみたんですがなぜかキューっと薄く見えてしまって全然効きませんでした。ですからボディカラーの比率と仕舞い込みの角度でベストバランスを見つけていったのです。

----:レイバックではホイールも違うんですよね。

源田:ホイールは専用です。このスポークがすごく足が長くて大きく見えるんですけど、このスポークのところがシャープな凛のところで、その周りにある面のところが包で、ホイール単体でも凛と包をちゃんと表現できるようにこだわっています。

このホイールは陰影がすごく深く出る「スーパーブラックハイラスター」という色を採用しています。この形と色が相乗効果でより良く見えているでしょう。スーパーブラックハイラスター塗装というのは黒塗りの層の上にシルバーを重ねることで、その黒が透けて見えているんです。ですから影の部分がより黒くグッと落ちることで陰影が強く出て、かつ色自体も陰影の黒さを出すために明度もちょっと抑え目にしています。

一方でシルバーの部分は塗膜が薄くなるので、すごくムラが出やすいんです。でもこのクルマではそういうことは決してなくて、非常に滑らかで、光があたると本当にリッチな輝きを表現して、高質感があります。でも、影のところはグッと黒く落ちるので、より立体感が増す。今回はこのスーパーブラックハイラスターしかないと決め打ちでした。

◆暖色系に「青」を入れる勇気

----:インテリアについて、レイバックならではの部分やこだわりはありますか。

源田:インテリアの造形自体はレヴォーグと一緒です。いかにしてレイバックならではの豊かさをお客様に提供するかを考えて、配色と素材にこだわりました。

今回のポイントは明るい部分のアッシュカラーです。これまでも、ベージュやアイボリー、グレー、もしくはブラウンとかタンなど我々はいろいろなキャラクターカラーを持っていますが、それら既存の価値ではこのレイバックならではの新しい豊かさというものが提供できない。そこでこだわったのがこのアッシュカラーなんです。

このアッシュというのは、しばらく前からファッションとかアパレルなどで感度が上がって来ていて、我々が想定する都市に住むユーザーの皆さんは、きっとそういうところに感度があるだろうというところも想定しました。また、そのアッシュにさらにカッパーのステッチを組み合わせています。さらにアッシュとカッパーという暖色系に、ほんのり青みがあるシルバーをグローブボックスの上を組み合わせています。シートのファブリックにもほんのり青い糸が入っていて、華やかで豊かな空間を作り上げています。

----:青を入れるのはすごく勇気がありますね。

源田:本当にめちゃめちゃ勇気がいるんです。実は最初、さすがに暖色と青みの組み合わせってどうなのかなと、赤みを入れたものも実験してみたんです。そうしたら、この華やかさが全然なくなってしまった。我々がセオリーと思っているものでは新しい豊かさに至らないということに気付き、チャレンジしました。結果として唯一無二の華やかさが実現できたかなと思っています。

《内田俊一》

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