【トヨタ bZ4X 新型試乗】「さすがトヨタ車」2WDに好印象、4WDは特徴が薄い?…御堀直嗣 | Push on! Mycar-life

【トヨタ bZ4X 新型試乗】「さすがトヨタ車」2WDに好印象、4WDは特徴が薄い?…御堀直嗣

トヨタの電気自動車(EV)である『bZ4X』のプロトタイプに、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで試乗した。今年半ばに発売となる予定だが、レースコースという限られた場所での初の運転機会であった。

自動車 試乗記
トヨタ bZ4X
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トヨタの電気自動車(EV)である『bZ4X』のプロトタイプに、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで試乗した。今年半ばに発売となる予定だが、レースコースという限られた場所での初の運転機会であった。

全体的にいえるのは、さすがトヨタ車という印象で、プロトタイプながら全体的によく仕上がったEVだった。開発責任者は、まだ振動や騒音の面でやり残しているところがあると試乗前に話したが、舗装が整備されたレースコースでは、たとえ縁石にやや乗り上げる走りになっても、不具合は覚えさせなかった。

印象深いのは2WD。4WDは特徴が薄い?

試乗をしたのは、4輪駆動(4WD)と2輪の前輪駆動(FWD)だった。印象深いのは、FWDだ。車両重量は4WDに比べ軽いこともあり、モーターならではの加速の快さがあり、アクセルペダルを戻したときの回生もより効果的にきくようだった。ただし、トヨタは停止まで行うワンペダルは採用していない。このため、停車の直前で回生が途切れ、ペダル踏み替えの間の空走時間がある。それによって、ブレーキペダルを踏むまで速度が落ちず、ハッとさせられた。

同様の考え方はドイツ車でもみられるが、一方で世界的に安全なクルマとして知られるスウェーデンのボルボのEVである『C40リチャージ』は、ワンペダル操作の選択肢を備えつつ、ワンペダルを選べば停止までアクセルペダルを戻す操作だけでできる。そしてそのまま停車し続ける。私はワンペダルに賛成であり、またクルマの安全で世界に名だたるボルボが採用したことは、扱いを間違わなければ安全を損なう操作ではないとの解釈になるのではないか。

bZ4Xの4WDは、全般的に特徴の薄い印象で、アクセル全開にしてもトルクの大きいモーターならではの醍醐味は薄く、またアクセルを戻した際の回生の効きも弱めだ。開発担当者によれば、回生への違和感を無くす制御を設計したとのことだが、程度問題であり、シリーズハイブリッドではあるが日産のe-POWERを搭載する新型『ノート』は、前型に比べ回生を利用することへの違和感は抑えたとしながらも、きちんと回生を活かせる制御を作り込んでいる。回生への考え方や、制御の作り込みの点で、bZ4Xには経験や目的意識がまだ足りず、EVの本質を見極められていない印象がある。

炬燵のような心地よさの輻射熱ヒーター

一方で、ドイツのBMW『iX』でも採用をはじめた輻射熱による腰下の暖房は非常に心地よい。当然ながら、ハンドルヒーターやシートヒーター同様に、空調に比べ電力消費が一桁小さく済み、車載バッテリーの電力消耗を抑える効果もある。輻射熱ヒーターの快さは、あたかも炬燵(こたつ)に入ったような心持ちにし、よほどの極寒でなければ、ハンドルヒーターとシートヒーターとの併用で済むのではないか。この先、EVの標準装備となる可能性があるし、その期待は高い。

限られた環境での短い試乗での印象であるため、発売されたら公道で再度試乗できるのが楽しみだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★

御堀直嗣|フリーランス・ライター
玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

《御堀直嗣》

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