マセラティ グレカーレ はまさに日本に合ったクルマ…マーケティング担当インタビュー | Push on! Mycar-life

マセラティ グレカーレ はまさに日本に合ったクルマ…マーケティング担当インタビュー

マセラティジャパンが導入しているSUVはこれまで『レヴァンテ』のみであったが、そこに新たに『グレカーレ』が追加された。そこでグレカーレのポジショニングや日本でのユーザー層などについてマーケティング担当者に話を聞いた。

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マセラティジャパンが導入しているSUVはこれまで『レヴァンテ』のみであったが、そこに新たに『グレカーレ』が追加された。そこでグレカーレのポジショニングや日本でのユーザー層などについてマーケティング担当者に話を聞いた。

◆日常を格別なものに

「グレカーレのコンセプトは、“Everyday Exceptional”」と話し始めるのは、マセラティジャパンアジアパシフィック&ジャパンプロダクトマーケティングマネージャーの山本文吾さんだ。これを日本語で意訳すると、「“あなたの日常を格別なものに”。何か特別なことをするわけではなく、ただ、いまの生活の中でクルマがグレカーレに変わることによって、新しい発見がたくさん出てくるというメッセージ」と話す。

そのグレカーレは日本市場において、「お客様の数を増やすこと」という役割がある。「マセラティはレヴァンテというSUVを導入しており、現在の稼ぎ頭だ。しかし、昨今の価格上昇を受け、スタートプライスが1300万円を超えてしまった。さらにボディサイズが大きいという市場の声もある」。実際の数値は全長5004mm、全幅1968mm(グレードによって若干差異あり)であることから、「マセラティがSUVであってもグランドツアー、グランドツーリスモを体感出来るようにレヴァンテを作り上げたことはとてもよくわかるが、日本でははまりきれない要素があった」と現状を解釈。

一方グレカーレは全長4845mm、全幅1950mm(いずれもグレードによって若干の差異あり)であることから、「日本の道路事情には合っているクルマだ」とコメントした。

◆あのクルマのデザインをモチーフにしつつ

さて、グレカーレのデザインについて山本さんは、「他社とデザインランゲージの捉え方が違う」という。「他社はトレンドに合わせてモデルごとに(デザインランゲージが)変わることが多い。従って新しいデザインランゲージを取り入れたとたんにトレンドが違うので、それまでのクルマは古く見える」と述べる。一方マセラティは、「過去のあのクルマのデザインが良かったと指名されるユーザーが多い。つまりそのデザインが新型でも受け継がれている」と話し、それがマセラティのデザインランゲージだと示唆。

現在のグレカーレなどは、『MC20』のフロントフェイスをモチーフにしており、先日発表された『グラントゥーリズモ』も同様だ。「ここにロジックが隠されている」と山本さん。

まず正面から見て、「グリルの開口部と、ヘッドライトの位置関係が黄金比率に近い」。次に、グリルとヘッドライトの位置断面をサイドから見ると、『1947年に登場したマセラティ初のロードカーであり、モータースポーツ由来のエンジンを搭載した『A6 1500』のイメージを踏襲し、ヘッドライトよりもグリル部分が前に出ている』。

そしてもうひとつ。これもフロントから見て、ボンネットとフェンダーの峰の位置関係だ。ボンネットが左右方向に弧を描き、端で落ちてから再びフェンダーが盛り上がる様子を見せる。これもA6 1500あたりがモチーフになっている。

こういった過去のモチーフを使いながらもボンネット上に前後方向に走るプレスラインや、それをサイドビューに流して全体を形作る手法によりフォルムを形成しているのだ。

またリアは、ジウジアーロが手掛けた『3200GT』からインスピレーションを得たブーメラン型テールライトを採用していることも特徴といえるだろう。

◆eブースターが特徴の48Vマイルドハイブリッド

現在日本に導入されているグレカーレは3種類のエンジンが搭載されている。GTとモデナには2リットル4気筒で、300psと330psの出力違い。トロフィオはV6 3リットルのネットゥーノエンジンを搭載しており、MC20に搭載されているものと同型だ。ただしグレカーレの場合は、「四駆ということもあり630psから530psにデチューンしているが、MC20より乗りやすい」と山本さん。そのネットゥーノエンジンに搭載されているプレチャンバーはそのまま採用。かつ、エンジンの右側のシリンダーバンクを気筒休止させるシステムも取り入れられている。

トランスミッションはMC20のDSGではなく8速ATだ。前後のトルク配分は0:100から50:50までの可変で、基本的にはリア寄りのセッティングだという。

そして2リットルエンジンは48Vマイルドハイブリッドと組み合わされる。このマイルドハイブリッドはベルトスタータージェネレーター(BSG)、48Vバッテリー、eブースター、DC/DCコンバーターの4つのコンポーネントから構成。BSGはオルタネーターとして機能し、信号停止時などからのエンジン再始動をスムーズに行う。同時にeブースターに電力を供給し空気を圧縮。そこからターボチャージャーに空気を送り込むことで、発進時のターボラグを解消する仕組みだ。その後、エンジン回転が上がると、本来のターボチャージャーの排気ガスの流れにバトンタッチし、eブースターは徐々に働きを抑えていくというシステムになっている。

