【レクサス RZ 新型試乗】BEVで表現する“レクサスらしさ”とは何なのか…野口優 | Push on! Mycar-life

【レクサス RZ 新型試乗】BEVで表現する“レクサスらしさ”とは何なのか…野口優

◆“レクサスらしさ”とは何を狙っているのか
◆「bZ4X」とは違うタイヤサイズに、走りの質へのこだわり
◆思いきってステアバイワイヤ仕様を選びたい

自動車 試乗記
レクサス『RZ』に試乗。BEVで表現する“レクサスらしさ”とは?
  • レクサス『RZ』に試乗。BEVで表現する“レクサスらしさ”とは?
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様でショートコースを試乗
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様。ステアリングの舵角は約プラスマイナス150度に設定されている。
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様でショートコースを試乗
  • レクサス RZ450e ステアバイワイヤ仕様

2022年4月に世界初公開となったレクサス『RZ』が、いよいよ市場に向けて投入される。2035年には全ラインナップをBEV車両に置き換えると公言しているレクサスにとって、このRZは今後を担う第一弾、即ち本命とも言える存在だ。

ただ、100%電気自動車が望まれるのは理解しているものの、現実問題として受け入れる以前に、商品として魅力があるのかが、BEVの場合は重要になってくるのは事実。そのあたりはレクサスも相当意識しているようで、今回行われた事前試乗会では、ステアバイワイヤ仕様まで用意していたから期待は膨らむ。

◆“レクサスらしさ”とは何を狙っているのか

レクサスRZは、同社初といってもすでに発売されているトヨタ『bZ4X』やスバル『ソルテラ』の姉妹車で、プラットフォームにe-TNGA、パワートレインもAWDシステムのeアクスルを採用する。フロント150kW、リア80kWという最高出力と、71.4kWhのリチウムイオンバッテリーも同じで、ホイールベースも2850mmと共通。これでbZ4XのAWD仕様と何が違うのかという疑問が湧くのは当然。

とかくBEV車両は家電製品で例えられるように個性を出しにくいし、内燃エンジンのような明確な差は感じられないから、彼らが呪文のように主張する“レクサスらしさ”とは何を狙っているのかが、今回のキーになると筆者は思った。

レクサスがBEVで実現しようとしているのは、“電動化されても人が気持ちいいと感じる、操る歓び”。素材こそ姉妹車と共通ではあるが、その味付けはレクサス独自で、そこで目指したのは地上最速の動物であるチーター。そこからヒントを得て、獲物を狙う姿勢やぶれない視点、体幹の良さなどがeアクスルを搭載したAWDシステム「ダイレクト4」の起点になったという。

今回、試乗はサーキットで行われたものの、全開走行は許されないから、そのすべては分からなかったが、何気なく実現しようとしている狙いは理解できた。

つまり、このRZの肝となっているのは、スポーツ性能にも通ずる内燃エンジン車両と遜色ないフィーリング、むしろBEVだからこそ可能になる、それ以上のドライブフィールの実現にあるようだ。

◆「bZ4X」とは違うタイヤサイズに、走りの質へのこだわり

実際、開発陣が謳っていたように、姿勢変化や接地荷重変化に応じて絶妙に駆動力をコントロールしているのは明白で、とにかく確かな手応えを伝えるようとする。旋回中は安定志向が強いものの、コーナーリング脱出時はリアのトラクションを最大限活かすよう綿密な計算が行われているようで、むしろ内燃エンジン車よりも効果が高いように思えたのは本当だ。

それに加えて、フロアに積まれるバッテリーが功を奏して低重心が大きく貢献するから安定感による安心感を生み出し、走行中であれば約2トンある車重の重さも、ほぼ気にならなかった。もっともこれは、前後異径サイズのタイヤを履いていることも理由のひとつで、全体的に安定志向の中にスポーティさを常に感じられるのは、リアモーターのセッティングと、このタイヤのサイズ設定によるところが大きく、トヨタbZ4Xとは明らかに走りの質が違っている。

さらに言えば前後にヤマハ発動機の「パフォーマンスダンパー」を備えているのもRZの走りを良くしているポイントだろう。その効果も重なり、ボディ剛性は姉妹車よりも上に感じられるうえ、徹底的に施された、制振と遮音・吸音対策のおかげで走行中でも高級車然とした上質な印象を与える。そういった点では、BEVで求められるASC(アクティブ・サウンド・コントロール)も違和感ないどころか秀逸なようで、タイヤから発せられるロードノイズもほとんど気にならなかったから見事というほかない。

◆思いきってステアバイワイヤ仕様を選びたい

そして、このRZを語る上で重要となるステアバイワイヤは、言うまでもなく最大の特徴。端的に言えばこれはステアリングを持ち替えることなく、ハンドル操作を可能とする技術で、ある意味では理想を実現したと言える。

ステアリングの舵角は約プラスマイナス150度に設定され、交差点はもちろん、ワインディングや車庫入れまで対応するが、正直言ってしまえば、慣れるまでにはそれなりの時間が必要。ただ、一度慣れてしまえば、後には戻れないほど理に叶っているのは確かで、わずかな試乗時間ではあったものの、その優位性は間違いなく確認できた。

もちろん、従来の円形ステアリングと併売されるというから好みで選んでいいと思うが、ディーラーでの試乗時にこのステアバイワイヤ仕様車を試して短時間で判断してしまうのは、あまりお奨めしない。開発陣は我々の想像を超えるほど自信満々だったし、この後さらに進化させることも示唆していたが、いざ購入するとなると躊躇しても仕方がないとも思う。

ただ、どうせ最新のBEV車を買うのであれば、思いきってステアバイワイヤ仕様を選びたいものだ。無論、筆者なら絶対にこれを選ぶ。自動車としての完成度も申し分ないし、ラグジュアリーSUVの新たな価値観も備えているこのRZなら、保守的にならず、斬新なほうを選択し、さらにあらたな歓びを得てもらいたい。それができるのがRZの魅力でもあるのだから。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

《野口優》

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