こちらのエンジンも8速ATを搭載し、前後のトルク配分もトロフェオと同様だ。

このようにマセラティはデザインやパフォーマンスで大きな特徴があるが、山本さんはもうひとつ、ラグジュアリスという特徴もあるという。「マーケットへのコミュニケーションとしてはインテリアの質感で勝負をしている」とのこと。例えば「レザーの質感だ。GTはフルレザーで、モデナとトロフェオはフルプレミアムレザーで質感が違う。ただし、GTの素材はコストを落としたものではなく、他の同等のブランドと同じレベルのレザーを使用。モデナとトロフェオは(他社では)オプションで大体80万円か120万円プラスしたレベル」と説明。ただし、マセラティの場合は、「6から70万円でシフトできる」とのことだ。

◆どうやって売り分けるか

ではGT、モデナ、トロフェオを日本市場でどう売り分けるかについて山本さんは、「非常に悩んだ」というが、「GTとトロフェオは明確だった」とも。GTは、「マセラティとして、そしてグレカーレとしてのエントリーモデル。トロフィオは、マセラティのアイデンティティーが多く詰まったハイパフォーマンススペックモデル」と位置付ける。

そしてモデナだ。「GTと同じエンジンでありながら出力が違う仕様なので、他ではあまりないパターン。従ってこのまま売っても日本のお客様には受け入れにくいだろう」という。そこでモデナは、「GTにオプションを追加するのであれば、モデナの方がお得だというコミュニケーションにした。もちろんGTの標準装備は悪くなく、十分な装備が揃っている。最近、新しいお客様の中にはGTでオプションは何も選択せず、そのまま乗るという方もいる」と装備レベルが高いことを強調。そのうえで、「モデナにすると減衰力調整サスやホイールも20インチ(GTは19インチが標準)。ADASもレベル2が最初から搭載されている。プライバシーガラスもモデナ以上に標準装備される」と山本さん。更にレザーシートもより上級のものになる。

従って、「デザインなどが気に入りそのまま乗りたい方はGT。もう少しインテリアの質感も上げたいとGTでオプションを選ぶのであれば、モデナにした方がお得になる。さらにエンジンは30psもパワーアップする」とその特徴を述べた。

◆ジャーマン3と互角に戦えるレベル

前述の通り、グレカーレはマセラティのお客様を増やすという役割がある。そのためにはどういう強みを強調するかもポイントだ。その点について山本さんが挙げるのは室内の広さだ。Bピラーあたりからルーフラインが後ろに行くにしたがって降下するクーペタイプのSUVの範疇にグレカーレは入るのだが、このスタイリングを優先するがために、後席の居住性が犠牲になりやすい。それもあり、クーペタイプSUVのユーザー層は、「子育てが終わった年齢層、もしくは定年退職された方たちが多い」と山本さん。

しかしグレカーレは、「運転席を自分のドライビングポジションに合わせても後席で我慢させることなく快適に座ることができる」と高い居住性を強調。そこで、グレカーレが狙うユーザー層は、「まず女性。そして若い世代で子育て中の方々がターゲット」だという。この層はこれまでマセラティユーザーにはあまり存在せず、かつ、このボディタイプにもいないことから、「ここにアプローチする」と語る。

また、ADAS系を含めた装備面の充実もキーとなる。「これまでマセラティは自社移行、あるいは、ドイツのスポーツカー系ブランドからの乗り換えが多かった。しかしグレカーレはジャーマン3ブランドからの乗り換えも狙いたい」とし、「そういったブランドの装備内容や価格を踏まえながらグレカーレの日本仕様を設定した」と述べ、その装備レベルは同等以上だと強調した。

◆現場にも変化が

こういったことからマセラティのショールームでは実際に変化が起きているそうだ。山本さんは、「初めてマセラティのショールームにお越しになる方が非常に多くなった。中でも目立つのがやはり女性だ」という。また、納車が始まったこともあり、次のようなエピソードを教えてくれた。「奥さまのクルマとして購入し、ご夫婦でクルマを取りにこられ、旦那さんが運転して帰る気満々だった。しかし、奥さまがニコッと笑ってカバンの中から初心者マークを取り出してボンネットに張り付けた。普段運転はしないそうだが、乗りたくて仕方がないという様子だった」とのこと。「そのくらい、いままでクルマに関心のなかった女性が乗ってみたいと、関心を持ってもらえるようになった」と戦略が上手くいっていることを示唆。

そのほかにも様々なイベントを開催し、そういった会場でも、「普通は旦那さんがじっくりと見て、奥さまが暇そうに携帯をいじっている光景が多い。しかし、最近のマセラティのイベントは逆。奥さまがすごく細かいところまで見ていて、旦那さんは飽きている」。では女性はどういうところを見てるかというと、「ドアを開けたときのレザーの質感や、小さなアクセントなどで、明らかに男性と女性とでクルマを見るところが違っている」といい、そのくらい高い商品性と適切な装備、価格のクルマなのだと改めて語った。

《内田俊一》

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